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弐拾肆

 村野は大阪のネットカフェで客に乗り移り、警察に犯罪者達がテロが起きる可能性があるという匿名のメールを出していた。

 もちろん警察は相手にしなかったし、村野が乗り移った人が事情聴取を受ける羽目になったりと、全くの逆効果だった。

 やはりマーダーを直接止めるしか方法が無いと神谷は判断し、狙うであろう大阪の拘置所を見張る事にした。


 計画の日、ガーディアンは桑井のワープで一斉に大阪拘置所に飛び、判決待ちの被告人達が居る棟の3カ所に2人ずつと、入り口に神谷と桑井が位置についた。

 いつどこに現れるのか。第一次大戦の時のようにワープで一斉に現れる可能性が高いと考えていた。しかし、バラバラに配置したのが吉と出た。


 午前10時にガーディアンが待っていた1棟、6棟、8棟の1階にマーダーが現れた。中沢は行動を読まれていた事に少し腹を立てていたが、お構いなく計画を実行し始めた。


 1棟。待ち構えていたガーディアンは村野と江口。現れたマーダーを迎え撃つ形になったが、相手は3人。2人は人数では不利だが、能力的には有利だと思っていた。しかし、それも直ぐに違うと思い知った。


 マーダーの2人はガーディアンに目もくれず、近くの部屋に入った。そして刀を抜き、中に居た被告人達を次々と斬っていった。村野も江口も何が起きるのか分かっていなかった。

 すると外から看守が牢の鍵を開けた。そしてマーダーに斬られた被告人4人がゆっくりと廊下に出る。看守は次々と他の牢の鍵も開けて行った。

 村野は鍵を開ける看守に乗り移って止めようとしたが中にはマーダーの1人、井口が入っていた。乗り移れる1分間のタイムリミットが来て出てきた井口は、村野との再会に笑みを浮かべた。


「お久しぶりだね、お嬢さん」

「あなただったのね。井口」

「あれ?僕の名前、教えていたかな?」

「いいえ、岡島さんから聞いたのよ。今度こそ地獄に送り返してあげるわ」

「それは無理だよ。あの時より僕は強くなったからね」


 井口は刀を槍に変化させ、江口の方に矛先を向けた。村野は嫌な予感がして咄嗟に江口の前に入った。

 井口の槍が伸びて村野に刺さった。江口は突然の出来事に足が動かず立ちすくんでいた。村野が動かなくなったのを見てどうすべきか分からずあたふたし、村野に近付こうとすると村野が急に叫んだ。


「来ちゃダメ! そこで待ってて」

「でも……!」

「いいから、他のマーダーにも斬られないように自分の身を守って」


 村野は井口に刺された箇所から流れる血を紅龍に与えていた。

 刺された者は操られる能力を持つマーダーに対抗出来るのは、やはり刀の力しかない。血をもらった紅龍は村野が操られ無いように、村野の中に流れ込んでくる相手の能力を消す事に専念していた。

 早く刺さっている槍を抜かなければ紅龍も力尽きてしまう。かと言って刀の能力を持っていない江口に期待する事も出来なかった。


 江口は他のマーダーが斬りかかってくるのを緑龍とのコンビネーションで避けていた。村野に向かって斬ろうとするマーダーを跳ね返しながら、徐々に村野に近づいていった。

 村野は江口が近くまで迫ってきている事に気付いていたが、今は少しでも気をそらせば井口に身体を操られるそうな為、どうにも出来なかった。そうしている間に江口は村野の背後まで来た。


「村野さん、少しは俺にも期待してくださいよ。大丈夫、これぐらいなら俺と緑龍で対応出来ますから」

「刀の能力を持っていなかったら無理よ!」

「いつまでも守られてたら男が腐ります。神谷さんに言われてちゃんとコミュニケーション取ってきましたから」


 そう言うと、江口は「いざ参らん!」と合言葉を叫び、自分の能力を発動した。軟体動物かのようにクネクネと身体を動かしながらマーダー2人の攻撃を交わして腕を斬り、そのまま足も斬った。

 斬られたマーダーの手足は徐々に腐り出し、刀を持つ事も立っている事も出来ずその場に崩れ落ちた。江口に斬られたマーダー2人は致命傷まで行っていない為、リセットする事もなくその場で動けない状態になった。

 続いて江口は村野に刺さっている槍を斬った。しかし、斬れる事はなく江口の刀は弾かれた。


「あはははは!悪あがきはよせ。そんな柔な刀で俺の槍が斬れるわけがないだろう」


 井口が大口を開けて笑いながらそう叫んだ。しかし江口は懲りずにもう一度同じ箇所に刀を振り下ろした。しかし同じように弾き返される。井口は無駄な攻撃だと笑いながら江口の攻撃を見ていた。


「江口!もういいから止めて。緑龍の刃が悪くなるだけよ」

「村野さんは黙ってて!もう少しなんだ」


 村野の言うことを聞かずに何度も斬る江口。すると、井口の槍にヒビが入った。それを見た井口は流石に危険だと思ったのか、即座に村野から槍を抜き刀に戻した。ヒビを確認する井口に向かって江口が斬りかかった。

 井口は刀で攻撃を塞ぐも、ヒビが入っていた刀は折れて江口の刀は井口の肩から腰に向かって斬った。井口は刀を落とし崩れ落ちた。

 江口は自分の能力を使って致命傷の手前で、尚且つ動けなくなるように斬るという技術を上げていた。江口は井口が動けない状態になったのを確認してから村野の方へ駆け寄った。


「村野さん、大丈夫ですか?」

「ええ、助かったわ。ありがとう」

「お役に立てましたかね?」

「もちろんよ。後はこの3人を神谷さんに引き渡さないと」

「俺がやります!」


 江口は緑龍を使って白龍に交信をとった。すると、桑井と一緒にいる神谷はワープで直ぐに江口たちの元に来た。

 準備期間中、刀同士交信する事が可能だと知ったガーディアンは自分の刀を他の刀に合わせて刀同士も仲間意識を持つように教育していたのだ。


「2人ともご苦労様。この感じは、江口の能力だね。良くやった。いざ参らん!」


 神谷は動けない状態になっているマーダー3人を見て、江口の能力で抑えたと状況判断をした。そして神谷の能力で閻魔大王の元へと送り返した。神谷に褒められた江口は嬉しそうな顔をしていた。


「神谷さん。先程のマーダー3人の刀の能力が全員同じ、人を操る能力だったの。多分だけど他のマーダーも同じ刀の能力をつけて来ているんじゃないかと」

「人を操るか。それで受刑者数人を操ってテロを起こす作戦か」

「現世人だけでなく、私たち衆人も操られるから気をつけないといけないわ」

「お前たちは大丈夫だったのか?」

「江口は斬られていないから大丈夫。私は井口の槍に刺されたけど、紅龍が私の中に入ってくる相手の能力を何とか止めてくれたわ」

「そうか。刀の能力は刀の能力で対応しなければいけないんだな」


 井口たちが操って外に出た受刑者たちは、操る人物が現世からいなくなった為正気に戻っていた。しかし、現世では被告人達が脱走したと大きな事件になっていた。


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