フレンドリーな接触です(圧)
「意識のある個体を発見。安全確認を実施する」
――そんな声で、俺は目を覚ました。
視界に入ったのは、鎧の兵士とローブの少女。
そして確信する。
「あ、これゲームの冒頭だわ」
5分前まで俺は、海外製のオープンワールドRPGをプレイしていた。
その冒頭はこうだ。
「あなたは森で倒れています」
「通りかかった警備隊があなたを発見しました」
「あなたは安全な場所へ運ばれます」
妙に説明的で、ちょっと不自然な翻訳。
でもまぁ、海外製だしな――で済ませていた。
……それで気づいたらこれだ。
「呼吸は安定しています。致命的損傷はありません」
少女が言う。
やめろ、その実況。
「対象は混乱状態にあります。搬送を推奨します」
いや本人目の前にいるからな?
「これは敵対ではありません。フレンドリーな接触です」
圧がすごい。
―――
気づけば俺は馬車の中だった。
誘拐では?
「誘拐ではありません。これは保護です」
読まれてる!?
「あなたは現在、身元不明の負傷者です。王都にて保護されます。これは通常手続きです」
いや言い方が全部怖いんだよ。
「なあ、その喋り方やめれないのか?」
俺が聞くと、少女は即答した。
「いいえ」
即答すな。
「理由を説明しますか?」
「いやいい」
絶対長くなる。
―――
王都は普通だった。
だが会話が全部おかしい。
「通行は問題ありません。混雑率は低いです」
「商品購入は任意です。強制はありません」
「本日の治安は安定しています」
安心情報の押し売りやめろ。
―――
宿。
「一泊3ゴールドです。これは標準価格です」
まあそれはいい。
「ベッドは睡眠専用です。戦闘には使用できません」
使うか。
ドアにはこう書いてあった。
『この部屋は休息用途です。安全です』
安全アピールが強すぎる。
逆に不安になるわ。
―――
翌朝。
「これは食事です。摂取によりエネルギーが回復します」
パンとスープ。
「パンは硬いですがスープで改善されます。これはヒントです」
ヒント出すな。
昼。
「食事だ。HP回復」
夕方。
「餌。」
落差どうした?
―――
そして王城。
「あなたはこの世界の住人ではありません。これは事実です」
まあそうだろうな。
「しかし帰還方法は未実装です。これは仕様です」
ゲームすぎるだろ。まあゲームの世界だけど。
「いやそこ実装しとけよ!」
―――
その夜。
俺は森に戻っていた。
とりあえずしばらくはこの世界で過ごすしかない。
空を見るとドラゴンが飛んでいる。
最初の少女が来て言った。
「現在飛行中です。安全です。問題ありません」
いや安全の基準おかしいだろ。
――その時。
視界に、見覚えのあるウィンドウが出た。
このゲームのアップデート通知だ。
「アップデート予定を知らしめる」
うわ出た。運営の言葉も直訳だ。
「内容:説明過多の改善要請」
誰だ出したの天才か?
「対応状況:検討中」
遅い。
「実装予定:未定」
やる気ゼロか。
俺はため息をついた。
「この世界、説明は丁寧なのに改善だけは雑すぎるだろ……」
その時、隣の少女が言った。
「あなたとの接触は完了しました。これはフレンドリーな接触でした」
だからそれなんなんだよ!!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
この世界のNPCは「親切」なだけです、たぶん。
なお、今後アップデートにより改善される可能性があるかも??
よろしければブックマーク・評価などいただけると、嬉しいです!フレンドリーな接触、どうぞよろしくお願いします(笑)




