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弐拾伍

 大阪拘置所から出た被告人は殆どが麻薬犯罪者。何が起きるか分からなかったが、他の棟のマーダーも同じように被告人達をどんどん解放していた。


 6棟。待ち構えていたガーディアンは多田と桐井。そこに到着したマーダーは島内が率いる3人グループだった。島内は一目散に多田と桐井の方へ刀を振りかぶりながら走り出し、他の2人は近くの牢へ入っていった。

 多田は慌てて島内の攻撃を防いだ。桐井は驚いて尻餅をついたまま動けない。


「桐井さん、ここは逃げよう。この人相手じゃ勝てない」


 多田は能力以外は中沢並みに強いと言われている島内が相手では太刀打ちが出来ないと判断した。更に、刀に能力が宿っているのも察知していた。

 桐井は立ち上がったが、中々動こうとしない。多田は島内の攻撃を受け流すので精一杯だった。


「桐井さんだけでも逃げて!」

「でも……」

「マーダーは全員同じ刀の能力を持っている。どんな能力かは分からないが、この3人の刀から同じオーラが見えるんだ。この事を神谷くんに!」


 追い込まれながらもそう叫び伝える多田を、島内が斬った。斬った瞬間、多田の動きが止まった。消滅するということはなく、ただ立って死んだような目をしている。


「ちぇっ。大した能力の持ち主じゃないな。まあいい、ちょっとこいつを借りるぜ」


 島内は刀を納めて多田を操り始めた。桐井はついさっきまで仲間だった多田に刀を向けられて動揺した。


「多田さん! 目を覚ましてください! 私はあなたを斬りたくないです!」

「無駄だよ。このおっさんは俺の操り人形だ。さて、仲間同士殺し合え!!」


 島内の言葉と同時に多田が桐井に向って突進してきた。桐井は反撃することもなく避けることしか出来なかった。

 しかし、操られている多田は一心不乱に斬りかかってくる。


「いざ参らん!」


 桐井は能力を発動した。多田の攻撃を避けながら後ろで操っている島内に向って刀を振り下ろした。もちろん島内は想定内という顔で桐井の攻撃を避けた。

 島内は刀を抜き、もう一度斬りかかろうとする桐井の方へ構えた。桐井が再び島内の方へ走り出した瞬間、横から多田が桐井を刺した。


「多田さん……」


 致命傷寸前の桐井は、多田の方を見ながら崩れ落ちた。その桐井に止めを刺そうと振りかぶった多田の横に島内の姿が見えた。

 桐井は最後の力を振り絞り、島内の足元に刀を投げた。投げた反動で身体をずらした桐井は、多田の止めも避けることができた。


「何だ!?」


 島内は桐井の能力で一時的に視力を失った。桐井は瀕死状態で島内の足元に転がっている橙龍を広い、その場を走り去った。多田は操る人間が視力を失っているため、その場でただ立っていた。

 何とか逃げ切った桐井は建物の影に隠れ、橙龍で自ら命を絶った。リセットされ、復活したところで橙龍を使って白龍に連絡をとった。すると、数秒後に桐井は神谷たちの下に飛んでいた。


「大丈夫かい? あれ、多田は?」

「それが……」


 桐井は状況を説明した。そして、多田が追い込まれながらも伝えてくれた情報を神谷たちに話した。


「そうか。そっちの3人も同じ能力か。ってことは、残りのマーダーも同じ可能性が格段に高いな。今すぐ8棟へ向って、浩太と星川の援護に行くぞ!」


 神谷は多田が操られたことを知り、直ぐにでも地獄へ送り返してやりたいと思っていた。しかし、まだ戦っている最中であろう浩太たちの援護が優先だと判断した。

 神谷、村野、江口、桑井、桐井が一斉に8棟へ飛んだ。そこに居たのは中沢と高坂、梅田がいた。浩太と星川の姿はない。


「よう、神谷。随分遅かったな」

「中沢。まさかお前……!」

「ああ、10分ほど前にガキと女は斬ったぜ。ガキは泣きそうな顔をして消えて行ったよ。傑作だった。あははははは!」

「貴様!!」


 神谷は浩太と星川が殺されたことに完全に我を失っていた。ガーディアンのメンバーは怒っている神谷が怖くて声を出すことも出来なかった。


「やるのか? いいぜ。ここで決着をつけてやっても」

「中沢。今の俺は強いぞ」

「それは分かっている。何も舐めているわけじゃないさ」

「ならいい。1対1で勝負だ!」


 両チームのリーダーが、メンバーに見守られる形で勝負をすることになった。


「桑井。みんなを連れて出来るだけ遠くにいけ。お前達を巻込みたくない」

「梅田。お前もみんなを遠くに連れて行け」


 リーダーの指示で両チームはワープで拘置所の屋上へ飛んだ。リーダーの一騎打ちは拘置所内の運動場で行われる為、メンバーは屋上からその様子を見ていた。


「神谷さん、勝ちますよね?」

「江口、神谷さんの強さを信じてないの? 勝つに決まってるでしょ」

「ですよね。でも浩太さんも星川さんもあの中沢って人にやられたんですよね。もしものことがあったら俺、助太刀に行ってもいいですか?」

「それは絶対にダメ。助太刀なんて一番してはいけないことよ。何より、神谷さんが最も嫌うことだから。手出しはせずに最後まで見守るのが私達の役目。いいわね」

「分かりました」


 江口はただただ不安そうな目をして運動場に立っている神谷と中沢を見ていた。

 中沢も神谷もメンバーが屋上に移動して運動場で2人きりの中、ジッと睨み合っていた。互いに刀を抜き、刀の能力を発動させた。


「準備はいいな」

「ああ。いくぞ」


 2人が同時に一歩を踏み出し、一気に斬りかかった。

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