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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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278話:マイク隊

共和国中央区。


旧ベルグラード王国南部。


かつて難民街だった場所。


今。


そこには石畳が敷かれていた。


水路が流れる。


露店が並ぶ。


子供たちが走る。


笑い声がある。


生きている街だった。


昼。


市場は賑わっていた。


農民。


商人。


教師。


治癒師。


様々な人間が行き交う。


その中を。


統一された紺色の外套を着た集団が歩いていた。


共和国治安維持隊。


通称。


マイク隊。


先頭を歩く男。


マイク。


短髪。


鍛えられた身体。


鋭い目。


元ガキ大将。


元喧嘩屋。


今は違う。


共和国最大の現場指揮官。


子供たちが叫ぶ。


「マイク隊長ー!」


「今日も見回りー?」


マイクは片手を上げる。


「走るな!」


「転ぶぞ!」


子供たちが笑う。


周囲の大人も笑っていた。


昔の王国ではあり得ない。


治安兵は恐れられる存在だった。


徴税。


暴力。


取り締まり。


権力。


だが。


共和国の治安隊は違う。


守る側。


それを民が理解していた。


広場。


新人隊員たちが整列している。


元盗賊。


元農民。


元難民。


元傭兵。


身分はバラバラ。


しかし。


全員が共和国式教育を受けている。


マイクは腕を組む。


「今日から正式配属だ」


「共和国治安維持隊」


「通称マイク隊」


新人たちが緊張する。


マイクは鼻を鳴らした。


「勘違いすんな」


「俺たちは軍じゃねぇ」


「民を脅す仕事でもねぇ」


静かになる。


マイクは新人たちを見る。


「ガキを守れ」


「女を守れ」


「老人を守れ」


「飯を守れ」


「それが仕事だ」


単純だった。


だが。


共和国ではそれが最重要だった。


王国は。


そこを間違えた。


だから滅んだ。


その瞬間。


空気が震えた。


淡い光。


マイクの身体を包む。


周囲が息を呑む。


文字が浮かぶ。


【群導師スキル 進化】


【治安維持Lv1】


【群衆安定Lv1】


【新兵育成Lv1】


【恐慌抑制Lv1】


新人たちがざわつく。


マイク自身。


一瞬驚いた。


しかし。


すぐ苦笑する。


「……面倒なもん増えたな」


セレスが後ろから現れる。


資料を持っている。


いつもの無表情。


「共和国中央治安指数、上昇」


「暴動率低下」


「犯罪率減少」


「孤児保護率上昇」


「市場安定」


マイクが頭を掻く。


「数字ばっか見てんな」


セレス。


「重要だから」


即答。


マイクは笑った。


昔。


こんな未来。


想像すらしていない。


喧嘩。


盗み。


飢え。


そんな毎日だった。


今。


自分が治安部隊長。


人生は分からない。


訓練場。


新人たちが盾を構える。


マイクは歩きながら見ていた。


「遅ぇ」


「もっと周り見ろ」


「一人で動くな」


新人が叫ぶ。


「敵を倒せばいいんですよね!?」


マイク。


「違ぇ」


一瞬で否定。


「一番大事なのは」


「恐慌を起こさねぇことだ」


静まる。


マイクは続ける。


「暴動ってのはな」


「腹減った時に起きる」


「怖ぇ時に起きる」


「家族死にそうな時に起きる」


「だから」


「まず落ち着かせろ」


それは。


戦争論ではなかった。


生活論。


共和国の根幹。


マイクは新人を見る。


「剣振るのは最後だ」


「飯運ぶ方が先」


「ガキ泣き止ませる方が先」


「避難誘導の方が先」


新人たちは黙る。


理解していく。


共和国の治安隊。


それは。


軍ではない。


文明維持部隊。


セレスはその様子を観察していた。


そして理解する。


群導師。


このスキル。


戦争用ではない。


社会安定型。


大量人口管理。


恐慌抑制。


避難誘導。


民衆安定。


文明維持。


つまり。


共和国向け。


セレスは小さく呟く。


「世界が変わってる」


以前なら。


剣士。


騎士。


英雄。


それが強者だった。


今は違う。


教師。


治癒師。


物流。


治安維持。


農政。


文明維持者。


そちら側が急激に覚醒している。


世界そのものが。


“戦争時代”から離れ始めていた。


市場。


小さな騒ぎが起きる。


男が怒鳴っていた。


「俺の荷物が消えた!」


周囲がざわつく。


昔なら乱闘。


暴動。


共和国以前なら普通だった。


だが。


マイク隊が動く。


数秒。


隊員が周囲整理。


避難導線確保。


目撃者確認。


物流記録照合。


新人隊員が叫ぶ。


「荷車番号一致!」


「積み間違いです!」


すぐ解決。


怒鳴っていた男が頭を下げる。


周囲も落ち着く。


暴力なし。


流血なし。


マイクは腕を組む。


「これだ」


新人たちを見る。


「喧嘩止める方が難しい」


「戦う方が楽なんだよ」


その言葉は重かった。


共和国がやっていること。


それは。


人間社会そのものの再構築。


だから難しい。


だから強い。


夕方。


孤児院。


ミネルバが子供たちを見ていた。


共和国では孤児が減っている。


飢餓減少。


疫病減少。


治安改善。


全部繋がっていた。


外でマイク隊が巡回している。


子供たちが安心して遊んでいる。


ミネルバは微笑む。


「平和ですね」


隣の教師が頷く。


「はい」


「昔は夜になると子供を外に出せませんでした」


共和国は。


確実に世界を変えていた。


夜。


中央会議所。


セレスが報告書を書く。


【共和国治安維持隊 正式国家組織化】


【マイク隊 中央治安維持担当】


【群導師スキル進化確認】


【社会安定能力 極めて高】


セレスは考える。


王国時代。


マイクはただの喧嘩屋だった。


中央貴族なら笑っただろう。


無教養。


粗暴。


低階級。


だが。


共和国では違う。


現場理解。


民衆理解。


恐怖理解。


人間理解。


それが重要だった。


だから。


マイクは共和国で最強クラスの人材になった。


窓の外。


街に灯りが広がる。


市場が止まらない。


物流が動く。


学校が残る。


子供が笑う。


共和国は。


剣だけで守られているわけではない。


こういう日常。


それを守る人間たちによって支えられていた。


マイクは巡回しながら苦笑する。


「喧嘩より」


「ガキ守る方が難しいな」


だが。


その顔は少し嬉しそうだった。







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