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そうだ。奴隷を冒険者にしよう  作者: HATI


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第977話 気配

 夜の間も襲撃はなく、十分な休息を得ることができた。

 ルーケはミーリアと添い寝したのがよかったのか、元通りになっている。

 作戦の遂行は困難が予想されるので、アズたちはしっかりとした冒険者装備に身を包む。


「いつでも行けます」

「私もオッケー」


 アズとフィンの準備が終わった。

 この二人は俊敏さが大切なのであまりゴチャゴチャした装備は身につけない。

 ……いや、フィンは見えないだけで暗器などをたくさん隠しているんだった。

 アズは短めのズボンなど動きやすい服装をして、後は剣を二本腰からベルトでぶら下げているだけだ。

 そもそも本気を出すとあの白いドレスのような服になるため、あまり意味がないのだろう。


「こっちも準備は終わったわ。といってもいつもとたいして変わらないけど」

「アレクシアちゃんのドレス姿も板につきましたねー」

「うるさいわね」


 アレクシアとエルザの準備も終わったようだ。

 アレクシアの髪色に合わせたオレンジ色で、スリットの入ったドレスを身に着け戦斧を背負っている。

 エルザもメイスを装備し、司祭服を着ていた。


 うちは盾役がいないので、全体的に軽装だ。

 ルーケはメイド服だし。

 特注で下手な鎧よりも頑丈ではあるのだが。


 ミーリアは留守番だ。

 魔力を外に出せない獣人は、汚染された区域に足を踏み入れると死ぬ。

 ミーリアも同じ結末になるだろう。

 俺もさして違いはない。


 ノラスに呼ばれて、会議室のような場所に移動する。

 タリアもそこにいた。

 身に着けているのは、やや派手なドレスっぽい服だった。

 ドレスと違うのは、タスキのようなものを何枚か肩から腰にかけて吊るしている。


「これはドラゴニュートに伝わる衣装さ」


 俺の視線に気づいたのだろう。

 胸を張り、タリアが服を見せてくれた。

 ただの服ではない。

 迸るほどの魔力がドレスやタスキから感じられる。


「特別な方法で編んであるんだ。私たちの魔力に応じて補助してくれる」

「戦闘用の服というわけですか」

「いざという時の為のね。まさかこういう使い方になるとは思わなかったけど」


 魔石爆弾の時も思ったが、こっちの大陸は加工技術が発展している。

 獣人たちは魔法を使えず、魔道具も手に入りにくい。

 その代わり魔防壁の材料など素材が手に入ったからだと思われる。

 うーん、欲しい。

 絶対に高く売れる。


 もし無事にことが終わったら交渉しよう。

 一つでも持ち帰れたら解析することもできるし。


「魔石爆弾は全てタリアに預けます。ただし、起爆用の魔道具は予備をアズさんたちにも渡します」

「いざという時は頼むよ」


 スイッチが二つある魔道具をアズが預かる。

 同時に数秒ほど押すと魔石爆弾が爆発する仕組みになっている様だ。


「私だって死ぬ気はないからね。さっさと済ませて、勝利の美酒を飲む予定なんだ」

「それは心強い。最高の酒を用意して待っています」


 ノラスとタリアはまるで笑い話のように話す。

 だが、その笑顔がぎこちないのはすぐに分かった。

 死を恐れない者はいない。

 名誉のために死ぬ戦士だって、勇気を奮わせて死の恐怖を乗り越えているだけだ。


 なんとか全員無事に帰ってきてくれたらいいのだが。


 シージの外に出る。

 兵士たちが見送りに出てくれた。

 彼らも参加したがっていたが、汚染区域ではむしろ足手まといになってしまう。


 アズが使徒スレイプニールを呼ぶと、遠くから走ってくる音が聞こえる。

 呼び出してそれほど間を開けずに戻ってきた。

 ……また一回り大きくなっている。


 巨大な馬であるスレイプニールを見て兵士たちは驚いていた。

 タリアも唖然としている。


「馬の魔物で大きいやつは見たことがあるけど、ここまでのやつは初めて見たよ……」

「安心してください。暴れたりはしませんから」

「あっちの大陸じゃ魔物も飼いならしてるのかい?」

「まさか。魔物は家畜にできません。こいつが特殊なだけです」


 まさかアズの眷属にしたとは言えないしな。


「頼もしいということにしておきましょう。では、皆さんシージの未来をお願いします」

「分かってる。任せておきな」

「ではご主人様。行ってきます。いい報告を待っていてください」


 スレイプニールに乗り込み、アズたちが出発した。

 ミーリアと共に、全員の無事をここから祈るしかない。

 どれだけ強くても、なにが起きるか分からないのだから。


 スレイプニールの脚は速く、すぐに姿が小さくなって見えなくなってしまった。



「はは、こりゃ凄い。私が空を飛ぶよりも早く到着するんじゃないか?」

「図体が大きくなったからか、もう足場も気にしてないわね」


 スレイプニールの背の上で話す。

 乗り心地は思ったほど悪くなく、それでいて速い。

 タリアも飛ぶ魔力を節約できたからか、瞑想しながら軽口を叩いていた。


 ギュッと剣の柄を掴む。

 目的地に近づくと、だんだん相手の気配がハッキリしてきた。

 間違いない。いる。


 太陽神とは別の、しかしどこか似ている気配が感じられる。

 規模は太陽神の方が大きかったように思う。

 太陽神はずっと昔から力を蓄えてきたが、こっちの神は墜落してからそこまで長く時間を経たわけじゃない。

 どのようにして力を蓄えているのか分からないが、きっと万全じゃないんだ。

 ドラゴニュートを操っているのも、本体はじっとして力を温存したいから。


 だとすれば、勝ち目は十分にある。

 私のご主人様に及ぶ危険は、全て排除しなければならない。

 そして私にはそれができる力がある。

 ならば、後はやるだけ。


「あれがそうだよ。元々は緑豊かな山々だったんだけどね」


 タリアが指を指す。

 その方角を見ると、くっきりとした境目があった。

 緑や土色の平野と、全てが白く染まってしまった土地。

 まるで世界が変わってしまったかのようだ。


 白い景色は荘厳な趣があるが、ここまで白く染まっていると不気味さの方が勝る。


 ところどころに長い杭が打ち込まれていた。

 ノラスさんが言っていた浸食を防ぐアンカーだろう。

 これが浸食を抑えているという話だったが、杭も白く変色しており限界を迎えている。


(時間がない)


 アンカーがダメになれば、汚染は拡大する。

 そうなれば、奥地に侵入することはどんどん難しくなり相手は力を蓄えやすくなる。

 今が絶好の、そして最後のチャンスなのは間違いない。



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