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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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299話:グロマール

共和国南部農業区。


朝。


風が吹く。


広大な畑。


小麦。


豆。


野菜。


果樹。


無数に広がっている。


昔。


ここは荒れていた。


痩せた土地。


放棄畑。


飢え。


病。


それが普通だった。


今。


違う。


畑が生きている。


人が生きている。


共和国農業学校。


若い農民達が畑へ出ていた。


鍬を持つ。


土を見る。


水路を確認する。


全部学びながら動いている。


共和国では、

農業も教育だった。


畑の中央。


グロマールが静かに立っていた。


帽子。


簡素な服。


誰も見れば、

ただの農民に見える。


共和国代表でもない。


王でもない。


英雄らしくもない。


だが。


周囲の農民達は自然に頭を下げる。


若い農業教師が近づいた。


「南区の土壌循環、

かなり安定しました」


グロマールが土を触る。


湿度。


栄養。


魔力流。


全部確認する。


鑑定。


魔力循環。


共和国農業の根幹。


グロマールが静かに言った。


「……いい土だ」


それだけ。


だが。


周囲の農民達が嬉しそうに笑う。


共和国では、

グロマールの言葉が軽くない。


理由。


現実を見るから。


嘘を言わないから。


畑奥。


子供達が走っている。


笑いながら。


泥だらけになりながら。


昔なら。


農村の子供は笑わなかった。


働くだけ。


痩せるだけ。


冬に怯えるだけ。


今。


違う。


学校がある。


食事がある。


治療院がある。


だから笑える。


小さな少女がグロマールへ駆け寄った。


「グロマール先生!」


両手に野菜。


収穫したばかり。


グロマールが受け取る。


「育ったな」


少女が嬉しそうに笑う。


「学校で習ったの!」


周囲の大人達も笑う。


共和国では、

子供が農業を恥じない。


そこが大きい。


昔。


農民は、

搾取される側だった。


今。


共和国では違う。


農民は文明維持職。


尊敬される。


共和国中央水路。


巨大水流。


農地へ綺麗に分配されていく。


共和国水管理師達が巡回していた。


若い管理師が驚いた顔をする。


「北部水路、

循環効率上がってる……」


隣の老農民が笑う。


「子供達が管理覚えたからな」


循環。


共和国では、

全部次世代へ渡される。


だから止まらない。


共和国南部学校。


昼。


子供達が授業を受けていた。


読み書き。


計算。


魔力循環。


農業理論。


全部普通。


昔なら。


貴族教育。


今。


民間教育。


教師が黒板へ書く。


『土壌循環』


子供達が真剣に見る。


教師が説明する。


「畑も疲れる」


「だから休ませる」


「循環させる」


小さな少年が手を挙げた。


「人も同じ?」


教師が少し驚き。


そして笑った。


「そうだな」


「人も同じだ」


共和国教育。


暗記だけじゃない。


考えさせる。


そこが強い。


校舎外。


グロマールが静かに授業を見ていた。


騒がない。


命令しない。


ただ見る。


共和国は、

もうグロマール一人で回っていない。


教師がいる。


農民がいる。


治癒師がいる。


物流がいる。


循環が成立している。


そこが重要だった。


遠く。


共和国街道。


商隊が通る。


共和国。


帝国。


北方。


全部繋がっている。


昔なら、

戦争準備だった。


今。


物流。


保存食。


教材。


農具。


全部流れている。


共和国以前。


国境は殺し合いだった。


今。


生活線になっている。


グロマールが静かに空を見る。


青空。


平和だった。


若い頃。


そんなものは無かった。


飢え。


盗賊。


病。


崩壊。


全部見た。


だから。


今の光景が、

どれほど異常か理解している。


その時。


子供達の笑い声が響く。


泥だらけ。


転ぶ。


笑う。


また走る。


グロマールが静かに目を細めた。


共和国兵士が近づく。


「南部巡回終了しました」


「問題ありません」


昔なら。


兵士報告は、

盗賊。


暴動。


飢餓。


死者。


今。


問題無し。


それが日常になり始めている。


共和国農村。


夕方。


煙が上がる。


料理の匂い。


家族の声。


共和国では、

“普通の生活”が増えていた。


そこが強い。


豪華じゃない。


奇跡でもない。


ただ。


死なない。


飢えない。


学べる。


家族を持てる。


それが広がっている。


グロマールが畑を歩く。


誰も邪魔しない。


共和国民は知っている。


この男は。


王になりたかった訳じゃない。


支配したかった訳でもない。


ただ。


止めたかった。


飢えを。


病を。


崩壊を。


だから循環を作った。


畑の端。


老農民が静かに呟いた。


「戦争の時代が、

終わるとはな……」


隣の若い農民が笑う。


「今は忙しいですから」


「畑も」


「学校も」


「工房も」


「戦争してる暇ないですよ」


老農民が笑う。


本当にそうだった。


文明が動き始めると。


破壊より、

維持の方が重要になる。


夜。


共和国南部。


静かな農村灯り。


学校灯り。


治療院灯り。


全部生きている。


グロマールが最後に畑を見渡した。


風が吹く。


小麦が揺れる。


遠く。


子供達の笑い声。


戦争ではなく。


生活が回っていた。


それが。


グロマールが見たかった景色だった。







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