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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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139話:病の消失

グランゼル。


北部防壁都市。


かつて。


この街には。


冬になるたび。


病が広がった。


凍傷。


肺病。


皮膚病。


感染症。


栄養失調。


死。


死。


死。


雪解けの季節になると。


裏路地には。


名前も残らない死体が並んだ。


それが当たり前だった。


だが。


今年。


異変が起きていた。


治療院。


朝。


医師達が報告書を見て固まっている。


「……減ってる」


「感染率が」


「去年の十分の一以下……?」


別の治癒師。


震える声。


「下痢症状も激減」


「肺病も減少」


「子供の死亡率まで……」


誰も信じられない。


奇跡。


そう呼びたくなる数字。


だが。


奇跡ではなかった。


教育。


それだけだった。


街角。


子供達が手を洗っている。


石鹸。


泡。


笑い声。


以前なら。


あり得ない光景。


母親達も。


洗濯をしていた。


布。


タオル。


湯。


全部。


生活へ浸透し始めていた。


さらに。


配布された“石”。


浄化石。


光属性持ち達が作った。


水を浄化する簡易魔道具。


汚水。


腐敗。


菌。


全部減る。


以前。


金持ちしか飲めなかった安全な水。


今。


民全体へ。


教師達が街を歩く。


民が頭を下げる。


「先生!」


「子供の熱が出なくなりました!」


「咳が減ったんです!」


「赤ん坊が生きてる……!」


老婆が泣きながら言う。


「孫が冬を越せた……」


教師達は。


静かに息を飲む。


戦ってるだけじゃない。


救っている。


実感。


それがあった。


その日の夕方。


ピーター達教師陣へ。


招待状が届く。


差出人。


ミーナ。


「お礼の食事会をしたいです」


教師達が顔を見合わせる。


「……食事会?」


「いつの間に」


「というか店あるのか?」


ピーターは少し困った顔で笑う。


「行きましょう」


夜。


雪の街。


以前。


娼館だった区域。


今。


灯りが違う。


酒臭さではない。


料理の匂い。


パン。


肉。


スープ。


温かい。


人の匂い。


教師達は。


小さな料理店へ案内される。


木製看板。


『白雪亭』


店へ入る。


「いらっしゃいませ!」


元気な声。


迎えたのは。


ミーナ。


そして。


アン。


レイラ。


アンジェ。


ミカ。


あの日。


助けた五人。


皆。


服が違う。


目が違う。


生きている顔。


教師達が驚く。


「え……店?」


ミーナが照れくさそうに笑う。


「はい」


「皆で始めました」


「まだ小さいですけど」


中。


満席。


客達。


笑っている。


料理の匂い。


温かい空気。


以前のグランゼルでは考えられない。


席へ案内される。


料理が運ばれる。


スープ。


焼き肉。


野菜。


パン。


蒸し料理。


香辛料。


さらに。


布製おしぼり。


教師達が固まる。


「……おしぼり?」


「なんだこれ……」


ミーナが笑う。


「タオルです」


「温かい方が嬉しいかなって」


教師達が顔を見合わせる。


文明。


それを感じる。


その時。


厨房から女性が出てくる。


短髪。


腕まくり。


強い目。


「料理長のカーラです」


頭を下げる。


「本日はありがとうございます」


ピーター達も礼を返す。


カーラは少し恥ずかしそうに笑った。


「……感謝してます」


「だから今日は楽しんでください」


そう言って。


厨房へ戻る。


レオハルトが小声で聞く。


「誰だ?」


ミーナが答える。


「元娼婦仲間です」


ピーターが思い出す。


調理スキル。


あの日。


覚醒していた。


あの女性だ。


料理。


一口。


レオハルト。


止まる。


「……は?」


教師達も止まる。


「うま……」


「待て」


「これ店レベルじゃない」


「宮廷級だぞ」


カーラの料理。


異常だった。


火加減。


塩。


香辛料。


肉汁。


全部。


完璧。


調理スキル。


完全開花。


さらに。


客の反応を見る力。


料理を合わせる力。


既に一流。


レオハルトが真顔になる。


「……これ」


「帝都でも通用する」


ミーナ達が笑う。


「カーラ昔から料理好きだったんです」


「でも」


「娼婦だから意味ないって」


空気が静かになる。


意味がない。


そう決めていたのは。


社会だった。


才能は。


あった。


環境が。


潰していただけ。


その頃。


城壁外。


吹雪。


狩り部隊。


戦闘中。


一班。


十人。


だが。


以前の軍隊とは別物。


剣神。


槍神。


拳神。


極聖。


大量発生。


魔狼の群れ。


一瞬。


消える。


火。


氷。


風刃。


槍。


拳。


全部。


連携。


さらに。


索敵。


全属性混合。


遠距離索敵。


魔力反応感知。


奇襲ゼロ。


結果。


一班。


一日。


千体討伐。


三十班。


三万体。


魔物の山。


解体場が悲鳴を上げるレベル。


だが。


必要だった。


都市を守るため。


防壁都市グランゼル。


少しずつ。


安全になる。


それが。


民にも分かっていた。


店内。


教師達。


酒を飲む。


笑う。


久々だった。


戦いだけじゃない。


人の営み。


その真ん中にいる。


実感。


教師の一人が酒を飲みながら言う。


「……魔法教育」


「もっと広げないとな」


別教師も頷く。


「全部変わる」


「病気も」


「産業も」


「生活も」


レオハルトが静かに言う。


「国家そのものが変わる」


皆。


黙る。


本当に。


その通りだった。


すると。


女性教師がニヤニヤしながらピーターを見る。


「でも」


「ピーター先生」


「どこ行ってもモテますねぇ」


周囲が笑う。


ピーターが慌てる。


「そ、そんなこと……」


別教師。


「ありますよ」


「娼館街でも」


「農村でも」


「帝都でも」


「全部女性に好かれてます」


さらに別教師。


「私達教師陣も」


「三聖人狙ってるんですけどねぇ」


ピーターが首を傾げる。


「三聖人?」


レオハルトが苦笑する。


「もう噂になってる」


「マイク」


「ジミー」


「ピーター」


「三聖人」


店内爆笑。


ピーターは真っ赤になる。


「や、やめてください!」


だが。


事実だった。


マイク。


現場英雄。


民を守る力。


ジミー。


物流革命。


経済循環。


そして。


ピーター。


教育。


救済。


希望。


民は。


もう。


理解していた。


世界を変えるのは。


王族だけじゃない。


教育者。


現場。


流通。


生活。


全部だと。


食事会は続く。


笑い声。


温かい料理。


雪の街。


そして。


病が減った都市。


それは。


奇跡ではない。


衛生。


教育。


食事。


物流。


安全。


全部。


積み重ね。


文明だった。


ピーターは静かに窓の外を見る。


雪。


だが。


昔ほど寒く感じない。


街に。


人の熱が戻っていた。







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