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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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279話:ジミー物流網

共和国中央物流区。


旧ベルグラード王国中央街道。


かつて。


死の道と呼ばれていた。


盗賊。


略奪。


飢餓。


死体。


物資停滞。


王国末期。


この街道では。


食料を運ぶより。


奪う方が早かった。


だから。


人が死んだ。


今。


違う。


大型荷車が列を作る。


護衛隊。


物流管理員。


教師。


治癒師。


整備班。


全てが流れていた。


共和国物流。


止まらない。


中央倉庫。


巨大。


旧王国軍倉庫を改造した建物。


内部には大量の物資。


小麦。


干し肉。


薬草。


織物。


農具。


紙。


教本。


木材。


鉄材。


全て管理されている。


中央で怒鳴っている男。


ジミー。


帳簿を抱えていた。


「北部便止めんな!」


「東側倉庫余ってる!」


「薬草先回せ!」


周囲の物流員たちが走る。


共和国は戦争をしていない。


だが。


物流戦争状態だった。


人口増加。


再建。


教育。


農地拡張。


全てが物資を食う。


物流が止まれば。


共和国も止まる。


だから。


最重要。


ジミーは机を叩く。


「在庫確認!」


部下。


「中央小麦備蓄、予定比百二十%!」


「南部織物供給安定!」


「北部薬品輸送完了!」


ジミーが頷く。


「よし」


「まだ回る」


昔。


ジミーは小悪党だった。


調子が良く。


ズルく。


強い側につく。


生き残るため。


それしかなかった。


だが。


共和国は違った。


ズルさが。


才能になった。


誰が嘘をつくか。


どこで物資が止まるか。


どこで横流しが起きるか。


全部分かる。


だから。


共和国最強の物流責任者になった。


ダグラス商会本部。


巨大地図が壁一面に広がっていた。


共和国物流網。


街道。


倉庫。


中継地。


転移拠点。


農地。


治療院。


学校。


全て線で結ばれている。


もはや国家規模。


ダグラス本人が腕を組んでいた。


老獪な商人。


昔から商売をしていた。


だが。


今は震えている。


「……本当に作りやがった」


全国物流網。


かつて誰も不可能と言った。


王国ですらできなかった。


理由。


腐敗。


横流し。


関所。


徴税。


盗賊。


貴族利権。


全部が物流を殺していた。


共和国は違う。


教育。


共有。


管理。


識字率。


情報。


それで回している。


ジミーが笑う。


「そりゃ回るだろ」


「止める馬鹿減ったからな」


単純だった。


だが本質だった。


共和国では。


文字が読める。


帳簿が読める。


在庫が分かる。


だから誤魔化せない。


物流は。


教育の上に成り立っていた。


その瞬間。


空気が震えた。


ジミーの身体に光。


文字が浮かぶ。


【商売スキル 進化】


【流通スキル 進化】


【物流管理Lv1】


【在庫最適化Lv1】


【物資循環Lv1】


【転移物流Lv1】


周囲がざわつく。


ダグラスですら驚いた。


「おいおい……」


ジミーは頭を掻く。


「また変なの増えた」


しかし。


次の瞬間。


巨大地図の一部が光った。


転移拠点。


共和国北部。


中央。


西部。


繋がる。


転移教師たちが動き始める。


セレスが資料を見る。


「転移物流起動」


「物資遅延率低下」


「停滞消失」


共和国は。


ついに。


“距離”を殺し始めた。


中央倉庫。


大量の荷物。


転移陣が展開される。


光。


次の瞬間。


物資が消える。


北部到着。


物流員たちが歓声を上げた。


「速ぇ!」


「もう着いた!?」


「三日分が一瞬だ!」


以前なら。


馬車。


盗賊。


雪。


事故。


腐敗。


全てが物流を止めた。


今は違う。


共和国は。


距離すら教育で超え始めていた。


セレスは静かに分析する。


「物流革命」


「国家維持効率上昇」


「飢餓率さらに低下」


横で教師が呟く。


「……戦争できませんね」


その通りだった。


共和国を攻撃する。


簡単。


領土を焼く。


街を落とす。


可能。


しかし。


物流を止めた瞬間。


周辺国家が飢える。


既に共和国物流は。


周辺国家にも浸透していた。


食料。


薬品。


織物。


農具。


全部。


共和国経由。


帝国会議で。


レオハルトが言った通りだった。


「落とした瞬間、帝国が飢えます」


あれは誇張じゃない。


事実。


共和国は。


国家ではなく。


文明インフラになり始めていた。


その頃。


北部ベルセリア。


女王フィリアも報告を受けていた。


「共和国輸送速度、従来比八倍」


「冬季物資停滞なし」


「飢餓発生ゼロ」


沈黙。


北方貴族が呟く。


「あり得ません」


フィリアも理解できない。


略奪不要。


冬飢餓なし。


兵站崩壊なし。


そんな国家。


存在しなかった。


彼女は小さく呟く。


「……文明が違う」


恐怖だった。


共和国は。


戦争に勝つ国家じゃない。


戦争そのものを古くする国家。


だから。


怖い。


中央市場。


夕方。


大量の商品が並ぶ。


パン。


薬。


服。


農具。


共和国以前。


この量は王都ですら不可能だった。


今。


地方都市で普通。


子供たちが笑っている。


商人が笑う。


農民が笑う。


それは。


物流が止まっていないから。


共和国の本当の強さ。


それは。


“当たり前”を止めないことだった。


夜。


ジミーは帳簿を見ていた。


膨大な数字。


普通の人間なら発狂する。


しかし。


彼には見える。


不足。


余剰。


停滞。


最適。


全部。


頭の中で繋がる。


だから。


共和国物流は止まらない。


ダグラスが横で苦笑した。


「お前、本当に商人向きだったんだな」


ジミーは鼻を鳴らす。


「生き残るためだよ」


「昔は盗まれねぇ方法考えてた」


「今は止めねぇ方法考えてるだけだ」


本質は同じ。


生き残る方法。


共和国は。


それを国家規模で始めていた。


窓の外。


夜でも物流馬車が動いている。


転移光が走る。


倉庫が稼働する。


教師が動く。


治癒師が移動する。


全てが繋がる。


循環。


共和国は。


もう誰にも止められない段階へ入っていた。







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