白い波濤
白い波濤。
龍椅の方向から涌き上がる。音はない。ただ白光、天を覆い地を埋める。石板の地面が呑み込まれ、石柱が呑み込まれ、龍椅が呑み込まれる。すべてがその光に呑み込まれる。
礼白は何かに押された感覚を覚える。物理的な力ではない。別の何か。彼の体は数歩後ろへ滑り、手で地面を支えてようやく倒れずに済む。
威圧が消える。
白光が引いた後、大殿はめちゃくちゃだった。石柱に亀裂が入り、何本かは半分折れている。龍椅は地面にひっくり返っている。石板の地面にはいくつもの割れ目が走っている。空気には焦げた匂いが漂う。
日初の特警たちはまだ地面に跪いている。数人は気を失っている。ミリヤットは艾可可愛を抱え、壁の隅に縮こまっている。艾可可愛は泣いている。ミリヤットの顔は紙のように白いが、気を失ってはいない。彼女は唇を噛み、艾可可愛を胸に守っている。
皇女は片膝をつき、片手で地面を支えている。彼女の銃はそばに落ちている。彼女は拾わない。大殿の中央を見ている。
黎姫と彼女の姉が消えた。
礼白は立ち上がる。彼の膝は震えている。彼は周囲を見回す。いない。ここではない。龍椅の後ろにもいない。柱の後ろにもいない。どこにもいない。
林秀は遠くない地面に跪いている。彼の表情が初めて平静でなくなっている。彼も見ている。
そして。
三分。
空気が裂かれたかのようだ。
黎姫が現れる。
彼女は地面に跪いている。膝が碎石に打ちつけられている。彼女の手は震えている。ひどく震えている。彼女は一本の刀を握っている。刀身はとても細く、銀白色で、どこかから抜き出したかのようだ。
刃は姉の胸に突き刺さっている。
黎礼は人の形に戻っている。白い長髪が地面に散り、埃にまみれている。四つの目は二つに戻っている。鱗は消えた。角は縮んだ。彼女は碎石の上に横たわり、天井を見ている。口元に血。胸に血。
黎姫はうつむいている。彼女の手はまだ柄を握っている。彼女の肩は震えている。
「やめて……」
彼女の声はとても小さい。そして少し大きくなる。
「やめて。」
さらに大きくなる。
「やめて!!!」
彼女は顔を上げる。顔中が涙でいっぱいだ。彼女の目は赤く、瞳孔の中の金色の光は粉々に砕けている。
「なぜ……」
彼女は姉の顔に向かって言う。
「なぜ私にこんなことをするの……」
彼女の声が途切れる。
礼白は彼女を構わなかった。
彼は駆け出した。膝が痛むが、支障はない。彼は黎礼のそばに跪き、手を伸ばして脈を探る。ある。とても弱い。だがまだ打っている。
「心臓には届いていない。」
彼の声はとても安定している。
「まだ助けられる。」
彼は顔を上げる。皇女を見る。
「皇女。すぐに飛行機をシルヴィエット首都病院へ手配しろ。私の専用医療チャーター機を使え。」
皇女は立ち上がる。彼女の口元には血の跡があり、いつ噛み切ったのか分からない。彼女は何も問わない。
「はい。首相。」
彼女は振り返って走り出す。足音は速いが、安定している。
礼白はうつむいて黎礼を見る。彼女の目が動いている。彼を見ている。唇が動く。
「話すな。」
礼白は彼女の肩を押さえる。
「力を蓄えろ。」
彼は振り返って林秀を見る。
林秀はすでに自分で起き上がっている。彼は地面に跪坐し、この光景を見ている。
「だいたい理解しました。」
林秀の声は平坦だ。だが普段より少し遅い。
「合法的な新政権を作りたい。そして第二次大戦の罪責から逃れたい。」
彼は少し間を置く。
「本当に……あまりに天真爛漫ですね。」
彼は礼白を見る。
「たとえ我々が同意しても、西洋人は既存の国際秩序のために、あなたたちを簡単に成功させはしません。」
礼白は振り返らない。彼はまだ黎礼の傷を押さえている。
「まず人を救う。」
彼は言う。口調は先ほどより重い。
「まったく。若いのにもう少し割り切ればいいものを。どうしていつもこういうことをする。」
彼の声には本物の苛立ちがある。演じたものではない。
林秀は彼を見る。しばらく沈黙する。そしてうなずく。
――
扉の外から重い足音が聞こえる。
一台のメカが歩いてくる。深緑色。森羅。その右手には二台のメカを提げている。一台は砂漠色、一台は黒。まるで二つの玩具を提げているかのように。
尊爵の砂漠色メカの操縦舱が開く。彼は顔を出す。髪は乱れ、顔には灰がついているが、表情はまだだらりとしている。
「すまない。エネルギーが切れた。」
彼は手を振る。
「どうせなら向こうに提げてきてもらった、ボス。はは。」
黒菱の黒いメカの操縦舱も開く。彼女は舱の縁にもたれ、紫の髪が垂れている。
「ははははは。」
彼女は笑う。いつも通りだ。
礼白は尊爵を一瞥する。そして森羅を一瞥する。
真椒が操縦舱から飛び降りる。着地は安定している。彼女は歩いてきて、林秀のそばに立つ。
「林さん。」
「うん。」
林秀は立ち上がる。膝の埃を払う。彼の細目が戻ってくる。
「ご苦労様。」
真椒は大殿の中の光景を見る。ひっくり返った龍椅。砕けた石柱。地面に横たわる黎礼。彼女のそばに跪く黎姫。まだ傷を押さえている礼白。
「これは……」
「話せば長い。」
林秀は言う。
――
数日後。シルヴィエット国。首都病院。
礼白は廊下に立っている。頭を壁にもたれかける。目を閉じる。
集中治療室で、黎礼はベッドに横たわっている。体には管が刺さっている。機器の音は規則的だ。心臓はまだ打っている。命は助かった。
彼は足音を聞く。とても急いでいる。とても重い。
彼は目を開ける。
シルヴィエット希芽が廊下の突き当たりに立っている。金髪はポニーテールにまとめられている。普段着。徽章はつけていない。彼女の顔はとても赤い。照れているのではない。怒っているのだ。
「礼。」
彼女の声はとても冷たい。
礼白は背筋を伸ばす。
「陛下。」
彼女が歩いてくる。ハイヒールが床を叩き、一歩ごとに重い。礼白の前に来た時、彼女は止まる。顔を上げて彼を見る。
「あなたは自分が何をしているか分かっているの。」
礼白の唇が動く。
「分かっています。」
「分かっていない。」
希芽の声はとても低く抑えられている。だが一語一語が歯で噛み出されたかのようだ。
「あれは日初の神女。日初の実際の統治者。あなたは彼女をシルヴィエットに連れてきた。もし彼女が手術台で死んだら、あなたの手で死んだら、日初はどう反応する。東州はどう反応する。西洋はどう反応する。考えたの。」
礼白は彼女を見る。
「考えました。」
「考えていない。」
希芽は手を伸ばす。彼の耳を掴む。
礼白は腰を曲げる。
「痛い。」
「痛いのが当然よ。」
希芽は手を離さない。彼女は彼の耳を掴み、彼を集中治療室の窓の前に引き寄せる。
「見て。」
礼白はガラスの向こうの黎礼を見る。
「彼女が目を覚ましてから話す。」
希芽は手を離す。
礼白は耳を揉む。
集中治療室で、黎礼の指が一度動く。そしてまぶたが動く。機器の音が少し速くなる。
希芽は彼のそばに立っている。もう何も言わない。
礼白はガラスを見る。
「これから。」
彼は言う。
「鉄拳教育だ。」




