《最終話》室生一族に出回る同人誌
結界師の朝は早い。
時計の針は六時を指している。
豆を挽き、サイフォン式で淹れたマンデリンを、腐女子である使用人の藤城に手渡しつつ、俺は探りを入れてみた。
なんでも、俺とハザマをモデルにしたBL漫画が同人誌として室生の親族内で出回っているという噂があり、一体どんな風に描かれているのか気になっていたからだ。
「なぁ、藤城。別に責めるつもりで聞いているわけじゃないんだが……どんな同人誌を作ってるんだ? 一冊売ってくれないか?」
「み、御影様! この度は許可も取らずに勝手に漫画のモデルにしてしまい、大変申し訳ありませんでした! あの……実はご好評につき売り切れてしまったのです。」
(なにぃ?室生家、腐女子ばっかりなのかよ?)
「婚約者の初音様が一冊お買い上げになりましたので、そちらを閲覧させてもらってはいかがでしょうか?」
――あいつも腐女子だったのかよ?腐女子率、たかっ!――
「初音が買っているのか! 知らなかった……」
*****
俺はさっそく初音に連絡を取り、その同人誌を持ってきてもらった。
「結構、分厚いな……そんな一冊描けるほどのエピソードなんてあったっけか?」
初音が同人誌の目次を開きながら説明してくれた。 「六人の方が、それぞれ匿名で原稿を寄稿されているんです」
「六人もいるのかよ?」
驚いて貸してもらった同人誌をパラパラとめくっていくと、巻末に奇妙な作品を見つけた。
「なんだ? 最後の方に、なろう系の題名みたいな漫画があるぞ?」なになに……。
『恋人の代わりに死んで兄の体に転生したら、室生家の巫覡になっていました』
――Outstanding Blue 著
これ、「Outstanding = 秀でる」「Blue = 青」という意味だよな?
……あっ。
「これ描いたの、あいつじゃねーか?」
俺が呆れて初音に聞くと、彼女は苦笑いして頷いた。
「ハザマ様は、いちいち室生家の人達にご自身の事情を説明するのが面倒くさいとのことで……漫画を通して、ご自分のことを知ってもらおうとしたみたいです」
あいつ、芸大で助手をしていただけあって、無駄に絵が上手い。 内容はBL漫画ではなかったが、真実はかなり自分都合にねじ曲げられていた。
内容はこうだ。
『某芸術大学の助手をしていた自分は、三人の女子生徒から熱烈に取り合いされていたモテ男だった。
嫉妬に狂った一人の女子生徒が、ライバルを殺そうとしている現場に遭遇し、身代わりとしてナイフで刺されて死んでしまう。
愛する恋人に再会するため、自我のない兄の体に転生したまではいいが、室生家の巫覡になってしまった。
そうして奮闘しているうちに、恋人は悪辣な手段を使った従兄弟(俺のことか!)に奪われてしまい……』
「ほう? 大変な感動巨編だな」
とりあえず、ハザマが来たら問い詰めよう。
正座させて、小一時間ぐらい問い詰めてやる。
「Sky」をプレイする室生家の人々 < 完 >




