神女
アパート。
ドアロックがカチッと音を立てて外れる。礼白は手を伸ばして壁のスイッチを探り、明かりをつける。
広くないリビング。ソファが一つ、テーブルが一つ、パソコンが一台。本棚には書類がぎっしり詰まっている。カーテンは半分だけ引かれ、外には都市の夜灯が広がっている。
彼はドアを閉め、鍵を玄関のトレイに放り込む。
静かだ。
冷蔵庫がキッチンの隅でブーンと唸っている。それ以外は何もない。
礼白は玄関に立ち、ぐるりと見回す。
「やっぱり俺一人か。」
彼は低く言う。声は空っぽの部屋に広がり、誰も応えない。
彼は靴を履き替え、リビングに入る。テーブルの上に白い封筒が置かれている。
彼は手に取る。リリムの字だ。とても丁寧で、一画一画がきちんとしている。
「首相様。買い物に行ってきます。冷蔵庫に残りのスープがあります。温めればすぐ飲めます。牛乳がなくなりました。明日補充します。夜に雨が降るかもしれません。窓を閉めるのを忘れないでください。」
礼白は手紙を置く。
彼はキッチンへ行き、冷蔵庫を開ける。スープは鍋の中にあり、上にラップが掛けられている。隣には半パックの卵、一袋の人参、数本の葱。
彼はスープ鍋を取り出し、コンロの上に置く。火をつける。青い炎が鍋底を舐める。
彼は調理台に寄りかかり、スープが温まるのを待つ。
「買い物、か。」
彼は独り言を言う。
シルヴィエットは島国だ。面積は大きくない。耕地は限られている。食糧自給率は四割にも満たない。多くの特産品は輸入に頼っている。今、突然この世界に現れ、元の貿易ルートはすべて途絶えた。
「食べれば食べるだけ減る。」
彼はコンロのそばの缶詰を取り、裏返してラベルを見る。そこには「北境連邦・ブルーベリージャム」と印刷されている。このブランドは、もう今後手に入らない。
スープが湯気を立て始める。彼は火を止め、鍋をテーブルに運ぶ。茶碗を一つ、スプーンを一把取る。
彼はソファに座り、スープを一杯すくう。味は薄めだ。リリムの料理はいつも薄味だ。
「リリムは本当に偉大な女性だ。」
彼は一杯飲み干し、茶碗をテーブルに置く。
そして彼は立ち上がり、パソコンの前へ行く。
画面が明るくなる。デスクトップはとてもきれいだ。彼はブラウザを開く。
この世界にはインターネットがある。基礎的なものだ。速度は速くなく、ページは簡素で、フォーラムで話す人も多くない。シルヴィエット国内のネットワークと比べれば、あまりに劣る。
彼はシルヴィエットのイントラネットを開く。AIアシスタントが自動的にポップアップする。
「首相様。未読メールが十七通あります。分類いたしましょうか。」
「緊急度順に。」
「分類しました。緊急三通。普通七通。無視可能七通。」
礼白は最初の緊急メールを開く。国防省からだ。
「軍貿注文。東州連盟が人型武装の輸出可能性について照会。北嵐連盟がマグネシウム電池の供給について照会。西洋公約が前進翼戦闘機の技術パラメータについて照会。」
彼は下へスクロールする。
「日初群島の軍售会招待状が正式に届きました。日程は来月十五日。場所:日初本島。参加国:西洋公約、北嵐連盟、東州連盟、西中海共同体、北原。特別招待:シルヴィエット国。」
礼白はこの行をじっと見つめる。
軍貿。
シルヴィエット国が自給自足できる分野は多くない。食糧はだめだ。エネルギーもだめだ。原材料もだめだ。だが軍需はできる。
人型武装。マグネシウム電池。前進翼戦闘機。これらがシルヴィエット国の切り札だ。
「取らねば。」
彼は低く言う。
「軍貿注文は、必ず取る。」
彼はメールを閉じ、背もたれに寄りかかる。
画面の青い光が彼の顔に映る。窓の外には風があり、カーテンが一度揺れる。
彼は振り返って窓を見る。
「雨が降りそうだ。」
彼は立ち上がり、窓をしっかり閉める。
そして彼はパソコンの前に戻り、メールを読み続ける。
――
日初の国。皇宮。
大殿の穹頂はとても高い。上に何が描かれているか分からないほど高い。四方の壁には無数の小さな瑠璃灯が嵌め込まれ、光は柔らかく、水の波が流れるようだ。
大殿の中央には水池がある。水はとても浅く、底まで澄んでいる。
錦鯉。
無数の錦鯉が空中を泳いでいる。水中ではない。まさに空中だ。透明で、微かな光を帯びた鰭が空中でゆっくりと揺れる。それらは大殿の穹頂を巡り、生きた星河のように。
水池の中央に、一人の人影がゆっくりと浮かび上がる。
彼女は水面を踏み、しかし沈まない。水波が彼女の足元で広がり、一輪一輪と。
白い長髪が足首まで垂れている。目は浅い金色で、瞳孔は細長い。肌はとても白く、ほとんど透明なほど。彼女は古い様式の白い長袍を着ており、袖口と襟元には水紋が刺繍されている。
神女。
彼女は目を開ける。
大殿の下方には数人が立っている。皆、年老いている。最も若い者でも髪はすでに真っ白だ。
先頭の老臣が一歩進み、身をかがめる。
「殿下。」
彼の声は大殿に響く。
「万物を以て駆使と為し、駆使を以て万物と為さず。」
彼は顔を上げる。
「殿下が万物を駆使する祭典がまもなく始まります。」
他の数人の老臣も同時に身をかがめる。
「神民たちは殿下の涎滴を待ち望んでおります。」
老臣の声には震えがある。
「殿下の龍の涎。」
神女は水面に立ち、動かない。空中の錦鯉が彼女のそばを泳ぎ、鰭の先が彼女の袖をかすめる。
彼女は何も言わない。
沈黙が長く続く。
そして彼女が口を開く。声はとても軽いが、大殿の隅々まで鮮明に届く。
「それならば。」
彼女は目を上げる。
「各国の者を召し寄せよ。」
老臣たちは顔を上げる。
「大朝祭典に奉げよ。」
神女はそう言い、振り返る。
錦鯉が彼女の後ろに従って泳ぎ、無数の光の糸のようだ。
彼女の長袍が水面を掃き、何の痕跡も残さない。
大殿の扉が彼女の後ろで閉まる。
老臣たちはその場に立ち、互いに一瞥する。そしてゆっくりと退出する。
大殿は空になった。
水池だけがまだ微かに揺れている。
殿頂の瑠璃灯が一つ一つ暗くなる。
最後に一つだけ残り、神女が消えた場所を照らしている。
その灯りの下、水面にぼんやりとした影が映る。
神女ではない。
それは盤踞する、巨大な、首尾の見えない影。
灯が消える。
大殿は暗闇に沈む。
そして暗闇の最も深いところで、極めて軽いため息が散った。
誰も聞かなかった。




