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チートが無いなら無いなりに  作者: 古賀仁成
1章 11歳少年エド。魔法を失う。魔法が無いなら無いなりに。

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7話 受容

励みになるのでブックマークと評価をおねがいします。

「......でも、話しておきたいことは、それだけじゃないんだ。」



エドは一度だけ息を整えた。

「僕、もう――魔法が使えない。」

その言葉に、部屋の空気が止まったように感じられた。


リラは、すぐには反応できなかった。

ただ、エドをみつめたまま、瞬きすら忘れたように動きを止める。


「......え?」


ようやくこぼれたのは、理解が追い付かないまま漏れた、小さな声だった。


エドは一度言葉を切り、静かに自分の手を見下ろした。

「昨日、目が覚めてから、何かがおかしいと思ってた。」


指を軽く握ったり、開いたりする。

見慣れた、自分の手。

けれど、以前とは決定的に違うものがあった。


「魔力が......感じられないんだ。」


リラの眉が、わずかに寄る。


「感じられない......?」


その言葉は、あまりにも当たり前すぎて、逆に意味をなさない。

光が見えない、音が聞こえない――そう言われるのとは、どこか違う。

魔力は、あるのが当然で、意識せずともそこにあると分かるもの。

それが感じられないとは、どういうことなのか。

理解が追い付かないまま、リラはエドを見つめる。


「何度やっても、駄目だった。風を起こそうとしても、何も起きない。魔力ってどんなものだったか、少しも思い出せないんだ。」


その説明を聞いた瞬間、リラの顔から血の気が引いた。

重ねた手に、ぎゅっと力が入る。

唇がかすかに震え、息を吸う音が小さく漏れた。


「そんな......」


それは否定でも疑いでもない。

ただ、あまりにも大きすぎる現実を前にした、かすかな悲鳴だった。

そのかすかに震える声に、エドはそっと首を横に振った。


「大丈夫。」


不思議なくらいに穏やかな声だった。


「最初に気づいたときは、さすがに驚いたけど......もう、受け入れてる。」

そう言いながら、自分でもそれが本心だと分かった。


もちろん、失ったものが小さいわけでは無い。

魔法は、ずっと当たり前にそこにあったものだ。

冒険者になる夢だって、その先に続いていた。


けれど――。


「無くなったものは仕方ないからさ。」

エドは小さく笑う。

その笑みには、諦めではなく、静かな決意があった。


リラはしばらく何も言わなかった。


ただ、目の前の息子を静かに見つめていた。

小さな体で、どれほどのことを受け止めたのだろう。

どれほど悩み、考え、この答えにたどり着いたのだろう。


胸は痛んだ。

できることなら、その重さを代わってやりたいと思う。


けれど同時に、誇らしくもあった。


目の前にいるのは、守られるだけの子供ではない。

自分の力で現実を受け止め、前に進もうとしている一人の人間だった。


リラはそっと微笑む。


「そう――。でも、強がらなくていいのよ。」

その声は、どこまでもやわらかかった。


「つらいときや苦しいときは、ちゃんと頼ってちょうだい。あなたはまだ、こどもなんだから。」

「......うん。」


エドは静かに頷いた。

胸の奥には、確かな温かさがあった。

受けれてもらえたという安堵、支えてくれる人がいるという安心。


それと同時に、どこか冷静な自分が、このやり取りを静かに見つめてもいた。

きっと、自分はこの言葉を求めていたのだろう。

不安を打ち明けたのも、失ったものを語ったのも、ただ事実を伝えただけではない。


どう言葉を選べば、相手が何を返してくれるか。

そんなことまで、どこかで分かってしまう。


どれほど歳を重ねても身につかなかった無邪気さを、

今の自分も、やはり持てないらしい。

そう思うと、胸の奥に、わずかな苦みが残った。


そんなエドの表情を見て、リラは優しく微笑んだ。

「もう遅いわ。もう寝ましょう。」

「うん」


エドは立ち上がり、小さく伸びをした。

心も体も、今日は随分と疲れていた。


「おやすみ、お母さん。」

「おやすみなさい、エド。」


その声に見送られ、エドは寝室へ向かう。


窓の外では、夜風がそっと木々を揺らしていた。

枝葉が触れ合うたび、さらさらと静かな音が闇に溶けていく。


淡い月明かりが窓辺に差し込み、床にやわらかな銀の帯を描いていた。

その光はゆれる葉陰と重なり、まるで水面のようにかすかに揺れている。


村はもう深い眠りの中にあった。

遠くで虫の声がしずかに響き、夜は何事もないように穏やかだった。

エドはその静けさに包まれながら、ゆっくりと目を閉じる。


このときは、まだ知らなかった。

明日が、いつもと同じ一日にはならないことを。


そしてそれが、自分のこれからを大きく変える始まりになることを。

なにとぞマン登場!励みになるのでブックマークと評価を!なにとぞ、なにとぞマン!!!

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