大殿龍椅
大殿。
石段は長い。礼白は先頭を歩き、黎姫が後ろに続き、皇女が殿を務める。三人は空旷な広場を抜ける。両側の石灯が冷白色の光を落とす。
大扉は開いている。
中はとても暗い。龍椅の周りだけに微かな光の輪があり、上方の見えない源から落ちてくる。
龍椅にはあのものが斜めに横たわっている。
人ではない。龍でもない。より正確には人型の蜥蜴。白い鱗が全身を覆うが、四肢はまだ人の輪郭を保っている。指はとても長く、指先は黒い爪。顔は平たく、目は四つの深紅色の縦瞳孔。背中には尾があり、椅の縁から垂れ、尾先が軽く揺れている。
だが周囲に敵はいない。一人もいない。空っぽの大殿、彼女だけ。
礼白は敷居を跨ぐ。足音が空旷な大殿に木霊する。
龍椅の上のものが動く。四つの目が同時に彼らに向く。
「我を見るは龍を見るが如し。」
彼女の声はその平たい口から流れる。低く、木霊を帯びている。
「なぜ俯首せぬ。」
礼白は足を止める。彼はそのものを見る。
「申し訳ありません。」
彼は言う。声は平坦だ。
「我々は民主国家です。とうに跪拝の礼は行っていません。」
龍椅の上のものがゆっくりと起き上がる。鱗が石面を擦り、微かな沙沙という音を立てる。彼女は立つと座っている時より小さくなるが、威圧は倍増する。
空気が重くなる。
その重さは物理的なものではない。もっと深い何かだ。足元の石板が突然泥沼に変わったかのようで、周囲の空気が突然水に変わったかのようだ。膝が曲がりたがる。肩が落ちたがる。脊椎が縮こまりたがる。
礼白の後ろで、皇女が低くうめく。彼女の膝が一度曲がるが、跪かない。彼女は歯を食いしばり、支える。額に青筋が浮かぶ。
さらに後ろで、ついてきた数人の日初特警はすでに跪いている。膝が石板に打ちつけられ、額が地面に貼りつき、体が震えている。
礼白は自分の膝が曲がるのを感じる。彼はまっすぐ立てない。体が下へ沈む。彼は半蹲みになり、片手で膝を支え、もう片方の手で銃を握る。銃口は下。彼は跪かない。
だが立ち上がれない。
龍椅の前のものが近づいてくる。一歩一歩。一歩ごとに、威圧が一分重くなる。
そして。
黎姫が立ち上がった。
彼女も先ほどは曲がっていた。だが今、立ち上がった。腰はまっすぐ。膝は揃っている。頭は上げている。彼女はその白い蜥蜴のようなものを見る。手の銃は体側に垂れ、挙げていない。
彼女は跪かない。彼女は曲がりさえしない。彼女は立っている。とても安定して。
礼白は横を向き、彼女の横顔を見る。彼女の唇が動いている。とても軽い。何かを言っているようだが、聞こえない。
龍の威圧はまだある。だが黎姫の身の上の何かがそれを偏らせる。石の上を流れる水のように。彼女はそこに立ち、押し潰されていない。
二つのものが対視する。
白い蜥蜴。そして黒い髪の少女。
四つの深紅色の目。そして一対の黒い、奥に金色が遊動する目。
そして彼女たちは同時に口を開く。
「この国と人々の未来のために。」
「この国と人々の未来のために。」
異口同音。同じ言葉。違う声。重なり合う。
「私はお前を打ち負かす。」
「私はお前を打ち負かす。」
礼白は半蹲みのまま、この光景を見る。
龍椅の上のものが止まる。白い蜥蜴は黎姫から三歩の距離で止まる。四つの目が細められる。
「お前。」
彼女の声に初めて別のものが混じる。
黎姫は答えない。彼女はただ立っている。銃は体側に垂れている。目は相手を見ている。
――
海辺。
月光の下、三台の魔神武装が対峙する。
森羅。深緑色。浅瀬に立ち、海水は足首を越える。真椒は操縦舱の中で、手を操縦桿に置いている。
尊爵の砂漠色メカは砂浜に立ち、肩の放熱口はまだ光っている。彼は先ほど展覧会からここまで運転してきたので、整備する暇がなかった。左肩の装甲には凹みがあり、以前黒菱と戦った時のものだ。
黒菱の黒いメカは尊爵の隣に立つ。尾は跳ね上がり、紫の目は輝いている。彼女は操縦舱の中にいない。メカの肩の上に座り、紫の髪が海風に煽られている。
「すまないな。」
尊爵の声が外部スピーカーから流れる。
「国際救助には証明書が必要だ。このお嬢さん、証明書を出せば通してやるが。」
真椒の森羅は動かない。
「……私は東州連盟の者です。」
「証明書は。」
「船にある。」
「では無いな。」
「そういうことだ。」
尊爵の口調はとても気楽だ。
「では通すのはちょっと都合が悪い。」
黒菱はメカの肩の上で前後に笑い転げる。
「ふふふふはははは!」
彼女はメカの肩甲を叩き、声は鋭い。
「彼女の顔が真っ青だ!はははは!」
森羅の操縦舱の中で、真椒は操縦桿を握りしめる。彼女の表情は平静だが、額に汗がある。彼女には確かに証明書がない。東州の行動は常に書面の痕跡を残さない。今ここで阻まれ、彼女は理屈が立たない。強行突破するなら、向かいに二台のメカがあり、しかもあの砂漠色の操縦者は善人ではない。
だが彼女は入らねばならない。林秀が中にいる。
「どけ。」
真椒の声が冷たくなる。
「任務がある。」
「任務。」
尊爵が笑う。
「何の任務だ。机に押さえつけられたあの細目の先生を救うのか。」
真椒の瞳孔が収縮する。
森羅のエンジンが起動する。深緑色のメカが腕を持ち上げる。
黒菱の笑声が止まる。彼女はうつむいて真椒の方向を見る。
「あら。」
彼女は言う。
「焦れた。」
尊爵はため息をつく。
「まったく。では戦うか。」
砂漠色のメカが一歩前に踏み出す。
――
大殿。
林秀は地面に跪いている。
彼は廊下から引きずり込まれてからここに押さえつけられている。膝は石板に打ちつけられ、肩には二人の神官の手がある。彼は起き上がれない。
威圧が彼の上に圧し掛かる。廊下で感じたものより十倍強い。彼は目を細め、口元にはまだ笑みがある。だが背中の服は全て濡れている。汗が顎から滴り、石板に落ちる。
彼は大殿の中の光景を見る。
白い蜥蜴。半蹲みの礼白。立っている黎姫。跪いて歯を食いしばって支える皇女。
そして皇女のそばの二つの小さな影。
ミリヤットと艾可可愛。
彼女たちがいつ入ってきたのか。林秀は知らない。だが彼女たちは地面に跪き、顔色は真っ青だ。ミリヤットの手は艾可可愛の腕を掴み、艾可可愛は泣いている。
林秀はこの光景を見る。彼は笑えない。
森羅はまだ来ない。
真椒は阻まれている。
彼はここにいる。跪いて。何もできない。
あの白い蜥蜴のようなものはまだ黎姫に近づいている。
礼白は半蹲みで、手で膝を支えている。彼の頭の中は回転している。
政治目的。自殺的。唯一達成できるもの。
彼は思いついた。
だが彼は言えない。




