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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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291話:工業化

共和国中央工業都市アルトレス。


朝。


巨大な始業鐘が鳴る。


同時に。


都市全体が動き始めた。


石畳を埋める人の流れ。


紡織師。


鍛冶師。


建築師。


製紙師。


加工師。


運搬師。


そして。


教師達。


共和国で最も重要な職。


それが教師だった。


中央大通り。


白い外套を纏った教師達が歩いていく。


初等教育教師。


農業教師。


工業教師。


魔力循環教師。


治癒教師。


建築教師。


共和国には、

既に二百万人を超える教師が存在していた。


人口二千万国家。


その根幹。


共和国は理解している。


国家を支えるのは、

兵ではない。


教師だ。


だから共和国では、

教師の地位が異常に高い。


給金。


待遇。


住居。


全部優先。


教師不足は、

国家崩壊に直結するから。


共和国中央紡織区画。


巨大な工場群。


無数の織機が並んでいる。


木製改良式。


魔力循環補助型。


教育済み紡織師達が、

高速で布を織っていた。


制服。


作業服。


毛布。


孤児院衣類。


共和国人口二千万。


衣類需要だけでも桁違い。


だが。


生産は止まらない。


そこに教師がいるから。


若い紡織教師が新人達へ指示を出す。


「糸張力を見て」


「魔力循環を止めない」


「無理に力を込めない」


新人達が頷く。


共和国工業化。


その本質。


それは。


教育付き工業化。


だから崩れない。


共和国紡織院主任リディアが資料を見る。


「地方学校制服、

今月分完了」


「作業服追加生産へ移行」


「孤児院備蓄安定」


助手が苦笑する。


「また人口増えてますね」


リディアが頷く。


「死ななくなったからね」


共和国では、

乳幼児死亡率が激減していた。


餓死減少。


病死減少。


教育普及。


衛生改善。


だから人口が増える。


世界全体が変わっていた。


鍛冶区画。


巨大火炉。


火属性魔法。


風属性送風。


水属性冷却。


土属性固定。


全部連動。


共和国鍛冶は、

既に完全分業化されていた。


農具。


建材。


交換部品。


生活用品。


共和国工業の中心は、

武器じゃない。


生活。


そこが強い。


共和国鍛冶院長バルドが腕を組む。


巨大な鉄材を持ち上げながら笑う。


「昔は鍬一本で半日だ」


若い鍛冶教師が答えた。


「今は新人でも一日五十本超えます」


周囲が笑う。


そこへ、

十代の新人達が入ってくる。


元農民。


元孤児。


元難民。


共和国では珍しくない。


教師がいるから、

誰でも育つ。


鍛冶教師が新人へ説明する。


「力任せに叩くな」


「鉄の流れを見ろ」


「魔力循環で疲労を逃がせ」


新人達が頷く。


共和国では、

技術を秘匿しない。


共有する。


だから成長速度が異常。


建築区画。


巨大石材加工場。


土属性建築師達が石を加工している。


風属性が粉塵除去。


水属性が冷却。


共和国建築局主任ガレスが図面を見る。


「地方住宅増設継続」


「学校増築予定前倒し」


「上下水道接続率さらに上昇」


共和国では、

人口増加が恐怖にならない。


循環があるから。


教育。


建築。


農業。


工業。


全部繋がっている。


製紙区画。


ここも巨大だった。


紙。


共和国文明の血液。


教科書。


農業資料。


物流台帳。


工業教本。


魔力循環教材。


全部紙。


若い製紙師が汗を拭う。


「教材量、

また増えました」


製紙院責任者が笑う。


「教師二百万人国家だからな」


共和国最大産業。


実は教育。


だから紙が消える。


教師が増える。


教材が増える。


教育が広がる。


さらに覚醒者が増える。


完全循環。


中央工業院。


共和国工業中枢。


巨大会議室。


各工業代表が集まっていた。


紡織院。


鍛冶院。


建築院。


製紙院。


農具院。


さらに。


教師院代表までいる。


共和国は、

工場だけでは回らない。


教師が居なければ全部止まる。


中央席。


共和国工業院長ダグラス。


元鉱山労働者。


今や共和国工業最大責任者。


「報告を」


紡織代表。


「新人教育完了率上昇」


「地方教師巡回制度安定」


鍛冶代表。


「交換部品量産成功」


「新人定着率改善」


建築代表。


「地方建築教師増員要請」


製紙代表。


「教材需要さらに増加」


会議が高速で進む。


共和国官僚制度。


既に完成域。


そこへ若い官僚が入室する。


新資料。


「職業覚醒率、

さらに上昇しました」


空気が静かに動く。


共和国最大の変化。


それはここだった。


農民。


職人。


主婦。


商人。


兵士。


全員が覚醒し始めている。


昔。


覚醒者は特別だった。


才能。


血統。


貴族。


そう思われていた。


違った。


教育が無かっただけ。


共和国が証明した。


若い官僚が続ける。


「教導スキル保有教師、

急増」


「地方教育速度、

さらに加速」


「職業覚醒年齢、

低下傾向」


会議室が静かになる。


恐ろしい話だった。


共和国では、

教師自身が覚醒し始めている。


教導スキル。


教育特化。


育成補正。


理解速度向上。


覚醒誘発。


国家規模で発生していた。


工業院長ダグラスが低く笑う。


「そりゃ国が変わる訳だ」


誰も否定しない。


共和国は、

英雄だけの国じゃない。


教師が国を変えている。


会議室の窓。


外には巨大工業都市。


煙。


蒸気。


物流。


人。


全部動いている。


だが。


空気は暗くない。


工場労働者達が笑っている。


共和国工業は、

搾取を前提にしていない。


学校がある。


治療院がある。


休息制度がある。


教師がいる。


だから続く。


工業院長ダグラスが静かに言った。


「工業化ってのはな」


周囲が耳を傾ける。


「鉄を増やす事じゃねぇ」


静かな声。


「人を育て続ける事だ」


誰も否定しない。


共和国文明。


その根幹。


それは工場ではない。


教師だった。


終業鐘が鳴る。


工場から人々が出てくる。


疲れてはいる。


だが。


絶望した顔はいない。


家族がいる。


食事がある。


学校がある。


未来がある。


共和国工業化。


それは。


人間が普通に生きられる文明を、

教師達が支えている時代だった。







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