「Sky」をプレイする室生家の人々《遥かなる草原連峰》
時計の針は午後三時を指している。 俺は豆から挽いたコーヒーを啜りつつ、一人物思いに耽っていた。
――ハザマと関わると、ろくなことがない。
『Sky』のデイリークエストである『フレンドと手をつなぐ』これを焦ってこなそうとしたハザマが、
「御影ーッ! 私と手を繋いでくれ、頼むっ!!」
……と大声で叫んだおかげで、屋敷の使用人たちにBL疑惑を持たれてしまった。
ちゃんと否定はしたのだが、使用人の中の腐女子たちへ妄想のガソリンを注いでしまったようだ。
すでに同人誌まで描かれ、室生家内でこっそり売買されているのを知り、俺は深いショックを受けていた。
そろそろ四時になるかという頃。そーっと襖が開き、ハザマが入って来て言った。
「今日も一緒にプレイしよう」
「やだね。俺は初音としたい」
ハザマはめげずに食い下がってくる。
「じゃあ、また三人で仲良くやろう。なぁ、この間三人でプレイしていた時、アレが飛び散っただろ? 回収しに行くから、協力してくれないか。ここなんだ」
――あぁ、「訴えかける親」を解放している時に暗黒龍にどつかれた時のことか……。
ハザマに画面の地図を見せてもらうと、草原連峰の山頂あたりに光の子が出現しているようだ。八枚も散らしたアイツに、少しだけ同情してしまう。
「これは……ここまで行くには一人では無理だな」
「だろ? おんぶしてくれ」と、ヤツがお願いしてくる。
「どっちが上だ? 俺は下がいいと思うけどな」
俺たちは草原連峰へと向かい、強風が吹き荒れるなか互いの星の子を飛ばした。しかし、途中で激しくエナジーを消耗してしまった。
「ダメだ、エネルギー切れだ!」 俺が絶望して言うと、おんぶされているハザマが
「白いろうそくでなんとかするから、がんばれ! もう少しで行ける!!」
その時。 襖の外からゴホンッ、と咳払いが聞こえ、惟光の冷ややかな声が響いた。
「……おそらくゲームをされているとお察しいたしますが。お二人の会話が、大変誤解を招きます」
――ゲームをしている絵面が見えないせいで、ますます腐女子どもの栄養分になってしまったようだ……。
お前ら、同人誌の副業で二十万超えたら、ちゃんと確定申告するんだぞ……。




