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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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293話:元王子と元王女

共和国中央教育都市ルミナス。


朝。


始業鐘が鳴る。


同時に。


大量の学生達が校舎へ流れ込んでいく。


農民。


商人。


職人。


元孤児。


元難民。


そして。


かつて王族だった者達も。


共和国は、

身分で学びを止めなかった。


中央教導学院。


共和国最高峰教師育成機関。


巨大講堂。


数百人の学生達が席に着いている。


前列。


静かに教材を開く二人。


旧ベルグラード王国第一王子アルベルト。


旧ベルグラード王女エレノア。


かつて。


王族だった。


今は違う。


共和国教師候補生。


それが今の立場だった。


周囲の学生達も、

もう特別扱いしない。


共和国では、

身分より能力。


教育国家。


だから。


学ぶ者は平等だった。


講堂前方。


教師が静かに話し始める。


「本日の授業は、

教導理論です」


教導。


共和国最大の核心。


ただ知識を教えるだけではない。


理解。


育成。


覚醒。


全部を支える技術。


教師達は真剣に教材を見る。


アルベルトも同じだった。


かつての王子。


今は必死に文字を書き込んでいる。


隣のエレノアも静かにノートを取っていた。


昔の王国時代。


教師とは、

王族へ礼儀を教える存在だった。


今は違う。


共和国教師は、

文明そのものを支えている。


授業が続く。


「共和国では、

教師は知識だけを渡しません」


老教師が静かに言う。


「人が生きる環境そのものを育てます」


講堂が静まる。


誰もが真剣だった。


共和国では、

教師が国家そのものだから。


授業終了。


休憩時間。


学生達が廊下へ出る。


アルベルトが小さく息を吐いた。


「難しいな……」


エレノアが苦笑する。


「王宮教育とは全然違いますね」


昔の二人なら、

考えられない会話だった。


共和国は、

王族すら変えていた。


周囲の学生達も自然に話しかける。


若い農村出身教師候補。


「アルベルトさん、

魔力循環どうでした?」


アルベルトが苦笑する。


「まだ安定しない」


「昔は魔力なんて、

強い魔法を撃つ為の物だと思っていた」


学生達が笑う。


共和国では、

魔力観そのものが違う。


空気。


水。


土。


世界全体に魔力が満ちている。


だから循環する。


吸収する。


回復する。


共和国は、

その技術を民へ渡した。


だから変わった。


病が減った。


疲労が減った。


生産力が増えた。


世界が変わった。


エレノアが窓の外を見る。


巨大な学校群。


無数の子供達。


教師達。


共和国では、

学校が日常だった。


王国時代には無かった景色。


エレノアが静かに言う。


「昔の私達、

民を知らなかったですね」


アルベルトも頷く。


否定できなかった。


王宮。


貴族社会。


形式。


権威。


そこには民の生活が無かった。


共和国へ来て初めて知った。


民は。


生きるだけで必死だった。


食べる。


病を治す。


冬を越す。


共和国はそこを変えた。


だから王国は終わった。


武力ではない。


生活で負けた。


午後授業。


実技教室。


教師候補生達が並ぶ。


今日の授業は、

初等教育実践。


子供への教え方。


共和国教師は、

専門性が高い。


単なる学者ではない。


教育技術職。


そこが重要。


小さな子供達が教室へ入ってくる。


初等学校組。


文字を書いている。


アルベルトが教える側へ回る。


最初は緊張していた。


だが。


子供達は普通に話しかけてくる。


「せんせー」


「ここわかんない」


アルベルトが一瞬止まる。


先生。


昔の自分では考えられない呼ばれ方。


王子ではない。


教師候補。


だが。


不思議と嫌じゃなかった。


隣では、

エレノアが少女へ文字を教えている。


優しく。


丁寧に。


少女が嬉しそうに笑った。


「できた!」


エレノアが微笑む。


その瞬間。


淡い光。


教室の空気が変わる。


周囲の教師候補達が息を呑む。


エレノアの周囲へ、

柔らかな魔力が流れ始めた。


教育補助型魔力循環。


教導系適性反応。


老教師が目を細める。


「……覚醒前兆か」


エレノア自身が驚いていた。


子供達の理解が、

手に取るように分かる。


感情。


躓き。


理解速度。


全部見える。


共和国では珍しくない。


教師達は、

教育によって覚醒していく。


教導スキル。


共和国文明の根幹。


授業終了後。


夕暮れ。


校舎屋上。


アルベルトとエレノアが街を見下ろしていた。


巨大都市。


学校。


工場。


農地。


物流。


全部動いている。


だが。


誰か一人の支配ではない。


循環。


それが共和国だった。


アルベルトが静かに言う。


「昔は、

王になる事しか考えていなかった」


エレノアが頷く。


「私もです」


静かな風。


遠くで学校終了の鐘が鳴る。


子供達が帰っていく。


笑いながら。


未来を持ちながら。


アルベルトが小さく笑った。


「これからは」


「共和国で教師として生きていきたい」


エレノアも頷く。


「ええ」


「まずは、

スキルの覚醒を目指しましょう」


夕日が街を染める。


かつて王族だった二人は今。


人を支配する為ではなく。


人を育てる為に学んでいた。







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