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そうだ。奴隷を冒険者にしよう  作者: HATI


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第981話 永遠の生命と繁栄を

 爆発は立て続けに何度も発生し、きっかり十回分の爆音と共にその衝撃波が襲ってくる。

 スレイプニールは逃げ場がないからかさっさと頂上から降りており、私たちはエルザさんとアレクシアさんが張った結界の中で地面に突っ伏してそれが終わるのを待った。


 結界が大きく揺れ動く。

 直撃どころか余波ですらこれだ。

 相当な破壊力があったのが分かる。


「切り札にするだけあるわね。威力だけならエヴァリンの魔法以上じゃないかしら」


 覆いかぶさってくれたアレクシアさんの下から爆心地を眺める。

 ごうごうと黒い煙が巨大な白い木を覆っており、白い世界を拒絶するかのように空を染め上げていた。


「すごい……」


 爆弾の効果は絶大だった。

 幹の三分の一が吹き飛んでおり、残りの部分も焼け焦げた跡がある。

 爆発で発火したのか、残っている部分にも火の手が上がっていた。


 タリアさんは見事に作戦を成功させた。

 立ち上がってすぐに周囲を見渡したのだが、姿がない。

 何本もの槍に貫かれながら、至近距離で魔石爆弾を爆破させたのだ。

 おそらく、もう……。


 彼女の勇敢さを無駄にするわけにはいかない。

 騒動の原因である巨大な白い木は、大きく損傷しながらも健在だ。

 魔力によるダメージだからか、再生が始まる様子もない。

 周囲も白い汚染から解放されていた。

 このまま止めを刺して伐採するのは難しくないだろう。


 剣を抜いて前に出る。

 だが、それ以上白い木に近づくことができなかった。

 タリアさんを射貫いた槍を投げた相手が木の上から降りてきたのだ。


 ……白い服に、色白の肌。

 なによりも目立つのは、背中にある純白の羽だ。

 彫刻のような美しさも相まって、それはまるで穢れなき存在のよう。

 この白い世界に相応しい住人に見えた。


 だが、その顔には見覚えがある。

 遭遇したドラゴニュートの人たちに酷似していた。

 倒したはずの赤髪の少女や、青年など。

 ただ、表情は無機質で人の感情も感じられない。

 ドラゴニュートを真似て作られた人形……そう評するのが一番しっくりきた。


「天使――」


 エルザさんが零れ落ちるように呟く。

 ああ、あれを呼ぶのにぴったりの名前だなと思った。

 天使たちは枝に付いた葉っぱを千切ると、それはすぐに槍や弓、剣に変化する。

 彼らはどうやらこの白い木を守る守護者らしい。


「来るわよ!」

「前に出ます! 援護してください!」


 弓から放たれた矢や、投擲された槍が襲ってくる。

 正面からきた矢を剣で斬り落とし、前に進む。

 強い衝撃だったが、足を止めるほどではない。


 前に進むほど抵抗は激しくなる。

 だが他の皆が降りそそぐ槍や矢を弾いてくれたため、あと少しの所まで来た。


 剣を持った二人の男女の天使が道を塞ぐ。

 魔力は感じないが、相手が強いのは肌を通して伝わってくる。


「退いてください!」


 魔剣アストラを握りしめ、横に振るう。

 受け止められたらこのまま吹き飛ばすつもりだったが、踏ん張られる。

 ……相手は人の力を越えているようだ。


 使徒ほどの強さではない。しかし、今のままでは容易く倒せる相手ではないのはすぐに分かった。

 ドラゴニュートの人たちは、きっとこの天使に負けたのだ。


 なら、全力を出すだけ。

 神の力を引き出す。

 その衝撃だけで剣を受け止めた天使は大きく後退した。


 服が白いドレスに変化し、人から神の知覚に切り替わる。

 相変わらずこの感覚には慣れない。

 魔剣アストラを左手に持ち替え、天剣アズライールを右手で引き抜く。

 あらゆるものに死を告げるこの剣は、例え神であっても効果がある。

 太陽神の時に実証済みだ。


 襲い掛かってきた天使を天剣アズライールで斬り捨てた。

 神の力があれば敵ではない。

 塵のように霧散していった。

 他の天使たちはアレクシアさんたちが足止めしてくれているので、ここで白い木を切って終わりだ。


 幹の前に立つ。

 ……この状態なら分かる。

 目の前の巨大な白い木も神の領域にあると。


(何の目的で来たのかは分からないけど、ここはあなたを受け入れられない)


 植物に意志があるのかは果てして疑問だったが、全力で双剣を木に切りつける。

 天剣アズライールの効果が発動すれば、この木は死に絶える……はずだった。

 しかし剣が木に触れた瞬間、視界が切り替わる。


「……ここは」


 四方八方全てが白い世界だ。

 まるで果てがない。

 何かをされた? しかし神の力で守りを固めており、それを突破された様子もない。

 もしかしたら、直接触れたことで相手の精神に接触したのだろうか?


 閉じ込められたわけではない。

 ここから出るのは難しくはないと直感的に分かった。

 手には剣が握られたままだ。

 ここが相手の内面世界だというなら、内側から破壊すればいい。


 剣に魔力を集中させ、今まさに斬りかかろうとしたところで声が聞こえてきた。

 正確には、頭の中に思念が声として送られている。


 <―――を>

「なに?」

 <――の生を>


 時間が経つ毎にハッキリと聞こえてくる。


 <永遠の生命と繁栄を>


 気が付くと、私は元の場所に戻っていた。

 天剣アズライールは幹に触れる直前で止まっている。


(今のは何だったの?)


 理解できない。

 だが、背筋が凍るように冷たかった。

 これをこのままにしておいてはいけない。

 神として、人として。

 それは間違いなく本能による判断だった。


 今度こそと天剣アズライールを構え、振り下ろす。

 しかしそれは届かなかった。

 魔石爆弾の火が消え、吹き飛んでいた幹の傷痕から白い根が生えて傷を塞いでしまう。

 足元が再び汚染され、私を閉じ込めるように根が張り巡らされていく。


「下がって!」


 アレクシアさんの声が聞こえる。

 斬っても斬っても根が増殖するように増え続け、私は下がるしかなかった。

 いくら神であっても、もし閉じ込められたら何が起きるか分からない。


 距離をとっても根は増え続ける。

 ようやく収まったと思ったら、増えた根を束ねて周囲へと射出した。

 そのうちの一本がシージへと放たれる。

 止めようと魔剣アストラを投げたが、天使の一人が身代わりとなって妨害したため止められなかった。


 それだけではない。

 残った根の中から、たくさんの天使が姿を現わすのが見えた。

 これは……まずい。


 私の意思を感じ取ったのか、スレイプニールが再び頂上に戻ってきて私たちの服を器用に引っ張り背に乗せて敵から離れる。

 大勢の天使が、感情のない目で私たちを見つめるのが見えた。




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