誰もその空白がどこから来たのか知らない。
死寂の地。
誰もその空白がどこから来たのか知らない。
大地はひび割れた皮膚のようで、亀裂は視界の果てまで延びている。しかし隙間には土もなく、岩もなく、何もない。色もなく、質感もなく、影すら存在しない。純粋で、人を狂わせるような空白。
百海里の外。
西洋公約の旗を掲げた偵察艦が境界線の上に停まっている。艦橋では、濃紺の軍服を着た三人が舷窓の前に立っている。
「確認したか。」
そう言ったのは中央に立つ中年の男で、肩章には銀星が二つ。彼は振り返らず、視線を窓の外の白い領域に釘付けにしている。
「確認しました。殿下。」
右側の若い士官がうつむいて画面を見る。
「北嵐連盟の第四艦隊も到着しました。我々から二十海里も離れていません。」
「彼らは来るのが早いな。」
中年の男は笑った。
「東州連盟の方は?」
「動きはありません。少なくとも今のところは。」
左側の通信官が口を挟む。
「衛星画像がちょうど戻ってきました。あの空白領域の外縁に……何かがあるようです。」
「何だ。」
「まだ不明です。画像がぼやけすぎています。ですが、以前の完全な空白状態とは違います。」
中年の男はついに振り返る。
「本部に連絡しろ。計算魔法師の派遣を要請する。」
「はい。」
彼は再び窓の外を見る。
「シルヴィエット国……」
彼はその名を口にし、まるで見知らぬ単語を噛みしめるように。
「聞いたことがない。」
「殿下、北嵐の者の仕業ではないでしょうか。」
若い士官が声を潜める。
「何とも言えん。だがもし彼らの仕業なら、国をあの空白の隣に置くことはない。あの空白自体が異常だ。」
彼は少し間を置く。
「それに北嵐も同じように緊張している。彼らの艦隊はずっとその場でぐるぐる回っている。もしこれが彼らの仕業なら、そんなに慌てふためくはずがない。」
通信官が再び顔を上げる。
「殿下、本部からの返電です。計算魔法師はすでに向かっています。三時間以内に到着予定です。」
「三時間か。」
中年の男はあの白い領域を一瞥する。
「三時間以内に、あれがこれ以上伸びないことを願う。」
――
北嵐連盟第四艦隊。
旗艦の艦橋で、髪の毛が灰白色の女が背もたれに寄りかかり、ブーツをコンソールの上に乗せている。彼女は火のついていない煙草をくわえ、目を半分細めている。
「つまり。どこから湧いて出たのか分からない国だ。」
「はい、将軍。」
副官がそばに立ち、印刷された資料の束を手に持っている。
「初歩的な測定によれば、面積はおよそブリテン島に相当します。人口密度は極めて低い。政治体制は不明です。」
「名前は。」
「シルヴィエット国。」
「シルヴィエット。」
彼女は煙草を口から外し、指の間でくるりと回す。
「聞いたことがない。誰か聞いたことあるか。」
艦橋の数人が互いに顔を見合わせる。誰も話さない。
「聞いたこともない国が。一片の空白から生えてきた。」
彼女はブーツをコンソールから下ろし、身体を前に倒す。
「西洋側は何か動いているか。」
「偵察艦を派遣しました。今のところこれ以上の動きはありません。ですが慣例に従えば、彼らは外交団を送るはずです。」
「我々も送る。」
「将軍、まだ相手の態度は確認できていません――」
「だからこそ送るんだ。」
彼女は立ち上がり、煙草を口に戻す。
「もしこれが使える駒なら、西洋の手に落ちれば面倒だ。東州は?」
「動きはありません。」
「古狸め。」
彼女は鼻を鳴らす。
「準備しろ。外交団は遅くとも明日出発だ。それから――」
彼女は窓の外を見る。
「計算魔法師に彼らの言語の解読を急がせろ。彼らが何を言っているのか知りたい。」
――
三時間後。
西洋公約の偵察艦。
計算魔法師はヘルメットを外し、こめかみを揉む。額は汗びっしょりだ。
「どうだ。」
中年の男が彼の後ろに立つ。
「だいたい使えるようになりました。先生。」
若者は息を切らしている。
「彼らの言語は……とても特殊です。我々が知るどの語族でもありません。ですが構造には規則性があります。半日あれば、基本翻訳は完成できます。」
「今、何が分かる。」
「国名。シルヴィエット国。他はまだ処理中です。」
「体制は。軍隊は。」
「先生、本当に時間が必要です。」
計算魔法師は苦笑する。
「この言語は……まるで故意に設計されたかのようです。いくつかの文法規則が非常に整っていて、ほとんど例外がありません。」
「どういう意味だ。」
「つまり、自然に形成された言語ではないということです。むしろ……人為的に構築されたもののように。」
「人為的に構築された言語。」
「文法上はそう見えると言っているだけです。具体的なことはさらに分析が必要です。」
「続けろ。」
中年の男は振り返る。
「翻訳が完了したら、真っ先に知らせろ。」
――
東州連盟。
静かな部屋で、一人の老人が碁盤の前に座っている。向かいに人はいない。
彼は白い石を持ち、一箇所に置く。
「急ぐことはない。」
彼は独り言を言う。
「西洋と北嵐が先に動く。彼らに試させればいい。」
彼は黒い石を手に取り、手のひらに握る。
「空白から現れた国。面白い。」
彼は黒い石を置く。
「非常に面白い。」
――
シルヴィエット国。首相執務室。
礼白は背もたれに寄りかかり、こめかみがずきずきと脈打っている。
一つの手が彼の肩に置かれる。指先がわずかに力を込め、硬直した筋肉を押す。
「首相様。」
声はとても軽く、少しの諦めを含んでいる。
「もう四時間も座りっぱなしです。」
礼白は目を開けない。
「リリム。」
「はい。」
「外交電報はどれだけ溜まった。」
「七通。」
メイドの指が彼の肩甲骨に沿ってゆっくりと押し広げる。
「西洋公約が三通、北嵐連盟が三通、東州連盟が一通。」
「東州の分は何と。」
「礼儀的な挨拶です。実質的な内容はありません。」
「両側は。」
「どちらもできるだけ早く正式な外交ルートを開設するよう求めています。表現はかなり焦っています。」
礼白は目を開ける。
「焦っている。」
彼は繰り返す。
リリムの指が一瞬止まり、また続ける。
「はい。とても焦っています。それに……」
「それに何だ。」
「両側とも探りを入れています。我々が相手側に傾くかどうかを知りたがっています。」
礼白はしばらく沈黙する。
「彼らは我々を小国だと思っている。」
「はい。」
リリムの口調は平坦だ。
「彼らの目には、シルヴィエット国はとても小さい。恐れるに足りない。ですが位置が敏感です。だからどちらも引き込みたい。」
礼白は手を伸ばし、机の上の電報を一通取り、一瞥する。
「文言は丁寧だな。」
「首相親展ですから。彼らはあなたが誰なのかまだ知りません。」
礼白は電報を置く。
「私も彼らが誰なのかまだ知らない。」
リリムはそっと彼の肩を押し、背もたれに戻らせる。
「なら、ゆっくりやればいいのです。」
彼女の声はとても落ち着いている。
「焦っているのは彼らです。私たちではありません。」
礼白は目を閉じる。
「君の言う通りだ。」
「コーヒーは必要ですか。」
「いらない。」
リリムは手を引き、脇へ下がる。
「では、残りの電報を整理してきます。」
「うん。」
礼白は彼女の足音が遠ざかり、扉が静かに閉まるのを聞く。
執務室は再び静かになる。
彼は目を開け、壁のポスターを見る。
尊爵が笑っている。皇女は冷たい顔をしている。
「恐れるに足りない。」
彼は低い声で言う。
指で机を軽く叩く。
「なら、そう思わせておけ。」




