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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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152/322

152話:民兵

森の深淵。


そこは既に戦場ではなかった。


山は崩れ。


大地は抉れ。


巨大な竜の死骸が無数に転がる。


焦土。


破壊。


災害。


まるで天災が通り過ぎた後だった。


しかし。


まだ終わっていない。


残る敵は三体。


アースドラゴン二体。


エンシェントドラゴン一体。


超巨大。


国家災害級。


普通なら一国が滅びる。


だが。


その三体ですら、既に自由を失っていた。


ピーターの魔法。


アイスマスク。


ウォーターマスクから派生した超高密度氷結拘束魔法。


巨大な竜の顔面を氷塊が完全に覆っている。


呼吸。


咆哮。


魔力放出。


全て封殺。


エンシェントドラゴンですら暴れるだけで何もできない。


教師たちは呆然としていた。


「……嘘だろ」


「エンシェントドラゴンを拘束してる……」


「しかも三体同時……?」


ピーター本人は、その反応に気づいていなかった。


彼は冷静だった。


生徒たちの安全。


教師の生存。


被害最小化。


その結果として最適解を選んだだけ。


そこへ。


戦闘部隊が動く。


剣神。


槍神。


拳神。


かつて農民だった者。


元兵士。


鍛冶職人。


木こり。


普通の民。


教育。


覚醒。


戦闘経験。


それら全てを積み重ね、到達した存在。


身体強化。


筋肉強化。


風属性加速。


土属性圧縮。


複数属性同時展開。


魔力が爆発する。


空気が震える。


剣神が消えた。


次の瞬間。


アースドラゴンの首が宙を舞う。


教師たちが目を見開く。


「速い……!」


しかし。


それだけではない。


本来。


ドラゴンの首など斬れない。


超高密度鱗。


超高密度魔力。


だが。


ピーターの拘束魔法が竜の魔力循環を封じていた。


だから通る。


剣神が吠えた。


「拘束があるから斬れる!」


その言葉通りだった。


ピーターが止める。


戦闘部隊が殺す。


完全分業。


さらに槍神。


風属性加速。


地面が爆ぜる。


槍が空間を裂いた。


エンシェントドラゴンの首元。


一点。


完全貫通。


魔力核粉砕。


エンシェントドラゴンが痙攣し、そのまま絶命する。


教師たちが完全に沈黙した。


国家最強クラス。


そのはずのエンシェントドラゴンが。


民に討伐されている。


しかし。


まだ一体。


最後のアースドラゴンが残っていた。


怒り狂っている。


氷を砕こうと暴れ続ける。


そこで。


拳神が前へ出た。


元農民。


鍬を握っていた男。


教育を受け。


覚醒し。


拳神へ至った。


男は静かに拳を握る。


身体強化。


筋肉強化。


土属性圧縮。


風属性加速。


拳へ全魔力集中。


教師たちが息を呑む。


「まさか……素手で……?」


拳神は地面を踏み砕いた。


爆音。


超加速。


次の瞬間。


正拳突き。


アースドラゴンの顔面へ直撃。


衝撃。


空間が歪む。


そして。


アースドラゴンの頭部が爆散した。


血。


骨。


肉片。


巨大な頭部が消し飛ぶ。


そのまま巨体が崩れ落ちた。


静寂。


誰も喋れなかった。


ドラゴン二十五体。


エンシェントドラゴン五体。


国家滅亡級災害。


それを。


教育された民が倒した。


ピーターは小さく息を吐いた。


「……終わりましたね」


その声で教師たちが現実へ戻る。


「終わった……?」


「いや待ってください!?」


「ドラゴン二十五体ですよ!?」


戦闘教師が頭を抱える。


別の教師は座り込んでいた。


ピーターは困ったように笑う。


そして右手を上げた。


アイテムボックス。


巨大な魔法陣が展開。


アースドラゴン二十体。


エンシェントドラゴン五体。


全て収納される。


教師たちが再び絶句。


「全部入った……」


「容量どうなってるんですか……」


「いやもうそこじゃない気もする……」


ピーターは首を傾げる。


「え? 普通に入りますよ?」


完全に感覚が壊れていた。


そこへ。


索敵教師が顔色を変える。


「ピーター先生!」


「……帝都です」


空気が変わった。


ピーターの目が細くなる。


「動きましたか」


「はい」


「地方貴族勢力が武装を始めています」


教師たちが緊張する。


しかし。


ピーターは冷静だった。


「転移します」


次の瞬間。


転移魔法。


教師。


生徒。


戦闘部隊。


全員が光に包まれる。


そして。


帝都。


皇宮。


巨大な謁見の間。


突然現れた大量の人影に、衛兵たちが騒然となる。


レオハルトが立ち上がった。


「ピーター先生!?」


さらに。


皇帝も目を見開く。


ピーターは無言でアイテムボックスを開いた。


直後。


轟音。


巨大なドラゴン死体二十五体が皇宮広場へ出現した。


地面が揺れる。


衛兵たちが悲鳴を上げた。


「ドラゴン!?」


「エンシェントだぞ!?」


「二十五体!?」


レオハルトが完全に固まる。


皇帝も絶句していた。


ピーターはその場に座り込んだ。


「あー……つかれた……」


土木教師のマリーが慌ててタオルを差し出す。


「ピーター先生、水分を」


「ありがとうございます……」


教師たちが苦笑した。


「いや、疲れたで済ませる規模じゃないんですよ……」


その時。


皇宮外が騒がしくなる。


大量の民衆。


農民。


職人。


兵士。


そして。


縄で拘束された貴族たち。


悪意ある地方貴族。


偽情報を流した者。


反乱を企てた者。


武器を隠していた者。


全員が民衆によって拘束されていた。


教師たちが驚く。


「農民が……」


「拘束した……?」


そこにいた農民たちは、以前とは違った。


目に力がある。


身体も鍛えられている。


魔力循環。


魔力操作。


属性魔法。


索敵。


拘束。


教育を受けた民だった。


一人の農民が皇帝へ頭を下げる。


「陛下」


「この者たちが反乱を企てておりました」


別の農民も言う。


「帝国を乱そうとしていました」


さらに。


「俺たちはもう騙されません」


その言葉に、レオハルトが静かに目を見開いた。


理解した。


これが教育。


知識を持った民。


考える民。


自分で判断できる民。


だから支配されない。


だから煽動されない。


だから国家が強くなる。


皇帝はゆっくり立ち上がる。


拘束された貴族たちを見る。


かつて帝国を支えていた者たち。


しかし。


変化を拒んだ。


既得権にしがみついた。


民を見下した。


そして。


民に敗れた。


皇帝は静かに言う。


「……時代が変わったな」


レオハルトも頷く。


「はい」


「教育が、人を変えました」


広場の隅。


マリーが静かにピーターを見ていた。


棄民出身。


何も持たなかった少女。


ピーターに救われ。


教育を受け。


教師になった。


そんな彼女の視線の先。


ピーターは疲れ切った顔で座り込んでいる。


それでも。


誰よりも多くの人を救っていた。


教師たちも笑い始める。


恐怖が終わったから。


生き残ったから。


そして。


未来が見えていたから。


教育。


覚醒。


循環。


それはもう、誰にも止められなかった。







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