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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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199話:街道都市

北部循環街道。


かつて。


「死の山道」


と呼ばれていた場所は、もう存在しなかった。


代わりにあるのは。


巨大な道だった。


幅二十メートル超。


中央には大型輸送ゴーレム専用路。


左右には荷車。


歩行者。


騎馬。


排水路。


魔物避け結界柱。


さらに。


一定距離ごとに宿場都市。


治療院。


学校。


補給倉庫。


工房。


市場。


それらが“線”として繋がっていた。


循環国家。


それはもう。


単なる領地ではない。


巨大な循環網だった。


朝。


北部循環街道第三宿場都市。


大型輸送ゴーレムが到着する。


地響き。


蒸気。


鉄音。


輸送隊が一斉に動き始める。


「食料搬入!」


「医薬品第五倉庫へ!」


「布類は北市場!」


「水路班!

 排水確認急げ!」


現場が止まらない。


命令待ちが存在しない。


教育。


通信。


規格。


全部が繋がっていた。


その中央。


大型ゴーレムの肩に座っている男がいた。


マイク。


輸送隊総指揮官。


そして。


親分スキル保持者。


「右の荷崩れてるぞ!」


「補強しろ!」


「橋の積載順変えろ!」


「荷物は軽い順じゃねぇ!

 必要順だ!」


怒鳴る。


だが。


不思議と誰も嫌がらない。


むしろ現場が安心する。


「マイク隊長来た!」


「もう大丈夫だ!」


「親分だ!」


子供たちまで集まってくる。


親分スキル。


それは。


“人が自然と集まりたくなる統率”。


皇帝スキルや女王スキルと違う。


支配ではない。


現場型。


仲間型。


背中型。


マイクは命令しない。


先に動く。


先に持つ。


先に殴る。


先に飯を配る。


だから人がついてくる。


「隊長!

 北側荷車脱輪!」


「行くぞ!」


マイクが飛び降りる。


地面が揺れた。


そのまま片手で荷車を持ち上げる。


周囲の女たちが悲鳴を上げた。


「きゃああああ!!」


「マイク様ー!!」


「筋肉ううう!!」


「今日も格好いいー!!」


「結婚してー!!」


マイクが顔をしかめる。


「うるせぇ!」


「怒鳴ったぁぁ!!」


「素敵ぃぃ!!」


「なんでだよ!?」


現場が爆笑した。


完全に人気者だった。


理由は単純。


強い。


優しい。


働く。


偉ぶらない。


そして顔もいい。


さらに親分スキル。


モテないわけがない。


そこへ。


「道の真ん中で騒がない!」


女性の声。


周囲が静まる。


現れたのはカーラだった。


赤髪。


長身。


健康的な身体。


腕まくり。


布エプロン。


手には巨大鍋。


マイクが固まる。


周囲の女たちが察した。


「……あ」


「終わった」


「隊長落ちたわ」


「顔違う」


完全に違った。


さっきまで豪快だった男が。


急にぎこちない。


カーラが呆れる。


「また無茶したの?」


「し、してねぇよ」


「荷車持ち上げてたじゃない」


「まぁ……

 困ってたからな」


カーラがため息をつく。


「腰壊すよ」


そう言って。


タオルを渡した。


周囲の女たち絶叫。


「きゃあああああ!!」


「世話焼きぃぃ!!」


「距離近いぃぃ!!」


「無理無理無理!!」


マイクが赤くなる。


カーラも少し赤い。


ピーターが遠くから頭を抱えていた。


(もう完全に夫婦空間なんだけど……)


しかも。


カーラ側もかなり危ない。


マイクを見る目が柔らかすぎる。


「飯、食べる?」


「ああ」


「ちゃんと座って食べるんだよ」


「……おう」


「子供じゃないんだから」


周囲の女たち。


崩壊。


「ずるいぃぃ!!」


「カーラ先生強すぎる!!」


「勝てない!!」


「なんであんな自然なの!?」


ミーナが静かに笑っていた。


「相性がいいんでしょうね」


その横で。


セレスが面白そうに見ていた。


「マイクって分かりやすいわね」


ミレナが呆れる。


「というかカーラさんも早いわ」


「現場系同士だからじゃない?」


「……妙に納得するの悔しい」


グランゼル。


今。


北部最大の循環拠点は、人で溢れていた。


道路。


それが変えた。


道が出来る。


物流が来る。


市場が出来る。


人が集まる。


学校が出来る。


治療院が出来る。


宿場が出来る。


さらに人が増える。


循環。


それが線になる。


そして線が都市を生む。


第三宿場都市。


人口二万突破。


第四宿場都市。


建設中。


第五宿場都市。


学校先行設置済み。


さらに。


街道沿いには農地が増えていた。


理由は簡単。


輸送できるから。


腐らない。


止まらない。


売れる。


だから作る。


しかも。


ゴーレム輸送は夜も動く。


雨でも動く。


山でも動く。


旧国家の常識では考えられない。


「……化け物だな」


旧ガルディア王国。


視察貴族が呟く。


目の前を巨大輸送隊が通過していた。


鉄。


布。


薬。


食料。


木材。


石材。


全部流れている。


しかも高速。


「なぜ止まらない……」


答えは簡単。


現場が強い。


道路が強い。


通信が強い。


教育が強い。


そして。


人が育っている。


「報告!」


通信兵が駆け込む。


「第六宿場都市完成!」


「北側水路接続完了!」


「学校教師到着!」


「治療院稼働開始!」


早い。


何もかも。


旧国家では。


都市建設に数十年かかる。


循環国家では。


数ヶ月。


なぜか。


規格化されているから。


建材。


道路幅。


排水。


橋。


全部統一。


だから早い。


さらに。


教導スキル保持教師。


工兵団。


輸送隊。


全部繋がっている。


グロマールは地図を見る。


線が増えていた。


都市が増えていた。


循環網。


それはもう。


国家を超え始めていた。


「……止まらんな」


グロマールが呟く。


隣でピーターが笑った。


「はい」


「みんな勝手に育ち始めました」


それが一番恐ろしかった。


もう。


グロマール一人で回していない。


マイクが動く。


カーラが支える。


ミーナが布を回す。


ピーターが教育する。


マリーが道路を作る。


ジミーが物流を最適化する。


子供たちが学ぶ。


教師が増える。


都市が増える。


循環する。


その頃。


旧国家会議では。


「何故止まらん!?」


「山を封鎖したはずだ!」


「橋を破壊しただろう!」


「なぜ翌日に復旧している!?」


誰も答えられない。


理解できない。


彼らはまだ。


“都市”で国家を見ていた。


循環国家は違う。


“線”で国家を作っていた。


だから強い。


一箇所壊れても止まらない。


別ルート。


別都市。


別輸送。


全部繋がっている。


街道。


それはただの道ではない。


文明そのものだった。


夕暮れ。


マイクはカーラと並んで街道を歩いていた。


遠くでは大型ゴーレムが動く。


通信塔が光る。


市場が笑う。


子供たちが走る。


カーラが小さく笑った。


「……すごい世界になったね」


マイクが頷く。


「ああ」


「でもよ」


「?」


「悪くねぇだろ」


カーラが少しだけ照れた。


「……うん」


その後ろ。


大量の女たち。


「ぎゃあああああ!!」


「距離近いぃぃ!!」


「終わったぁぁ!!」


「親分取られたぁぁ!!」


宿場都市に悲鳴が響いた。







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