弐拾壱
地獄から戻ってきた神谷は周りを見渡し、何となく状況を掴んだ。
「新たに来た衆人の歓迎会か? いや、勧誘会か」
「神谷。お前には本当に楽しませてもらってるよ。まさか自分の能力を自分に使うとはな」
「柔軟な頭も必要ってことだよ。何でもかんでも力任せに戦って勝ているわけじゃない。さて、どんな勧誘をしていたのか知らないけど、俺からは1つだけ言わせてもらってもいいか?」
神谷は抱きついていた浩太を離して新衆人の方を向いた。
「ガーディアンに来いとも言わない。マーダーに入るなとも言わない。自分が思うようにこの地獄を生きれば良い。その結果、ガーディアンに入りたければ俺は迎える。マーダーに入れば俺は全力で倒す。それだけだ」
神谷はガーディアンの方を向いて「行こうか」と言い、駅のホームを出て行った。マーダーは勝利したはずなのに悔しい思いでいっぱいだった。中沢は去っていくガーディアンをジッと睨むように見ていた。
ガーディアンはひとまず拠点である北陸に戻ることにした。すると、後ろから3人の衆人が呼び止めに来た。
「あの!」
「ん?」
「私達、ガーディアンに入りたいです。1対5で戦っていたリーダーさんの姿を見て、ついて行きたいと思いました。私達に戦い方を教えていただけませんか?」
「そうか。3人も来てくれるなんて嬉しいよ。歓迎するよ」
「ありがとうございます!」
女性が1人、男性が2人、新たにガーディアンに加わった。能力はまだ持っていないようだったが、神谷たちと同じく刀は1人1本持っていた。まずは刀と仲良くなること。それを伝えて共に北陸へと向う新幹線に向った。
約3時間の電車旅で金沢に戻ってきたガーディアン。新しい人を含めて8人になったガーディアンは、刀とコミュニケーションを取っていた。星川はこの2日間で随分と仲良くなり、能力をもらえるようになっていた。
「神谷さん、紫龍が力を貸してくれるって」
「本当か! それは良かった。で、どんな能力なんだ?」
「それがまだ使ったことがないので分からないの」
「じゃあちょっと手合わせ願おうか」
神谷は白龍を出して鞘を抜いた。急に戦闘モードに入った星川と神谷を見て新人3人は刀を抜いて警戒態勢を取った。しかし、それを見ていた村野が3人に刀を鞘に納めるように促した。
「大丈夫。これは一種の試験みたいなものよ。追々説明するけど、今日は勉強と思ってあの2人の戦いを見ておいた方がいいわ」
「試験ですか。リーダーはやっぱり強いんですか?」
「強いわよ、いろんな意味で。マーダーのリーダーが肉体派なら、神谷さんは頭脳派かもね」
村野が話している間に戦いが始まった。星川は刀を両手で握ると少し驚いたような顔をして神谷を見た。何か力が伝わったのだろうと思い、神谷は警戒した。星川が少し屈んで軽くジャンプをした。すると5mは跳んだだろうか、そのまま神谷の頭上から猛スピードで落ちてきた。間一髪で避けた神谷にすぐさま突進して切りかかる星川のスピードは異常なまでに速かった。神谷は突進してきた星川を避けきれず刀で受け止めるも、急に星川の刀が重くなり押しつぶされた。
「そこまで!」と村野が戦いを止めた。見た目では刀1本で男性を押し倒し押さえ込む女性という感じだが、それが星川の刀の能力だった。
「見事だ。使い分けもしっかり出来ている。もう少しコントロールが出来ればかなり有利に戦えるだろうな」
「始めに力を発動した時に能力の全貌が頭に流れ込んできたの。どんな力か分かっていない人が相手なら勝てると思ったわ」
「そうか。見た目では分からないから、1発目の攻撃がかなり重要になってくるだろう。そこは仲間に相手してもらいながら試行錯誤すればいい」
紫龍の能力は重力を自由に操ること。星川に力を貸すことによって、刀だけでなく星川の身体さえも軽くしたり重くしたりと自由自在に重力を操ることが出来る。身体を軽くして高く跳び上がり、体を急激に重くして猛スピードで落ちる。その威力は直撃すれば人など粉砕するほどのものだった。身体が軽いと上に跳ぶだけでなく、横移動も高速で行うことが出来る。刀を合わせている時に紫龍を重くすれば、力を入れずとも相手に多大な負担をかけられる。
力の弱い女性にとって最も不利である力技が、紫龍にかかれば軽々と出来るのだ。相手がその能力に気付かなければ、女性に力負けすると思っていない男性を欺ける。
「すげー! リーダーを意図も簡単に倒した。星川さん、最強じゃないですか!」
「神谷さんの能力を知らないからそんなことが言えるのよ」
「リーダーの能力って一体何なんですか?」
「神谷さん自身の能力は、閻魔大王の使いかな」
「閻魔大王の使い?」
「斬った者を閻魔大王の元に送り返すの。こいつは現世に居てはいけないと神谷さんが判断すれば地獄に送り返すことが出来る能力。あなた達も見たでしょ、消えて戻ってくるところ。あれは自分を一度地獄に送って、閻魔大王にもう一度現世に送ってもらったのよ」
「話が難しくてよく分からないです。でも、閻魔大王に信頼されてるってことですね!」
「凄く簡単にまとめられてるけど、まあそんなものね」
「その能力っていつ使えるようになるんですか?」
「それは人それぞれタイミングが違うの。気長に待ちながら刀とのコミュニケーションを取った方がいいわ」
「分かりました」
色々と質問をしてくる男の名は「江口正隆」。一見マーダーに入りそうなチャラ男だが、勉強熱心で到着早々の戦いで神谷に一目惚れしたようだ。しかし神谷に話しかける勇気がなく、いつも村野に質問をしていた。




