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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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141話:魔力灯

夜。


グランゼル。


かつての防壁都市は、日が沈めば死んでいた。


灯りが少ない。


油は高価。


薪も貴重。


貧しい民は暗闇の中で眠るしかなかった。


夜道では盗賊が出る。


酔漢が暴れる。


魔物すら壁際へ寄ってくる。


だから人は夜を恐れていた。


だが。


今。


都市は変わり始めていた。


中央通り。


夜。


白い光が並ぶ。


民達が足を止める。


「……すげぇ」


「昼みたいだ」


「これ全部……魔力灯か?」


石造りの街路。


その両脇。


一定間隔で設置された魔力灯。


青白く優しい光。


風にも消えない。


煙も出ない。


臭いもない。


そして。


明るい。


子供達が歓声を上げる。


老人達は目を細める。


兵士達ですら驚いていた。


「夜警が楽になるな……」


「魔物の接近も見やすい」


「怪我も減るぞ」


魔道具師。


最近大量覚醒した職業。


元々。


魔道具は超高級品。


王族。


大貴族。


大商会。


その辺りしか使えない。


今。


違う。


教育。


魔力循環。


魔力操作。


魔力吸収。


それを学んだ民達が。


次々に魔道具師へ覚醒していた。


しかも。


実用特化。


「民が必要なものを作れ」


教師達の方針。


結果。


最初に量産されたのは。


武器ではなく。


灯りだった。


工房。


夜通し稼働。


若い魔道具師が汗を流す。


「次!」


「魔石補充!」


「魔力流路確認!」


土属性で外殻形成。


光属性で発光術式。


風属性で放熱。


複数属性。


連携。


大量生産。


以前の帝国では考えられない速度。


さらに。


価格。


安い。


民でも買える。


結果。


夜が変わる。


夜市。


飲食店。


鍛冶工房。


全部延長営業。


経済活動時間が伸びる。


税収増加。


犯罪減少。


事故減少。


全部繋がる。


レオハルトは夜の街を歩きながら静かに言う。


「本当に」


「文明が変わっていくな」


隣のピーターも頷いた。


「灯りは大きいです」


「人は」


「夜を恐れなくなる」


遠く。


子供達が笑っている。


以前なら。


夜に外へ出るなど危険だった。


今。


親達もそこまで怯えていない。


都市そのものが。


安心を覚え始めていた。


一方。


都市外。


掃討済み農地。


以前。


魔物の縄張り。


人が近づけなかった。


今。


狩り部隊が完全制圧。


広大な畑へ変わっていた。


冬。


主力は根菜。


芋。


豆。


保存食。


農夫達が汗を流す。


農婦達も動く。


魔力循環。


身体強化。


作業効率が以前とは別次元。


「よし!」


「次運べ!」


土属性。


耕作。


水属性。


灌漑。


風属性。


害虫管理。


光属性。


成長補助。


全部使う。


農民達。


既にただの農民ではない。


覚醒者。


さらに。


追加覚醒。


ゴーレムスキル。


畑の隅。


土の塊が動く。


人型。


農業用ゴーレム。


運搬。


耕作。


掘削。


補助。


農夫が笑う。


「これ便利すぎるだろ……」


農婦も驚く。


「冬でここまで作れるなんて……」


現在。


食料充足率。


七十八パーセント。


以前のグランゼルからすれば異常。


しかも冬。


春になれば。


爆発的に増える。


教師達も確信していた。


飢えは消える。


本当に。


この都市から。


夕方。


狩り部隊帰還。


三十班。


十人一班。


現在。


都市最大戦力。


門が開く。


荷車。


魔物素材。


山。


歓声。


毎日数千。


いや。


既に一万近い討伐数。


戦闘系覚醒者が増えすぎていた。


剣豪。


槍豪。


拳豪。


さらに。


剣聖。


槍聖。


拳聖。


極聖。


異常。


普通なら国家英雄級。


それが部隊単位で存在している。


そして。


全員。


教育済み。


統率済み。


マイク型の現場指揮官まで育っていた。


暴走しない。


統制されている。


だから強い。


その帰還中。


索敵部隊が止まった。


空気が変わる。


リシェル。


索敵教師。


目を閉じる。


風。


光。


闇。


全属性索敵。


今の索敵班は異常だった。


単属性ではない。


複数属性混合。


だから精度が桁違い。


リシェルの眉が動く。


「……止まって」


周囲が静まる。


狩り部隊長。


「どうした」


「……いる」


「数が多い」


「地下」


空気が変わる。


ピーターも目を細める。


索敵範囲。


地下深部。


冷たい反応。


腐敗。


死。


アンデッド。


しかも。


普通ではない。


数。


異常。


治癒師達がすぐ動く。


光属性。


付与開始。


剣。


槍。


斧。


全部。


白い光を帯びる。


騎士が唾を飲む。


「……大規模墓地か?」


リシェルが首を振る。


「違う」


「動いてる」


「集まってる」


ピーターが静かに言う。


「誰かが」


「操ってる可能性があります」


その瞬間。


周囲の空気が重くなる。


今まで。


改革。


成長。


発展。


順調だった。


だが。


世界は甘くない。


これだけ急激な変化。


必ず。


反動が来る。


レオハルトも気づいていた。


旧貴族。


旧宗教。


旧権力。


全部。


黙って見ている訳がない。


そして。


アンデッド。


それは。


戦争の匂いだった。


夜。


作戦会議。


地図。


地下水路。


古墓地。


廃坑。


全部並ぶ。


教師達も真剣。


先程まで笑っていた空気は消えた。


ピーターが静かに言う。


「民は守ります」


「絶対に」


その声は弱くない。


昔のピーターではない。


もう。


泣き虫ではない。


教師。


治癒師。


精神支柱。


そして。


人を導く者。


レオハルトも頷く。


「こちらも騎士団を動かす」


「グランゼルは落とさせない」


外。


魔力灯が街を照らしている。


明るい。


暖かい。


人々が笑う。


子供が走る。


店が開く。


湯気が上がる。


生きている街。


だからこそ。


守らなければならない。


ピーターは窓の外を見る。


光。


それは希望。


だが。


光が強くなれば。


闇もまた。


動き始めるのだった。








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