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そうだ。奴隷を冒険者にしよう  作者: HATI


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第978話 汚染区域

 遠目で見るのがやっとだった汚染地区へあと数分で到着する。

 信じられない速度だ。

 これだけの速度を長時間維持できるのはこの子だけだろう。

 もう少しで全てが白い世界に突入する。

 本来ならここでスレイプニールから降りる予定だったのだけど。


「いいの?」


 この子の思念が伝わってくる。

 私にいいところを見せたいのか、やる気が感じられた。

 アレクシアさんが私の様子に気付いたようだ。


「アズ、どうしたの?」

「このまま突っ込むって言ってます」

「あら」


 いくら元々強い魔物が使徒化したといっても、操られているドラゴニュートが待ち受けている場所に突っ込むのは危険だ。

 それに大きくて的になってしまう。

 魔物なので汚染の心配はないだろうけど……。


「いいじゃない。こいつがやりたいって言ってるなら」

「ここでなら思いっきり暴れられますし」


 シージでは魔防壁が近く、下手に暴れると被害の方が大きいと判断して離れさせた。

 どうやらそれも不満だったようだ。

 うーん。ペットを飼ったことがないのでよく分からないが、飼い主にアピールしたがるものなのかもしれない。


 力強く地面を踏み込む音と共に、スレイプニールの脚が境界を越えて白くなった大地へと侵入する。


 ……この子はすでに魔力だけなら竜並みだ。

 図体の大きさと共に魔力も増えていた。

 その影響なのか、蹴った地面が元の土地に戻っている。


 まるで溶けた雪のようだと思った。

 魔力によって大地を白く染め上げた何かが消えたのだ。


「どう? 何か違和感はある?」

「いつも通りな気がします。空気も特におかしくはないような」

「ちょっと、本気で言ってる?」


 私とアレクシアさんが話していると、フィンが苦々しい顔になっていた。

 ペッと口の中から何かを吐きだす。

 白い何かが混ざっていた。


「そういやあんたたちは魔力がとんでもなく多いんだった」

「フィンだって標準以上はあるでしょう」

「その程度じゃ影響が出るってことなんでしょう」


 私には分からないが、フィンにはなにか影響が出ているようだった。


「今からでも引き返して」

「ふざけんじゃないわよ。足手まといになるつもりはないわ」


 フィンの周囲に風が吹く。

 すると、表情も和らいでいった。


「精霊の力も魔力が元になっているから効果があるみたい。まあ手前で分かってよかったわ」

「魔力で足切りされてるってことよね。この土地で生きていける生物なんてほとんどいないんじゃないかしら」

「あるいは、それが目的なのかもしれません」


 ここに足を踏み入れた獣人は皆死んだという。

 その原因はフィンが吐きだした白い何かと見て間違いない。

 以前森で見た瘴気の毒を思い出す。

 あれも土地を汚して生物が住めない場所に作り替えていた。


 周辺を見る。

 動物も魔物も一切見当たらない。

 植物も、白い木以外草すら生えていないようだ。


「ずいぶんと広がったようだね。前はもっと手前だったのに」

「景色はこんな感じでしたか?」

「ああ。不気味なほどそっくりさ。自分がどこにいるのか分からなくなりそうだよ」


 ドラゴニュートの襲撃はまだこない。

 タリアさんが言うには目的地はまだ先らしいので、そこで待ち構えているのだろう。


 振り返るとスレイプニールによる足跡も、ゆっくりとまた白く染まっていった。

 まるで外部からの痕跡を拒むかのように。


「小さいが、山が見えるだろう? 三つほど連なってる。あれの真ん中が墜落した場所だ」

「あそこですか」


 タリアさんの指摘した山を見る。

 かなり高い山で、先端は雲に触れそうだ。

 ふと気になったことがあったのでタリアさんに聞いてみる。


「山の天辺に何か生えてませんか?」

「いや、何もなかったはずだけど……。なんだいありゃあ」


 見間違いではなかったようだ。

 雲に遮られて見えにくいが、山の天辺に巨大な木が生えている。

 幹の直径がどれだけあるのか分からない。

 なんせ、山の一部といっていいほどのサイズだ。


「あんな高い場所で木が成長するわけない。おかしいでしょう」

「アレがそうなのかもね」


 今回の標的。

 空から落下してきた何か。

 短期間でこれだけ成長したというのだろうか。

 このまま放っておけば、大陸中に根を張るのではないかと思う。

 それが冗談ではすまないのは、ここにいる誰もが感じていることだ。


「ハッ。木が相手ならちょうどいいじゃないか。爆破した後に私の火で燃やしてやるさ」


 タリアさんの口の端から火が迸る。

 近寄れば近寄るほど、非現実的なスケールとしか思えない。

 もうじき山に到着する。

 スレイプニールは山であっても駆け上ることができるが、快進撃はそこまで続かなかった。


「出てきたようです」


 ルーケさんが立ち上がり戦闘態勢に入る。

 山の麓で、6人のドラゴニュートが待ち構えていた。

 翼を広げ、空を飛んで一目散に私たちへと突撃してくる。

 話し合いは……血走った目を見てやはり無理だと諦めた。


「ひとまず倒しながら進みます! 対処が難しくなったらタリアさんは爆弾を標的に運んでください」

「あいよ」


 作戦の性質上、敵は少なければ少ない方がいい。

 相手が一斉に襲ってきたならともかく、小出しにくるなら倒していった方がいい。

 魔剣アストラを鞘から抜き、魔力を纏わせる。

 それから思いっきり力を込めて投擲した。

 心臓を貫き、塵となって倒したことを確認する。

 まずは一人。

 魔剣アストラの能力を活かし、すぐに手元に戻す。


「嬢ちゃん、おっかないね……」

「そうですか?」


 味方に怖がられてしまった。

 足を止めて、残りの5人と戦う。

 スレイプニールも戦闘に参加した。


 ……あの赤髪の少女や老人は恐らく、ドラゴニュートの中でも強かったのだろう。

 アレクシアさんたちが協力して一人倒し、私が二人仕留め、タリアさんとスレイプニールが残りの二人を倒した。

 アストラを振り、ついた血を払う。


 強敵ではあったものの、攻撃は単調で御しやすかった。


(なんでまとめてこなかったんだろう)


 もし残り全員でこられれば、こうはいかなかった。

 精鋭がいなくなったのなら、小分けに来る意味はないはずだ。




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