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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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204話:レオハルト

帝国東部。


レオハルト領。


人口十万。


かつては。


帝国地方領の一つに過ぎなかった。


税を納め。


人を徴収され。


中央に吸われ続ける。


そんな普通の地方領。


だが。


今は違う。


帝国中から視線を集める。


“実験都市”。


そう呼ばれていた。


朝。


巨大水路。


透明な水が流れている。


汚水ではない。


飲める水だ。


子供たちが笑いながら走る。


道は舗装。


排水路完備。


雨が降っても泥濘化しない。


宿場。


市場。


工房。


学校。


治療院。


全部が計画配置されていた。


さらに異様なのは。


人。


全員。


魔力を使っている。


農民。


商人。


職人。


教師。


子供。


全員。


何らかのスキル保持者。


帝国貴族たちは最初。


狂気だと思った。


「全員覚醒者などありえん」


「才能が枯渇する」


「選ばれた者だけが力を持つ」


だが。


現実は逆だった。


教育。


環境。


反復。


記録。


評価。


共有。


それだけで。


人は変わる。


レオハルト領主館。


レオハルトは窓から街を見る。


深く息を吐いた。


「……本当に変わったな」


隣にはピーター。


さらに帝国教師団。


行政官。


工兵。


治癒師。


鍛冶師。


全員が忙しく動いている。


レオハルトは元々優秀だった。


だから理解できた。


帝国が腐った理由。


才能不足ではない。


教育不足。


環境不足。


仕組み不足。


それだけだった。


ピーターが静かに言う。


「皆、頑張っています」


レオハルトは笑う。


「頑張る環境がある」


「それが大きい」


街では。


朝の授業が始まっていた。


教師。


教導スキル保持者。


すでに三千人超。


帝国でも。


循環領でも。


教育革命は止まらない。


教室。


農民の子供たちが座っている。


黒板。


文字。


数字。


地図。


教師が言う。


「水路が詰まると病が広がります」


「だから掃除が必要です」


子供たちが頷く。


昔なら。


そんな教育は無かった。


病は呪い。


飢えは運命。


貧困は宿命。


そう思われていた。


今は違う。


原因を学ぶ。


対策を学ぶ。


改善を学ぶ。


だから。


人が育つ。


外。


農地。


広い。


圧倒的だった。


食料自給率。


四百五十%超。


余る。


だから加工する。


保存する。


輸送する。


循環する。


ゴーレム農機が畑を耕す。


土属性農民たちが地盤調整。


水属性農民が水路管理。


風属性農民が害虫流れを読む。


全員が役割を持っている。


しかも。


全員が鑑定を使える。


完全ではない。


だが。


十分。


「土壌水分低下」


「窒素不足」


「病害発生率上昇」


見える。


だから早い。


農業が経験頼りではなくなった。


それが革命だった。


工房区画。


鍛冶師たちが鉄を叩く。


火魔法。


風送風。


水冷。


大型炉。


規格工具。


大量生産。


昔の鍛冶とは別物。


個人技ではない。


工業。


鍛冶師の一人が叫ぶ。


「次ロット搬入!」


「水冷開始!」


「温度維持!」


全員が連携している。


工業鍛冶スキル。


教導スキル。


鑑定スキル。


全部連動。


だから品質が安定する。


レオハルトが工房を見る。


「帝国中央より進んでいるな」


ピーターは苦笑した。


「皆、真面目ですから」


「学ぶ環境があると伸びます」


さらに。


行政区画。


帝国役人たちが机に座る。


記録。


会計。


統計。


物流。


全部整理されていた。


行政スキル保持者。


すでに千人超。


処理速度が異常だった。


「東部食料移送完了」


「雨季備蓄確認」


「病発生率低下」


「孤児受け入れ可能数更新」


全部数字。


全部共有。


全部見える。


だから止まらない。


そこへ。


グロマールが来た。


静か。


相変わらず目立たない。


だが。


全員が立ち上がる。


レオハルトが笑う。


「お前が始めた循環だ」


グロマールは首を振った。


「違います」


「皆が回しています」


事実だった。


グロマール一人では不可能。


ピーター。


ジミー。


マイク。


セレス。


教師団。


農民。


鍛冶師。


役人。


全員が動いている。


だから循環する。


街。


市場。


活気が凄まじい。


寒冷地綿花。


タオル。


石鹸。


保存食。


加工肉。


発酵調味料。


鉄工具。


全部流れる。


道路。


通信網。


輸送ゴーレム。


全部繋がっている。


商人が笑う。


「帝都より速い!」


「物が止まらねぇ!」


「腐らねぇ!」


それは大きかった。


物流革命。


軍事革命。


行政革命。


全部。


道路から始まっていた。


そして。


一番変わったのは。


人だった。


かつて。


無気力だった農民。


今は教師。


かつて。


読み書きできなかった孤児。


今は行政官。


かつて。


殴られて終わりだった子供。


今は魔法を学ぶ。


環境が。


人を育てている。


夕方。


広場。


子供たちが走る。


マイクが巨大ゴーレム整備をしている。


カーラが笑いながら差し入れを持ってくる。


周囲の女たちが騒ぐ。


「マイク様ー!!」


「今日も格好いいー!!」


「カーラさんずるいー!!」


カーラが赤くなる。


マイクは笑う。


「うるせぇな!」


でも。


嬉しそうだった。


その横で。


ピーターが子供たちに教える。


ミネルバが孤児を抱きしめる。


セレスが数字を確認する。


ジミーが商人と値段交渉。


全部繋がっている。


レオハルトは静かに呟いた。


「帝国版循環領……か」


グロマールが空を見る。


「まだ途中です」


「ここからです」


レオハルトは頷く。


帝国は巨大。


問題も巨大。


腐敗も消えていない。


貧困も残る。


病も残る。


だが。


変わり始めた。


そして。


一度回り始めた循環は。


簡単には止まらない。







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