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そうだ。奴隷を冒険者にしよう  作者: HATI


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第987話 戦力不足

 台車を同じ班の男に渡し、人目に付かないところに移動する。

 太陽神との話を誰かに聞かれないとはいっても、怪しく見えるのは間違いないしできれば話に集中したい。


「それで、偵察した結果は?」

「それより先にまず今日の分の祈りを寄こせ。本体から離れていたせいで疲れた」

「……分かった」


 神だけあってワガママというか、こいつは自分の意見を曲げない。

 相手が人間の俺だからというのもあるかもしれないが、こっちが折れたら済むことなら折れた方が早いと判断する。


 祈りの動作は何度もやったので慣れた。

 ささっと済ませると、ペンダントに力が吸われていく。

 この感覚だけはいつまで経っても慣れない。


「んんっ」


 ……太陽神の口から喘ぎ声のような声が出てくる。身をよじり、なんというかいかがわしい感じだった。

 祈りを受け取るのはそういうものなのだろうか?


「もう少し敬意を込めるように。慣れたからと言って手を抜くな。そういうのは質に影響する」


 さっきまでの光景などなかったかのように注文を付けてくる。

 敬意と言われても、元々敵だったわけで本心から信仰するのはちょっと難しい。

 こいつが本当に役に立ってくれたら考えないでもない。


「まあいい。ないよりはマシだ」


 ほんの少しだけ太陽神の身体が成長したような気がする。

 力を取り戻すごとに肉体の年齢も変わるのかもしれない。


「まず周囲に何もないか実際に確かめてきた。……ズールと呼ばれているここ以外は全て砂漠だ。集落すら存在しない」

「周辺をいくら歩いて探しても無駄ということか」

「そうだ。この世界は即席故に限界はあるが果てはない。無限に砂漠を歩き続ける羽目になるだろう」


 場合によってはここを抜け出して別の所へ移動しようと思っていた。

 もしそうしていたらと思うとゾッとする。

 太陽神の言葉を信じるならばだが、こいつが俺に嘘をついても得をしないと思う。


 ここから出たいのは共通の目的で、こいつは俺からしか力を補充できない。

 俺がもし死んでしまえば、俺と共にいつまでもこの世界に囚われることになる。

 それは嫌なはずだ。


 太陽神はというと、胸を張ってどうだと言わんばかりの態度だった。


「助かったよ。やはりここが世界の中心なんだな」

「うむ。そういうことだ。なので私は城の中を調査することにした」


 褒められて少し嬉しそうにしている。

 神といっても、精神まで超越しているわけではないのかもしれない。

 あるいは、肉体に精神が引っ張られているのか。

 俺が初めて太陽神と会った時はもっと凄みがあったし尊大な喋り方をしていた気がする。


 喋り方はそこまで違わないから、やはり振る舞いとかそういう部分か。


「兵士がいくらいようと、私を認識できなければ意味がない。だが、奥まで行くことはできなかった」

「どうして?」

「ラピスだったか? あの女には私が見えていた。おそらく王とやらもそうだろう。城の中心部に移動しようとしたらハッキリと妨害された」


 ラピスか。

 アズと瓜二つの容姿をしているここの王女。

 俺の記憶が混ざっていると言ったので、そのせいかもしれない。


「忌々しい小娘そっくりだった。あの顔を見るだけで、はらわたが煮えくり返る思いだ」


 アズに負けて力を失ったからか、見た目が同じラピスも気に食わない様だ。

 俺としてはやや冷たい感じがするあの表情は悪くないと思う。

 アズは俺に笑顔ばかり向けてくるのでかなり新鮮だ。

 まあ俺を罪人にしているので好きではないのだが。


 足を何度も床に叩きつけている太陽神をなだめて話の続きをする。


「世界の核が城の中心にあるのは間違いない。この世界を作ったのは私だから近づけばハッキリと分かる。王や小娘はこの世界がなくなれば消える存在だ。だから核を守っているのだろう」


 あっちはあっちで生き残るための行動をしているというわけか。

 だが、俺だって元の世界に戻りたいと思っている。

 ずっとここに居るつもりは一切ない。

 ラピスだってアズに似ているだけで別人なのだ。


「問題はどうやって核を破壊するのかってことか。……ちゃちゃっと壊したりできないのか? アズと戦った時に色々とやっていただろう」

「本来の私なら指先一本でできただろうが、今の私はその指先一つの力すらないのだぞ。お前のような人間に頼るしかないほど弱体化している。……どうして私がこんな」


 自分で言っててショックを受けている。

 自業自得だが、聞きたいのはこれではないのは俺にも分かる。

 こうなる前はとてつもない力を持っていただけに落差が辛いのだろう。


 大金を持っていても次の日全てを失うと世界が終わったように感じる。

 それと似たようなものかもしれない。

 ようやく復活した太陽神が続きを話す。


「それと、あの小娘そっくりの女からはアイン・ソフ・オウルの力を感じた。きっと王もそうだろう。本能的に私という存在を感じ取って閉じ込めようとしているのかもしれん」

「ということは俺は太陽神のペンダントを持っているから巻き添えになったのか?」

「……そうかも」


 拾うんじゃなかった。

 いや、もし間違って変な人物が手にするよりは管理できるだけマシなはず。

 盛大なため息をつく。

 こうなっては仕方ないな。

 協力して少なくとも脱出の目処はつけなくてはいけない。


 実際に出るかどうかは慎重に考えなくてはいけないが、今は置いておこう。


「お前、剣は振れるか?」

「生憎と金とソロバンが武器でね」

「だろうな。今の私でも勝てるくらい弱そうだ」

「そっちは? 実際何ができる?」

「ふん」


 手の平サイズの小さな剣が三本ほど出てきて宙に浮く。

 アズと戦っていた時に使っていた武器で、そのうち一本はアズが拾って自分のものとして扱っている。

 しかしこんなに小さくはなかったぞ。


「……これが限界だ。使徒の方も似たようなものだな」


 手の平を地面に向け、ぶつぶつと呟く。

 すると地面から細くて頼りない骸骨が出てくる。

 俺が言うのもなんだが、とっても弱そうだ。

 長時間維持できないのか、崩れるように消えていった。


 ……かなり不安がある。

 ラピスは太陽神を見つけられるし、そもそも俺は兵士に見つかってしまう。

 その上で城の中心に向かうには圧倒的に戦力不足だった。


「そんな目で私を見るな。むかつく」




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