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戦わずに世界を変えた男――教育と物流で“循環国家”を作ったら、宗教国家まで改革された  作者: 慈架太子


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135/322

135話:信用

帝都。


改革は。


もう止まらなかった。


市場。


物流。


教育。


農業。


工房。


軍。


行政。


全部が。


同時に変わり始めていた。


その中心にあるのは。


金ではない。


力でもない。


“信用”だった。


帝都中央市場。


朝。


巨大な荷馬車が並ぶ。


以前なら。


怒号が飛び交っていた。


荷の奪い合い。


値段の吊り上げ。


詐欺。


偽装。


隠匿。


それが普通だった。


今。


空気が違う。


商人達は帳簿を公開していた。


輸送記録。


品質記録。


破損率。


全部共有される。


なぜか。


誤魔化す意味が無いからだ。


信用を失う方が。


損をする。


それが。


帝都全体の共通認識になり始めていた。


ある若い商人が。


隣の商人へ言う。


「お前のところ」


「輸送成功率九八%だろ」


「次の契約回してくれ」


以前なら。


情報は隠した。


今は違う。


優秀な相手と組む。


その方が儲かる。


さらに。


物流補償制度。


輸送保険。


事故時の補填。


全部整備された。


つまり。


“信用”そのものが価値になった。


金だけ持っていても意味が無い。


信用されない商人は。


市場から消える。


逆に。


誠実な商人は。


どんどん取引が増える。


帝都は。


新しい経済へ変わり始めていた。


その頃。


皇居中央大広場。


一万人規模教育。


まだ続いていた。


民は毎日集まる。


農民。


職人。


兵士。


荷運び。


商人。


老人。


子供。


皆。


学びに来る。


ピーターは。


ほとんど眠っていなかった。


だが。


疲れた顔は無い。


魔力循環。


魔力操作。


魔力吸収。


完成している。


さらに。


周囲から流れる自然魔力。


帝都全域。


既に巨大循環圏になり始めていた。


教育された人間が増えるほど。


世界そのものの魔力効率が上がる。


それは。


グロマールが最初に作った理論だった。


教師団も。


既に以前とは別人だった。


農業教師。


治癒教師。


索敵教師。


鍛冶教師。


行政教師。


皆。


大量の指導経験を積んでいる。


すると。


ある日。


一斉に変化が起きた。


授業中。


教師達の身体から。


淡い光が漏れる。


ピーターが振り返る。


教師達が驚いていた。


「……これは」


「スキル……?」


鑑定。


教導。


同時発現。


しかも。


教師全員。


ピーターは息を呑む。


教え続けた。


人を育て続けた。


だから。


“教師”として完成した。


それが。


スキルになった。


教導。


相手に最適な成長を示す。


理解速度。


適性。


習熟。


全部把握できる。


さらに。


鑑定。


才能。


状態。


成長率。


異常。


全部見える。


教師達が震える。


「……見える」


「この子は土属性補助が得意だ」


「この人は治癒適性が高い」


「こっちは身体強化特化……」


教育速度が。


さらに跳ね上がった。


そして。


その中心。


高台。


皇帝。


老いた皇帝が。


静かに民を見ていた。


帝都民。


笑っている。


学んでいる。


働いている。


以前の帝都では無かった光景。


その時。


ピーターが近づいた。


「陛下」


「本日の教育人数です」


皇帝は資料を見る。


一万人。


さらに。


新規覚醒者。


七千を超えていた。


老皇帝は目を閉じる。


長い沈黙。


そして。


ゆっくり口を開く。


「続けよ」


周囲が静まる。


皇帝は続ける。


「帝都民」


「全員が覚醒するまで」


「止めるな」


空気が変わる。


教師達の目が変わる。


兵士達が背筋を伸ばす。


帝国は。


本気だった。


もう。


一部の天才だけで国家を回さない。


全員育てる。


国家全体を変える。


その瞬間だった。


皇帝の身体から。


膨大な魔力が溢れた。


空気が震える。


周囲が息を呑む。


皇帝自身が。


覚醒した。


黄金色の魔力。


重い。


圧倒的。


しかし。


暴力ではない。


支える力。


導く力。


ピーターが鑑定する。


そして。


絶句した。


「……皇帝スキル」


周囲が凍る。


皇帝スキル。


国家全体へ影響を与える超級統治系。


統率。


安定。


士気。


行政。


全部を底上げする。


老皇帝は。


静かに笑った。


「今頃か」


誰かが泣いた。


近衛騎士だった。


長年。


帝国を支えた老人。


ようやく。


国家が変わった。


その証明だった。


その日から。


帝都の変化はさらに加速する。


荷運び小僧。


身体強化覚醒。


荷運びスキル獲得。


以前の二倍運べる。


しかも。


落とさない。


壊さない。


本人が一番驚いていた。


「……軽い」


「こんなに運べる……!」


親方が笑う。


「お前」


「もう一人前だな」


少年は泣きそうになる。


今まで。


怒鳴られてばかりだった。


違う。


成長できる。


努力が形になる。


それが分かった。


市場では。


商人達が変わる。


商人スキル覚醒。


需要予測。


在庫最適化。


利益計算。


民が何を欲しているか。


直感的に理解できる。


結果。


売れ残りが減る。


必要な物が届く。


価格が安定する。


つまり。


民が助かる。


さらに。


農村。


農民達。


土属性。


水属性。


農業補助。


そして。


ゴーレムスキル。


大量覚醒。


木製農業ゴーレム。


土運搬ゴーレム。


水路整備ゴーレム。


次々生まれる。


以前。


十人でやっていた仕事。


今。


三人で回る。


余剰人員は。


別産業へ行ける。


つまり。


経済が広がる。


大工達も変わる。


木工スキル。


建築補助。


ゴーレム建築。


高速化。


住宅が一気に増える。


孤児院。


学校。


浴場。


倉庫。


全部建つ。


帝都は。


毎日景色が変わっていた。


夜。


ピーターは。


皇居屋上に立っていた。


下を見る。


灯り。


人。


笑い声。


以前より多い。


帝都が生きている。


そこへ。


レオハルトが来た。


「寝てないな」


ピーターは苦笑した。


「先生達も働きすぎです」


レオハルトも笑う。


そして。


下を見る。


「……すごいな」


ピーターは静かに言う。


「皆」


「変わりたかったんですね」


レオハルトは頷いた。


「環境が無かっただけだ」


その言葉。


まさに。


グロマールの思想だった。


人は育つ。


環境があれば。


教育があれば。


信用があれば。


だから。


文明は広がる。


帝都では。


既に新しい言葉が定着していた。


「金貨より信用」


「信用ある商人を選べ」


「信用ある教師を呼べ」


「信用ある領と繋がれ」


国家そのものの価値観が。


変わり始めていた。


そして。


誰もが知っている。


その始まりの名を。


グロマール。


英雄ではない。


王でもない。


支配者でもない。


ただ。


循環を始めた人。


その火は。


もう世界中へ広がっていた。







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