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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
【イエロー編】時計ウサギと昼の月
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102/123

19 叶うなら

梨穂視点


 もうすっかり歩き慣れた学校からの帰り道を一人で歩く。

 九月に入り学校も始まったというのに、まだ蒸し暑くて、少しだけ気が滅入る。

 なんとなく見回した街並みがいつも通り平日昼間なのもあって、穏やかな様相で。バイデントが現れないと、街はこんなにも静かなのね、なんて思ってみたりもした。


 バイデントといえば、以前よりはさくらちゃんや七海ちゃんとの連携も上手くいくようになって、街への被害も少しだけ防げるようになったと思う。

 それでも、街に現れるバイデントの数は減らないけど。


 基本的に、バイデントたちは破壊の使者を名乗る三人に付き従っている。

 一人は、頻繁に現れるのはカロンという少年、能動的にバイデントに街を襲わせているのは彼。それから、あまり見ないけど要所要所で現れて、恐らくイノセントジュエルについて調べているのがニクスという女性。

 そして、P5。


 とはいえP5は、最近はバイデントを引き連れていない。いてもすぐに何か他のことに気を取られているし、何ならバイデントを引き連れている時よりも下校時に会う回数の方がずっと多い。

 この間だって、英時君から渡された懐中時計を落とさないように、チェーンをベストのボタン穴に通して落とさない方法を教えたら、以来ずっとその通りにしているし。


 あの時計は、英時君の願った通りの結果になっている。

 彼はP5を子供みたいに何もわかっていないと言っていた。だから、せめてP5だけでも、踏み外さないように引き留められないかと。自分が見たくない、なんて理由を付けて。


 英時君はずっとそうだ。P5によくしてくれるのはいいことだと思う。

 実際に私も、英時君のP5に対する思いを聞いて、バイデントたちと和解できたらいいと思い始めたのだし、いいことだと思う。


 でも、それはそれとして、P5にばかり目をかけている姿には少し思うところがある。

 なんだか、P5にばかり、甘くない? いくらP5が精神的に幼いとは言え、なんだか少し、P5を見る目が優しすぎる気がする。いえ、自分とは違う世界の存在と心を通わせようと、励んでくれていることに対しては何の不満もないのだけど。

 そんなことを考えていると不意に、目の前にP5が現れた。


「何してるのー?」


 いつものことだけど、相変わらず不思議なところから現れるなぁ。

 街灯に膝をかけてぶら下がっている。その向きって、ロウソクが溶けて火が消えそうなのに特にそんな様子もなく、ゆらゆらと火を灯している。

 今日もどこかで遊んで来たのだろうか。時計も知らなかったことだし、P5にとってこの街は、知らないものだらけなのかもしれない。


「今学校が終わったところだったんですよ」

「ふーん、じゃあ遊ぼう!」


 くるりと器用に体を回し街灯から降りると、P5はいつものように私の肩を押して公園へと向かう。もうすっかり慣れてしまったやり取りに、不思議な気分になった。

 可能なら、戦いたくない。じゃれ合いの様なものならまだしも、嫌い合いたくない。P5とわかり合えるのなら、きっと他のバイデントたちとも手を取り合えるはず。

 二人と出会って、そう思うようになった。


「最近はあんまりバイデントと一緒にいないですね」

「うん……。リホは街を壊すの、嫌?」

「住んでいるところを失うのは、悲しいですから」

「そっかぁ」


 困ったような声色でP5が呟く。何か考えがあるのか、何もわかっていないのか。

 ゆっくりとした足取りで辿り着いた公園は相変わらず人の気配はなく、最近の子は外遊びをしないのかな、なんて関係のないことを考えた。


 それにしても、結局何もわからないままかぁ。やっぱり英時に言われた通りチュチュは何か教えて貰うべきなのかもしれない。

 チュチュは、私たちに魔法少女としての力を与えてくれた妖精。でも確かにチュチュは、私たちに何もかもを話しているわけではない。


「リホ、元気ない? 時計見る?」

「……P5は、英時君の時計が好きなんですね」

「うん! エージがボクにくれたから! あげないけど、リホには見せてあげるね」

「ありがとうございます」


 チュチュについては、もう少し後でもいいか。今は、もう少しだけこうして、叶うかもしれない未来を夢見ていたい。

 英時君の時計で気を逸らすという作戦は今のところ成功している。なら、P5は引き留められる。他のバイデントたちとも、きっと。


「P5は公園で遊ぶの、好き?」

「うん! リホもエージも一緒にいて楽しい! ずっと二人と遊んでようね!」


 何とも平和なお誘いで。

 でもきっと難しくて、それでも叶えたい願い。


 本当は魔法少女として、バイデントとして、そしてこの街に住む住人として。それぞれの立場でやらなきゃいけないことや、願わなきゃいけないものがあるはずだけど。

 私たちぐらいは、そういう皆が手を取り合える世界を夢見ていたっていいよね?


 しばらくは私を見て不思議そうに頭の火を揺らしていたP5が、何かを見付けたのかぱたぱたと、公園内を駆けていく。

 英時君の言う通り、きっとP5はバイデントたちと街を壊しているよりも、ああして自由に遊び回っている方が似合っている。



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