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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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295話:新世代

共和国中央孤児教育区ミレス。


朝。


始業鐘が鳴る。


同時に。


大量の子供達が学校へ走っていく。


笑いながら。


教材を抱えながら。


昔。


孤児とは、

路地裏で死ぬ存在だった。


盗む。


殴られる。


病で倒れる。


冬を越せない。


それが当たり前。


今。


共和国では違う。


学校がある。


食事がある。


治療院がある。


教師がいる。


だから。


子供が子供でいられる。


中央孤児院併設学校。


巨大施設。


共和国では珍しくない。


孤児保護。


教育。


治療。


全部繋がっている。


共和国は、

孤児を憐れみだけで助けていない。


育てている。


だから強い。


教室。


大量の子供達。


文字を書いている。


計算をしている。


魔力循環を学んでいる。


昔なら。


貴族だけの教育。


共和国は、

全部民へ渡した。


若い教師が黒板へ数字を書く。


「今日の授業は物流計算です」


子供達が真剣に見る。


「小麦百袋」


「北部輸送二十日」


「必要荷車数は?」


即座に手が上がる。


「十五台!」


教師が笑った。


「正解です」


共和国教育。


単なる読み書きじゃない。


生活教育。


実務教育。


だから職業へ直結する。


最前列。


少年が真剣にノートを書いている。


元孤児。


両親死亡。


旧王国時代なら、

冬を越せなかった。


今。


普通に学んでいる。


隣の少女が小声で言った。


「また一番だったね」


少年が照れ臭そうに笑う。


「教師になりたいから」


共和国では珍しくない。


教師人気が異常に高い。


尊敬。


待遇。


地位。


全部高い。


なぜなら。


教師が国を支えているから。


校舎外。


巨大運動場。


子供達が魔力循環訓練をしている。


呼吸。


循環。


吸収。


共和国では、

子供の時点で学ぶ。


世界には魔力が満ちている。


だから循環する。


だから回復する。


共和国は、

その理論を民へ渡した。


昔。


宿屋で寝れば回復する。


そんな曖昧な扱いだった。


共和国は違う。


理論化した。


教育化した。


だから民が強くなる。


若い教導教師が声を上げる。


「無理に回すな!」


「流れを感じろ!」


子供達が真剣に頷く。


共和国では、

魔法は才能じゃない。


技術。


そこが大きい。


中央食堂。


昼。


大量の子供達が食事をしている。


パン。


スープ。


野菜。


肉。


果物。


共和国では、

孤児でも普通に食べる。


昔ならあり得ない。


小さな少年が呟いた。


「毎日肉ある……」


隣の少女が笑う。


「共和国だもん」


普通の会話。


だが。


昔の世界では奇跡だった。


飢えない。


それだけで文明は変わる。


食堂奥。


ミネルバが子供達を見守っていた。


共和国孤児保護責任者。


治癒師。


教師。


母性。


全部担っている。


子供達が自然に集まってくる。


「ミネルバ先生!」


「見て!」


教材を見せる子供。


計算表。


魔力循環図。


ミネルバが優しく微笑む。


「上手ですね」


子供達が嬉しそうに笑う。


共和国では、

優しさが機能していた。


そこが大きい。


午後。


職業教育実習。


共和国教育は早い。


十代前半から、

適性教育が始まる。


鍛冶。


建築。


農業。


物流。


治癒。


工業。


全部選べる。


巨大実習棟。


若い少年少女達が働いている。


ただの作業じゃない。


教育。


共和国工業教師が説明する。


「道具を使う理由を理解しろ」


「真似だけするな」


子供達が真剣に聞く。


共和国では、

考える教育をする。


だから覚醒率が高い。


その時。


一人の少女の周囲に、

淡い魔力が流れ始めた。


空気が静かに変わる。


工業教師が目を細める。


「……加工適性覚醒か」


少女自身が驚いている。


工具の流れ。


力加減。


素材の癖。


全部分かる。


共和国では珍しくない。


教育が覚醒を引き起こしている。


昔。


覚醒者は血統だった。


貴族だった。


選ばれた者だった。


違った。


教育が無かっただけ。


共和国が証明している。


夕方。


中央街道。


学校帰りの子供達が歩いている。


笑いながら。


本を抱えながら。


昔の孤児達には無かった光景。


共和国巡回教師が呟く。


「本当に変わりましたね」


隣の老教師が頷く。


「ああ」


「“貧困生まれ”が減った」


静かな声。


だが。


重い言葉だった。


共和国以前。


生まれで人生が決まった。


貧困。


病。


飢餓。


孤児。


共和国は、

そこを壊し始めている。


完全じゃない。


だが。


確実に変わっている。


夜。


共和国中央教育院。


大量の資料。


人口推移。


識字率。


職業覚醒率。


全部上昇。


中央席。


ピーターが資料を見る。


かつて泣き虫だった少年。


今や共和国教育の中心。


側近教師が報告する。


「孤児世代、

識字率九割突破」


「初等計算普及率、

急上昇」


「職業スキル保有率、

継続増加」


ピーターが静かに目を閉じる。


昔。


自分も弱かった。


泣いていた。


何も出来なかった。


グロマールが救った。


だから今。


自分が次を救っている。


循環。


共和国文明の本質。


窓の外。


無数の学校灯り。


子供達の未来。


ピーターが静かに呟いた。


「ようやく」


「子供が、

未来として扱われる時代になったんですね」


誰も否定しなかった。


共和国新世代。


それは。


“生まれた時点で終わっている子供”が、

消え始めた時代だった。







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