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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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189話:ゴーレム輸送

朝。


循環国家中央工業区。


巨大な地鳴りが響いていた。


ゴゴゴゴゴ……


地面が揺れる。


工房の巨大扉がゆっくり開く。


そして。


現れた。


全高八メートルを超える大型輸送ゴーレム。


黒鉄。


白銀魔導線。


土属性強化骨格。


風属性制御脚部。


魔力循環炉。


巨大荷台。


圧倒的質量。


周囲の作業員達が息を呑む。


「……でけぇ」


「馬車何台分だよ……」


「いや、街が動いてるみてぇだ」


ジミーが目を輝かせる。


「終わった」


「物流が終わった」


セレスが呆れ顔を向ける。


「始まった、でしょ」


「違ぇよ」


ジミーは真顔だった。


「旧世界の物流が終わったんだ」


その言葉に。


誰も反論できなかった。


グロマールは静かに巨大ゴーレムを見上げる。


「積載量は?」


技師長が即答する。


「大型荷車四十台分」


「最大積載時でも速度維持可能」


「悪路対応済み」


「氷保存庫搭載可能」


「通信同期完了」


「自己診断機能あり」


マイクが目を剥く。


「意味分かんねぇ……」


普通の国家では。


輸送は人力だった。


馬。


荷車。


奴隷。


人夫。


時間。


疲労。


病。


盗賊。


雨。


全部に左右される。


つまり。


物流は弱かった。


だが。


ゴーレムは違う。


疲れない。


病まない。


逃げない。


休まない。


命令通り動く。


しかも。


魔導通信網と接続されている。


つまり。


国家全体の物流が。


“同期”される。


セレスが通信盤を見る。


「東部農業区から穀物輸送開始」


「南部工業区へ鉄材搬送」


「西部病院区へ薬草配送」


「北部建築区へ石材輸送」


巨大盤面に光が走る。


全部が繋がっていた。


物流。


医療。


農業。


工業。


全部。


グロマールは静かに言った。


「国家とは循環だ」


「止まれば死ぬ」


「だから流す」


それだけだった。


特別な感情はない。


ただ合理。


ただ現実。


だから強い。


輸送開始。


大型ゴーレムが動き出す。


ドォン……


重い足音。


地面が震える。


しかし。


速度は異常だった。


滑らか。


正確。


無駄がない。


風属性補助。


土属性脚部安定。


魔力循環制御。


全てが計算されている。


街道脇。


民衆が呆然と見ていた。


「……馬がいらねぇ」


老人が呟く。


隣の若者が答える。


「いや」


「もう別の時代だ」


輸送速度。


旧国家の三倍。


積載量。


十倍以上。


しかも。


夜間も動く。


それが何を意味するか。


食料価格が変わる。


物流コストが変わる。


都市構造が変わる。


国家規模が変わる。


つまり。


文明そのものが変わる。


東部農業区。


大量収穫された麦。


以前なら。


腐っていた。


運べなかったから。


今は違う。


巨大ゴーレムが全部運ぶ。


しかも冷却機能付き。


氷属性保存庫搭載。


腐敗率激減。


食料充足率。


三〇〇%超。


農民達が笑う。


「余る……」


「食い切れねぇ……」


「昔は飢えてたのによ……」


その言葉に。


老農夫が静かに空を見る。


「教育だ」


「全部」


「教育で変わった」


昔。


魔法は貴族だけだった。


今。


農民が土魔法で畑を耕す。


水魔法で灌漑する。


風魔法で害虫を飛ばす。


光魔法で病を減らす。


だから収穫量が違う。


さらに。


物流が繋がる。


つまり。


飢饉が消える。


南部旧国家群。


商会会議。


商人達が青ざめていた。


「価格競争にならない」


「輸送費が違いすぎる!」


「なんであの国だけあんな速度で動ける!」


答えは単純だった。


技術。


教育。


そして。


人材。


循環国家では。


物流担当が教育されている。


倉庫管理。


積載計算。


輸送順序。


腐敗管理。


道路保守。


全部が専門化されていた。


旧国家では。


荷運びは底辺労働。


教育などない。


つまり。


最初から勝負になっていない。


ジミーが倉庫で笑う。


「最高だ」


「在庫が死なねぇ」


「回転速度が違う」


彼は理解していた。


物流とは。


国家の血流だ。


止まれば腐る。


流れれば生きる。


だから。


循環国家は強い。


夜。


巨大輸送基地。


無数のゴーレムが並ぶ。


大型。


中型。


小型。


全部役割が違う。


医療特化。


農業特化。


建築特化。


鉱山特化。


それぞれ最適化されていた。


ピーターが呆然と見る。


「……すごい」


「まるで国家そのものが生きてるみたい」


グロマールは静かに答える。


「生きている」


「人だけが国家じゃない」


「道路」


「倉庫」


「通信」


「教育」


「物流」


「全部が国家だ」


その言葉に。


ピーターが静かに頷く。


理解していた。


だから循環国家は崩れない。


誰か一人の英雄で回っていない。


仕組みで回っている。


教育で回っている。


つまり。


再現できる。


それが最も恐ろしい。


ガルディア王国。


軍務会議。


報告書が机に叩きつけられる。


「循環国家」


「大型輸送兵器完成」


将軍が眉をひそめる。


「兵器?」


「いえ……」


報告官の声が震える。


「輸送用です」


沈黙。


「輸送?」


「はい」


「大量輸送」


「高速輸送」


「長距離輸送」


「しかも通信同期済み」


宰相バルディスが静かに目を閉じる。


理解した。


終わった。


これは。


単なる輸送ではない。


国家性能差だ。


兵站差。


工業差。


教育差。


つまり。


文明差。


将軍が叫ぶ。


「破壊しろ!」


「街道を落とせ!」


「輸送を止めろ!」


バルディスは静かに首を振る。


「無理です」


「何故!」


「止めても再建されます」


「通信で即時修復される」


「人材もいる」


「資材も回る」


「技術共有されている」


「つまり」


彼はゆっくり言った。


「国家全体が一つの工場です」


誰も言葉を失う。


恐怖だった。


循環国家は。


“人類の限界効率”へ近づいていた。


そして。


その根本にあるのは。


血筋ではない。


才能でもない。


教育だった。


夜空。


巨大輸送ゴーレム達が街道を進む。


止まらない。


疲れない。


無数の灯り。


それはまるで。


新時代そのものが歩いているようだった。







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