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そうだ。奴隷を冒険者にしよう  作者: HATI


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第986話 太陽神(少女)

 言われた通り、なるべく太陽光が浴びれる外の仕事をする。

 外の仕事は基本的に人気がないので班の仲間から感謝された。

 俺もやりたくはないのだが、太陽神が力を取り戻さないとどうしようもない。

 働きながら他の班とも親交を深めたので、一目置かれるようになってきたのはいい傾向だ。


 どうやら太陽神は本当に力を失っているらしく、俺と会話するのがやっとのように見える。

 これに関しては俺を助ける時に二回とも力を使ってしまったのだと思う。

 そのせいで消えかけているのではないだろうか。

 だとすればその分くらいは協力するのもやぶさかではない。


 しかし、信仰を捧げる……つまり太陽神に祈ることについては戸惑いがあった。

 もしこれがアズに知られたら激怒するだろうか。それとも泣くかもしれない。

 エルザもちょっと怖いな。


(太陽の光は最低限のものだ。祈りなしでは食事を食べない人間と思え)

(分かったよ)


 やはりやらなくてはダメらしい。

 片膝を床につけ、太陽神のペンダントを両手に持ち目を瞑る。

 太陽神の姿を覚えている。

 長い金髪に赤い目の少女。

 年齢は今のアズと同じくらいだったはず。


 頭の中でその姿を強く思い浮かべ、なるべく敬意をもって祈る。


(偉大なる太陽神ブラフマンに祈りを捧げる)


 あらかじめ教わった言葉を頭の中で繰り返す。

 すると、自身の身体から活力が抜けてペンダントへと移っていくのが伝わってきた。

 祈るという行為を通して俺から魔力や生気を回収しているようだ。

 ほとんど存在を感じられなかった太陽神だったが、祈りの後はハッキリとここに在ると感じる。


(今の私にはお前しかいないから加減してやった。貴重な道具は長く大事に使わねばな)

(よく言う)


 他にあてがあれば加減など一切しないくせに。


(なぁ、ここにいる他の罪人たちにも信仰してもらったらどうだ? 数は多いんだし、ずいぶんと回復も早くなるんじゃないか)

(そうもいかん。この世界は私が作ったと言っただろう。そこにお前やアイン・ソフ・オウルの一部が混ざった結果生まれたものだ。お前以外の人間は形は人間に見えても別物だと思え)


 神様にも色々とあるらしい。

 この世界で俺以外が太陽神に祈りを捧げても効果がないのは分かった。

 ……しかし人間ではないと言われても、どこからどう見ても人間にしか見えない。


 ラピスと呼ばれた女もそうだ。

 ここを出たら、彼女や王に会いに行く必要がある。

 この砂漠の世界にはきちんとした国はここズールしかない。

 その王はきっと破壊するべき世界の核のことも知っているのだと思う。

 不思議な力も持っているらしいし。


 太陽神の言う通り、一度の祈りでは少し疲労がある程度だった。

 仕事が楽になった分、これなら問題なさそうだ。


 何日も同じような日々を繰り返す。

 これだけでも拷問だ。同じ班の人たちも基本的に会話をしない。

 もし話し相手に太陽神がいなければ頭がおかしくなっていた。

 祈る度に力を増しているのも進捗を感じられてやる気を維持するのに一役買っている。


 そしてついに――


「よっと」


 太陽神が突然姿を現した。

 ……少女の姿で。


「チッ。やはりこの程度の力では幼いな」


 昔のアズと同じくらいか。

 10代前半に見える。

 白いワンピースだけ着ており、足は素足だ。

 それでもその容姿は整っていた。

 腰まである金髪と爛々と全てを燃やすような赤い瞳は、思わず魅入るほどの美しさだ。


 にもかかわらず、周囲の男たちは反応がない。

 いきなり少女が出てきたら驚くなりしてもよさそうだが。


「契約者であるお前以外には私は見えていない。声も同様だ。核に近い人間なら見えるかもしれないが、その辺の奴なら心配ない」

「そういうことか」


 俺の声も太陽神にだけ届くように調整できるらしい。

 頭の中で会話するのも楽だったが、ひとまず一歩前進といったところか。


「ペンダントから出てきたのはそれなりに力が戻ってきたのか?」

「私の本体はまだペンダントの中だ。これは外側に映し出している分身のようなものだと思え。最低限は回復したが、まだ核を守っている存在には勝てないだろう」

「あれだけ強かった神様なのに」

「そうしたのはあの小娘だろうが!」


 吠えるように怒鳴る。

 だが、力も失い姿が少女だからか迫力はない。


「お前は変わらず過ごしていろ。私は核の居場所を探しに行く」

「一人で大丈夫か?」

「こちらから仕掛けなければ問題ない」


 太陽神は壁をすり抜けて外に出た。

 なるほど。幽霊のようなものか。

 偵察する手間が省けるなら文句はない。

 俺はいつも通り労働をすることにした。


 数日ほど経ったが太陽神は帰ってきていない。

 ペンダントから存在は感じ取れるので、やられたわけではないと思う。

 これが本体なら置いて行かれる心配もない……はずだ。


「本当にこれで台車が作れるのか?」

「まあ見てろ」


 俺はというと、仕事を済ませた後に放置されていた倉庫から色々と引っ張り出して即席の台車を作ろうとしていた。

 なんせルーティンワークばかりだ。

 この世界には魔石も魔力もないので、全て人力なのは仕方ないとしてもせめてもうちょっと楽をしたい。


 商会で購入した台車の修理費をケチるために自分で直していたので構造は分かる。

 見た目は悪いが、なんとか作り上げることができた。


「これならバケツを一度に三つは運べるだろう。日が高いうちに仕事が終わると思うぞ」

「それだと追加の仕事をやらされねぇか?」

「あの婆さんが俺たちの仕事ぶりを確認していればな」


 老婆はあれから一度たりとも姿を見せていない。

 毎日の食事も罪人が作っているらしい。

 まあ楽ができていいのだが……。


「お前は何をしているんだ?」


 ポカリと頭を叩かれる。

 太陽神が戻ってきたようだ。

 呆れた顔で俺を見ている。

 この様子だと台車のために四苦八苦していた様子を見ていたのだろう。


「てっきり物に触れないかと思ってた」

「触ろうと思えば触れる。……こんなどうでもいいことを話すために戻ってきたんじゃない。緊張感のないやつだ」


 焦っても仕方ないので楽しみを見つけただけなのだが、ため息をつかれるのは心外だ。






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