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 神谷は村野に森田を探す為に東京へ戻ろうと提案し、村野も快諾した。電車を気ままに乗り継いでいた為、2人は福岡まで来ていた。今は昼の3時。新幹線に乗れば東京まで5時間ほどで行ける距離の為、急いで新幹線に乗り込んだ。

 

 電車に揺られて5時間。神谷はこの先何が起きるかわからないと思い、今のうちに寝ておこうと無理やり眼を瞑って寝る努力をした。村野はそれを見て察知したのか、同じように眠っていた。現世に来てから初めて夢を見るほど眠った神谷は、夢の中で鬼に出会った。


「お前には特別な力を授ける。現世の人を救え。それがお前の役目だ」


 鬼はそれだけ言って消えた。神谷との接触時間があまりにも短かった為、東京に着いた頃には夢のことをすっかり忘れてしまっていた。

 村野と共にニュースで事件が起きていた練馬区に向かい、どこにいるのか分からない森田を探し回っていた。日が落ちて辺りはすっかり暗くなったが、街を歩く人はまだ多い。20 人もの衆人の顔を覚えているかと言われればぼんやりしか覚えていない状況だった。その為、人通りが多く衆人か現世人かを見分けるのは極めて困難だった。


 「見つけた」という声と共に村野のお腹から刀が突き出てきた。神谷が後ろを振り向くと、同じ衆人の川上(かわかみ)という男が村野のお腹に刀を突き刺してニヤリと笑っていた。川上は生前、計画的立てこもり事件を起こし、20数名の人質と共に爆弾で自爆した大量殺人犯だ。

 神谷は咄嗟に自分の刀を抜いて川上に斬りかかったが、川上は神谷の振り下ろす刀を避けながら村野のお腹に刺さった刀を抜いた。村野は致命傷までいっていない為、消滅してリセットされるということはなく、お腹から血を垂れ流して膝から崩れ落ちた。そんな村野に 止めを刺しに来た川上の刀を神谷は弾き返し、村野の前に立って刀を構えた。


「何? 衆人同士お友達ごっこでもしてるのか?」

「そういう訳じゃないが……」


 神谷もなぜ人を守る為に自分の身体を張ろうとしているのか分からなかった。しかし、神谷にとっては今まで共に行動してきた村野が他の衆人に殺されるのは見たくなかった。しかし村野は神谷に守られている後ろで自らの首を斬って自害した。そして生き返った。


「苦しい思いをしてあなたに守られるなら自害してリセットした方が楽だわ」

「そうか。余計なことをしてしまったな」


 川上は自分が止め刺せなかったことにイライラしている様子で今にも斬りかかって来そうだ。しかし、川上はこの人混みの中どうやって2人を見つけ出したのか、神谷は考えた。顔を覚えているとしても、後姿だけで分かるものなのか。疑問を抱いている内に答えが見つかった。


「もしかして衆人と現世人の見分けが付くのか?」


 川上は図星のようだった。しかしハッキリと返事はしない。出来るだけ能力は他人に知られたくない様子だった。しかし、衆人を探す能力があるなら都合がいいと思い、神谷は川上に一つ質問をした。


「森田って奴がどこに居るか知らないか?」

「それを知ってどうする」

「森田は現世の人を使って再び大量殺人を犯すつもりだ。俺達は死んでも生き返るが、現世人はそうじゃない。だから止めなければ」

「お前は正義のヒーローにでもなるつもりか? 止めるって、どうやって森田を止めるんだ。奴が現世の人を操っている方法を知っているのか?」

「多分、森田は現世人に乗り移る能力だろう。しかし、乗り移った森田を現世人から抜き出す方法は知っている。そして1分しか乗り移れないこと、1人乗り移る度に合言 葉を言う時間が存在することまで は分かっている」

「なぜそこまで詳しい? まさか、お前も乗り移る能力なのか?」


 神谷は喋りすぎたことに気付いた。ここで今神谷が否定すれば、村野が乗り移る能力だと言っているようなものだ。先ほど川上が自分の能力についてハッキリ返答しなかったように、衆人同士手の内を知られるリスクは大きい。神谷が返答に迷っていると、村野から口を開いた。


「私が乗り移る能力なの」

「なるほど。それで神谷、お前が乗り移った衆人を抜き出す方法を知ったというのか。で、神谷の能力は何だ?」

「それが、まだ分からないんだ」

「ハッ! 人の手の内だけ聞いてお前の手の内は教えないというのか。さすが衆人、少しでも心を許しかけた俺が馬鹿だったぜ。じゃあな。せいぜい2人で 森田を止めるんだな」


 そう言って川上はどこかへ行ってしまった。神谷は能力を隠すつもりなんて無かったのだが、答えなければ誤解されても仕方ない。再び村野と2人で森田を探し始めた。

 川上の能力さえあればすぐに見つかっただろうが、今回は諦めるしかなかった。だが、神谷たちは現世人と衆人の一瞬で見分けが付く大きな違いに気付いていなかった。


「どうせこの刀、現世の人に当たっても影響がないならずっと振り回しながら歩けばいいんじゃないか?」

「確かに。もし衆人が現世人の中に入っていても相手は私達が見えないし、刀が当たれば現世人の中から抜き出すことも出来る。良いアイディアだと思うわ」


 こうして神谷たちは刀を振り回しながら練馬区を歩き続けた。普通に見れば異様な光景だが、現世人には見えることは無い。しかし、2人の前に1人の男性が立ちはだかった。明らかに神谷たちを見ている。

 ――――明らかに見られている。俺たちが見えているということは衆人か?

 2人は刀を振り回し ていた手を止めて男に向かって構えた。しかし男は刀を持っていない。

 ――――そうだ。衆人は刀を持ち歩いている。現世で刀なんて持っていたら銃刀法違反で捕まるから持っている人なんて居ない。

こんな簡単な見分け方に、なぜ今まで気付かなかったのかと神谷も村野も思った。


 目の前に立っている男は刀を持って居ない。なぜそんな所で立っているのか疑問だったが、現世人には衆人の姿は見えないはずである。神谷たちは構えた刀を鞘に納め、前に立っている男の横を通り過ぎた。その瞬間、男の口がニヤリと笑った気がした。

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