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拾弐

 中沢が逃げるのをやめて振り向いた。それに合わせて追いかけていた神谷も止まった。


「やはり俺のところに来たか、神谷」

「当たり前だろ。俺はお前を送り返すって閻魔大王に頼まれてるんだよ」

「それは俺に勝つという意味か?」

「そうだ。それ以外にどういう意味がある」

「閻魔大王も大したことねえな、神谷なんかに頼むなんて。今現世に居る衆人の中で圧倒的に強いのは俺だ。いや、地獄内で一番強いかもしれないな。ハハハ」


 中沢は自信満々に言った。神谷は確かに中沢の強さは否定出来ないと感じていた。中沢は刀を出す様子も無く、ただ神谷と会話を楽しもうとしているようだった。神谷はいつ斬りかかられるか分からない為、ずっと警戒していた。


「神谷。そんなに警戒する必要は無い。俺は今は斬りかかる気が全く無いからな」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味だよ。今は斬らねえ」

「今のお前なら俺を殺すなんて容易いものだろ。このチャンスをなぜ棒に振るんだ。何を企んでいる」

「良く分かっているじゃないか。確かに今のお前なら直ぐ殺せるな。しかし俺もチームのリーダーという立場上、現世人をいかに多く殺せるかって考えながら行動している。チームワークを大事にしているんだよ」


 神谷を殺さない理由がハッキリ分からないが、何か足止めされている気がしてならなかった。神谷は刀を取り出し刀を抜いた。中沢は呆れた顔で「やめておけ」と言ったが、神谷は刀を納めない。中沢は刀を出すことも無くただ神谷を見ている。神谷は無防備な中沢に向けて刀を振り下ろした。すると、中沢の姿は消えた。斬った手ごたえは無かった。一瞬の出来事だったが、神谷はしっかり見ていた。刀を振りかぶった瞬間、ワープ能力を持った衆人が中沢の横に現れ、振り下ろすと同時に中沢と共にどこかへワープしたのだ。逃げられた悔しさで神谷は刀を地面に投げつけた。


「痛ぇな。コンクリートは流石に痛いぜ」

「白龍、ごめん。あまりにも悔しくて八つ当たりしてしまった」

「気持ちは分かるぜ。でも、冷静になれよ。お前、さっき中沢に斬りかかる時に能力を発動していなかっただろ」


 神谷はハッとした。もしあの時、中沢を斬れたとしても普通に傷を負わせる程度だった。中沢の挑発で頭に血が上ってしまっていた。刀に指摘された神谷は冷静さを取り戻した。

 神谷は中沢や他の衆人たちが居そうな場所を探し始めた。どこかで事件が起きていれば現世人も騒々しいだろう。しかし、現世人は特に騒いでいる様子も無くいつもの日常を過ごしている様子だった。

 札幌駅に戻ると、川上と村野が居た。村野が駅の壁を背に座っている。その前にジッと立っている川上。何をしているのかと近づくと、村野の胸に刀が刺さっていた。神谷は咄嗟に抜刀し、川上に斬りかかった。川上の腕を斬り落としたが、またしても能力を発動するのを忘れていた為、川上はただの負傷で終わった。しかし、腕を1つ失った川上はこのままでは不利だと判断し、村野に刺さっている自分の刀を抜いて自害した。

 神谷は白龍に促されて能力を発動し、復活した川上に向って斬りかかった。怒りに身を任せる神谷の攻撃は、力では押せるものの、大振りで当たる気配が無い。白龍の呼びかけにも耳を貸さない神谷は、川上に全力で斬りかかり続けた。

 発動時間も残りわずかとなった頃、呆れた白龍が神谷の身体を乗っ取った。急に攻撃をやめた神谷を不審に思い、川上は少し距離を取った。ジワジワと後ずさりし、ある程度の距離が出来たところで逃げようと考えていた。しかし、いくら下がっても神谷との距離が広がらない。神谷も川上と同じスピードで迫りながら距離を一定に保っていた。川上の足が壁にぶつかった時、神谷は川上に向って斬りかかった。

 

「いざ参らん」


 合言葉と同時に神谷が振り下ろした刀は、川上の左肩から右の腰にかけて斜めに刀が通った。綺麗な袈裟斬りで川上は光り消えた。

 神谷は斬った後呆然と立っていた。村野は一度自害してから復活した為、元気な身体で神谷の下へ駆け寄ってきた。


「流石です。ご迷惑をおかけしました」

「え? 川上は?」

「たった今、神谷さんが斬って閻魔大王の元へ送り返したじゃないですか」

「俺が? 全然覚えてないんだけど……」


 それもそうである。血が上って全く勝ち目の無い戦い方をしていた神谷に呆れて白龍が身体を乗っ取った為、神谷は眠っている状態だったのだ。白龍が神谷の脳に直接話しかけ、何が起きたのかを説明した。


「俺もまだまだ子供だな」

「仲間思いということでいいじゃないですか」

「川上だったから勝てたんだよ。これが中沢だったら……」

「そうですけど。……それより大変なんです!」

「どうした?」


 村野が何かを思い出したかのように慌てて話し始めた。

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