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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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294話:戦争消失

旧ベルグラード国境地帯。


かつて。


世界でも有数の激戦地だった。


焼かれる村。


奪われる食料。


徴兵。


飢餓。


盗賊化した敗残兵。


国境とは、

死が最も近い場所だった。


今。


その景色は消えていた。


朝。


巨大街道を荷車が進む。


積まれているのは武器ではない。


小麦。


乾燥野菜。


薬草。


紙。


衣類。


農具。


全部生活物資。


共和国物流網。


既に大陸規模。


街道沿い。


共和国共同市場。


帝国商人。


北方商人。


共和国商人。


普通に会話している。


昔なら考えられない。


市場中央。


元傭兵の男が呟いた。


「本当に戦争減ったな……」


隣の老人が苦笑する。


「飯があるからな」


静かな声。


だが。


それが本質だった。


戦争消失。


理由は単純。


食料共有。


物流安定。


教育普及。


共和国は、

そこを変えた。


昔。


国境戦争の原因は大体同じだった。


飢え。


物流断絶。


無知。


だから奪う。


だから殺す。


共和国は、

全部壊した。


中央物流街道。


巨大倉庫群。


共和国物流管理局。


大量の物流官僚達が動いている。


在庫。


収穫量。


地方需要。


全部管理。


共和国では、

餓死が国家失敗を意味する。


だから物流が異常に強い。


物流局中央室。


巨大地図。


街道。


農地。


倉庫。


全部繋がっている。


物流局長フェルド・レイヴンが資料を見る。


共和国物流最大責任者。


元帝国官僚。


今や、

大陸物流そのものを動かす男。


側近官僚が報告する。


「南部小麦、

北方向け出荷完了」


「北方保存食、

共和国側受領済み」


「帝国果樹輸送、

問題無し」


フェルドが静かに頷く。


共和国は、

全部を独占していない。


共有している。


だから戦争が減る。


物流を止めれば、

全員損をするから。


そこが大きい。


市場広場。


共和国教師達が子供へ授業をしていた。


国境共同教育区。


共和国が始めた制度。


帝国の子供。


北方の子供。


共和国の子供。


同じ教室。


同じ教材。


昔ならあり得ない。


老教師が黒板へ文字を書く。


「今日の授業は物流です」


子供達が真剣に聞いている。


共和国教育。


それは思想教育じゃない。


生活教育。


だから広がる。


教師が問いかける。


「冬に食べ物が届かなかったらどうなる?」


小さな少女が答えた。


「人が死にます」


教師が頷く。


「そうです」


「だから物流は大事なんです」


隣の少年が手を挙げる。


「戦争すると止まる」


教師が笑った。


「その通りです」


共和国は、

子供の時点で理解させる。


戦争は格好いい物じゃない。


生活を壊す物。


だから世界観そのものが変わる。


市場端。


帝国商人と北方商人が話している。


「今年の北方果実、

甘いな」


「教師来てから品種改良進んだからな」


「共和国農業教師か?」


「そう」


昔。


国家機密だった技術。


共和国は共有した。


だから北方も変わった。


寒冷地農業。


保存技術。


果樹栽培。


全部改善。


北方では、

もう冬の餓死が激減している。


だから奪わなくなった。


共和国は、

武力で戦争を止めていない。


生活で止めた。


旧国境監視塔。


今は共和国共同治療院になっていた。


かつて兵士達が睨み合った場所。


今は治癒師達が働いている。


共和国治癒師。


帝国治癒師。


北方治癒師。


普通に協力していた。


若い北方治癒師が言う。


「昔ここ、

処刑場だったらしいですね」


共和国治癒師が苦笑する。


「今じゃ子供の予防治療だ」


笑いが起きる。


空気が違う。


戦場の空気じゃない。


生活の空気。


共和国が変えたのはそこだった。


夕方。


国境市場。


人が溢れている。


子供達が走る。


商人が笑う。


農民が作物を並べる。


共和国物流。


共和国教育。


共和国農業改革。


全部繋がっている。


だから戦争が消える。


その時。


老人達が酒を飲みながら話していた。


元兵士。


元傭兵。


昔を知る人間。


一人が呟く。


「昔はな」


「国境ってのは、

死ぬ場所だった」


静かな声。


周囲も黙る。


別の老人が苦笑した。


「今じゃ市場だ」


全員が笑う。


共和国は、

国境そのものを変えてしまった。


そこへ。


共和国巡回教師達が通る。


大量の教材。


物流台帳。


農業教本。


全部積まれている。


若い教師が言った。


「来月から北方巡回授業増えます」


隣の教師が笑う。


「教師足りないな」


共和国最大問題。


教師不足。


だが。


教師が増えるほど、

戦争は減る。


理解する人間が増えるから。


教育国家。


その本質が、

世界へ広がっていた。


夜。


旧ベルグラード国境。


かつて。


夜襲警戒で眠れなかった場所。


今。


灯りが並んでいる。


市場。


学校。


治療院。


宿屋。


人の営み。


普通の生活。


それが存在していた。


遠くから物流馬車の音が聞こえる。


武器ではない。


食料。


薬。


教材。


共和国は、

世界を征服していない。


循環を広げただけ。


だが。


それだけで。


戦争は、

消え始めていた。







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