( ΦωΦ )#4 やっぱ猫 〜ルナ視点〜
ルナは、みことが連れていかれそうな夢をたまに見る。
細い腕を掴まれて、怖そうに揺れた瞳。
助けたあと、強がっていても、震えていた体。
今回は間に合った。
でも、もし間に合わなかったら?
そう考えるだけで、胸の奥がざわついた。
だから最近は、ずっと近くにいる。
学校の送り迎えもするし、家では隣に座る。
「ルナ、暑い」
そう言われても離れたくない。
「……や」
みことは呆れた顔をする。
でも、本気で嫌がらない。
その優しさに甘えてる自覚くらい、俺にもある。
「……みこといなくなったら嫌だから」
ぽつりと言った本音に、みことは赤くなって黙った。
その顔を見て、
あぁ、好きだ。
と、また強く思った。
そして、その日の夜だった。
みことがお風呂から出るのを待ってテレビを見ていたら、急に体の奥が熱くなった。と思った瞬間、視界がぐるりと回った。
「……にゃ?」
低く出るはずの声が、猫の鳴き声になる。
床が近い。
いや、小さい。
久々に戻った。
ルナは耳をぴくりと動かしながら、自分の前足を見た。完全に猫だった。
「ルナぁぁぁ!?」
風呂上がりのみことが慌てて駆け寄ってくる。
そのまま抱き上げられた。
……やばい。
近い。
柔らかい。
…いい匂い。
「可愛い……」
頭を撫でられる。
悔しいことに喉が勝手に鳴った。
「うにゃ……」
人間なら絶対こんな声出さないのに。
でも、みことの手が気持ちよすぎた。
やっぱり俺はみことが大好きだ。
猫の姿に戻って数日。
俺はあることに気付いた。
猫だと、みことの警戒が薄い。
抱きついても怒られにくい。
胸に顔を埋めても許される。
膝の上にも乗れる。
最高だった。
「にゃー」
「だから近いって……」
胸元へ顔を押し付ける。
あったかい。
みことの鼓動が速くなるのを聞くと、もっと嬉しくなる。
だからつい、いたずらしたくなった。
頬へちゅ、と口付ける。
猫のままのため、口付けとは程遠かったけと、まあいいや。
「ルナ!?」
真っ赤になるみこと。
かわいい。
さらに調子に乗って、ぺろっと唇を舐めてみた。
「っ……!?」
固まるみこと。
俺は目を細めた。
完全に分かってやってるし、猫の姿なのを利用してる自覚もある。
でも仕方ない。
だってみことが可愛すぎる。
〜夜〜
当然のように布団へ入る。
みことの胸元に丸くなると、少ししてからため息が落ちてきた。
「……だめだこれ」
その声に、俺は薄く目を開ける。
みことは顔が赤い。
たぶんだけど、俺の人間の姿を思い出してる。
嬉しかった。
猫でも、ちゃんと意識してくれてる。
俺はそっとみことの唇を見た。
柔らかそう。
……ちょっとだけ。
少しだけなら。
眠そうだし、バレないかもしれない。
そう思って近づき、口付けしてみる。
俺はそっと離れようとした。
でも、次の瞬間みことが目を開けた。
「……っ!?」
しまった。
「にゃ」
とりあえずごまかす。
「待って今の絶対わざとでしょ!!」
怒ってる。
でも本気じゃないな。
顔が真っ赤だ。
それすらも可愛い。
嬉しくなって、喉がゴロゴロ鳴る。
みことは顔を手で隠してしまった。
俺はそんな姿を見ながら思った。
……早く人間姿に戻りたい。
戻って、ちゃんと抱きしめたい。
そういえば俺ってどうして人間になれたんだろう…?まあいいや。
猫のまま甘やかされるのも、悪くないな。
そんなことを考えながら、ルナはみことの腕へ頭を擦り寄せた。




