第2話 バラバラの持参薬
私は机に広げられた箱に入ったアルミシートの薬を見つめた。
「…先輩、これって…」
「あぁ、今日入院してきたAさんの持参薬だよ。鑑定してパソコンに入力しといて。頼むよ。」
飛来先輩は何とも言えない微笑みを残して病棟に向かった。
薬として別におかしいところは何もない。
種類ごとに箱に保管されているし汚れている様子もない。
飲み忘れがあるかどうかはこの状態では不明だし普段何処に保管しているかも不明だがおかしいところはない。
ただ、数が多すぎるというのと何故か1回分飲む量ごとに切られているのだ。
つまり1回1錠飲む薬が1錠ずつ、1回2錠ずつ飲む薬が2錠ずつアルミシートが分かれているのだ。
「1回分ずつヒートのまま分けてるね。」
柏原先輩が関心しながら見つめている。
「そうなんです。このアルミシートのまま飲んでしまった事件もあるというのにわざわざハサミか何かで切ってくれているんです。なくしたりしないんですかね。」
「これ、何処の誰か知らないけれど、医師か薬剤師か知らないけれど、1回分ずつ切って保管してくださいって言っている人が居るらしいね。」
「本当ですか?!数えるこっちの身にもなってほしいです。」
私は苦笑しながら薬を数えていく。
「でもまぁ、ポチ袋に1回分ずつ薬を自分で入れている患者さんのに比べたらアルミシートに入った状態なので衛生的にはましなんじゃない?」
同僚の瀬名は別の薬を数え始めた。
「んー、正直ちゃんと飲めているなら別にどんな保管方法でもいいと思うけど…そのポチ袋に自分で入れるパターンのはさ、どうせなら薬局薬剤師に一包化してもらいたいよね。」
柏原先輩はパソコンで電子カルテを開いた。
「あ、俺がこの前鑑定した人の薬は院内調剤でした。」
「じゃあ薬局薬剤師の手に渡らないから一包化できていないのは仕方ないかもね。」
柏原先輩はマウスでスクロールしていく。
「機械がないもんね。」
「いっそのこと、薬局に持って行ったら一包化してくれたらいいのに。」
「あはははは、労力と時間かかるのに無料ではやりたくないでしょ。」
私は2人の会話を聞きながら持参薬を数え終えて入力を始めた。
すると、私達の所に雲雀副局長が歩いてきた。
「悪いけど、これ入力よろしく。」
夜間帯に入院した患者さんの持参薬が机の上に置かれた。
「嘘でしょー?今やっと1人分さばいたのに。」
「数はそんなにないから簡単だと思う。」
雲雀副局長はそう言うと鳴ったPHSを掴んだ。
「薬剤部雲雀です。あ、すぐ行きます。」
雲雀副局長は風を切るように薬剤部を出ていった。
瀬名が持参薬の袋から薬を取りだしていく。
吸入薬と内服薬が机の上に並べられた。
お薬手帳を開くと瀬名は首をかしげた。
「どしたの?」
「この吸入薬、変じゃないですか?」
お薬手帳には処方箋に書いてあったであろう一般名(薬の成分名)と実際に薬局が調剤した薬が書かれたシールが貼っていた。
サルメテロールとフルチカゾンが混合された吸入剤が処方されていた。
「500が処方されているのですが、ここにあるの250が2つなんです…」
瀬名は250と書かれている吸入薬を2つ取りだした。
「え?ちょっと待ってよ。500を1回吸うのと250を2回吸うのじゃ成分量一緒じゃないよ?!」
柏原先輩は慌てて受話器を掴んだ。
「お疲れさまです。雲雀さーん、さっきの持参の吸入薬が…」
柏原先輩は丁寧に説明をした。
「…これ、何でこんな調剤しちゃったのかな…」
瀬名は吸入薬を見つめた。
「在庫なかったんじゃない?同じ成分で同じ量なら何も問題なかったのにね。」
私は苦笑して入力したものを印刷した。
「監査お願いしまーす。」
私は鑑定した薬を籠に入れて机に置いた。
「そろそろ休憩入りなよー?」
飛来先輩が戻ってきた。
「はーい。」
私は休憩室に向かった。
今日の持参薬鑑別は驚いた。
でも先輩方はもっと色んな経験をしているのだと思う。
今回のは飲み方もお薬手帳のシール通りだったしあまり複雑ではなかったのかもしれない。
「よーし、お昼からも頑張るぞ。」




