5、バドミントン部
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せっかくバドミントン部目当てに入学したんだし。見学だけでも…………
部員がみんな話にならないほどヤンキーだったらどうしよう……でも、バドミントン部に入らなかったらここに来た意味がないし……
勇気を出して放課後、バドミントン部の部室を訪れた。
「すみません……バドミントン部の見学を……」
ノックをして待つと、しばらくして部室のドアが開いた。どんなヤンキーが出て来るかと思いきや、意外と普通の男子が1人出て来た。見た目は普通の先輩だった。
その先輩は部室のドアを抑えながら、珍しい物を見るような目で私を見た。そして、突然失礼な質問をしてきた。
「君は……女装家なの?」
「いえ。違います」
稲高は自由な校風……と言うより、自由すぎる校風で、制服はあるものの……特に服装についての校則は無い。いや、多分あるんだろうけど……ここではもはやあって無いようなもの。
「おーい!何も知らない新入生が来たぞ~!しかも女子!」
「女子!?バーカお前それどうせ女装だろ?」
ねぇ、私そんなに女装に見えます?軽~く心をえぐられるんですけど?確かに短めのショートヘアーだけど……まさか女子の人数少なさ過ぎて、幻覚に見えるのかな?
「え?マジ?モノホン!?」
その驚きに、少しイラっとした。
「入部希望なんですけど、少し見学を……」
私の言葉を遮るように、先輩部員達は矢継ぎ早に言った。
「悪い事は言わない!命が惜しかったらバドミントンは諦めた方がいい!」
はぁ?
「ここをどこだと思ってんだ?稲高だぞ!?稲高バドミントン部だぞ!?」
「稲高バドミントン部がなんて言われてるか知ってるか?4Kだぞ!?臭い!汚い!キツイ!邦夫がいる!」
4K!?増えてる!Kが1つ増えてる!!
でも、最後に必ず邦夫がついて来る……。何なの!?うちの生徒会長の存在って!!
「でも、どうしてもって言うなら、はい。これ」
私は先輩から、バドミントンのラケットを手渡されると思って手を差し出した。
「え……?これ、何ですか?」
しかし、手渡されたのは……一本のハエ叩き。
「バドミントン部は、必然的に害虫殲滅委員会に入る事になるんだ」
「ようこそ。バドミントン部へ」
「ちょ、ちょっと待って!!」
それって……それって……
バドミントン部=害虫殲滅委員会って事!?
「あ、でもさ、別に君は女子だから遠くで見てればいいんじゃないかな?」
遠くで見てる……?
私は今までずっと遠くで見てた。やりたい事がやれずにずっと。そんなの……もう嫌だ!!やりたい事にリスクがあるならそれも背負うまで!!
「…………やります!それがバドミントン部に入る条件なら、殲滅委員会やります!」
私がはっきりとそうお伝えすると、先輩達は何故か泣き出した。
「知らないって幸せだな……」
「えぇええええ!?」
そこへ、早乙女部長らしき人がやって来た。パンフレットにあった女顔の先輩だった。写真と違うのは、男子の制服姿で髪が後ろで1つに結われていた。それでも女子にしか見えない。
「なんだ?騒がしいな」
「部長!お疲れ様です!新入生が入部希望に来ました」
すると、早乙女部長は私を見て言った。
「珍しいな。女装家か」
いやだから……
「いいだろう。それなら入部試験を受けてもらう」
「入部試験!?部長!そんなもの必要ですか?ただでさえ人手が足りないのに」
「足手まといが増えれば余計に仕事が増えるぞ?」
その一言にみんな黙ってしまった。それほど過酷なんだ…………
バドミントン部の部長が提示する入部試験と言うのは『意識を失わずに放課後まで生徒会長の付近にいられるかどうか』
え……ナニソレ怖過ぎる。
ハエタタキを片手に、案内されたのは、生徒会会議室。
そこにいたのが、稲高最強の番長にして生徒会長。
『枝本 邦夫』
生徒会長は、会議室の椅子にどっかりと座り机の上に足を乗せて寝ていた。
意外と綺麗な寝顔……。その寝顔は、屈託の無い男の子の顔だった。あれが猛獣のような顔になるんだから恐ろしい……
しばらくすると、生徒会長は目を覚ますと突然近くにいた先輩の胸ぐらを掴んだ。
「何だ!?テメェ!!」
「ギャー!起こしてごめんなさい!殲滅委員です!」
「何だ……」
そう言って、生徒会長は掴んだ先輩の胸ぐらを放した。
「枝本、いい加減殲滅委員の顔くらい覚えろ」
「そんなもん無理に決まってんだろ?」
すると、生徒会長はまじまじと私を見た。
その顔に睨まれると……
超絶怖い。恐怖で全然体が動かない。
「何だ?何も喋らねーな」
恐怖で声が出なくて、私は口をパクパクさせた。
「バドミントン部に入部希望の変わり者だ」
早乙女部長は私の事を変わり者だと生徒会長に紹介した。そんな事がどうでも良くなるほど、事態は一変した。
「あ、蚊だ!蚊がいる!!うわぁああああ!!」
「何をボケッとしている!害虫退治だぞ!」
みんなはハエタタキを振り回して蚊を退治しようとした。しかし、みんなは生徒会長になぎ倒され、私の目の前に先輩が飛んで来た。
その先輩に当たった衝撃で、ドアに背中を打ち付けた。
その衝撃に、意識が飛んだ。




