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4、処世術?

4、


前略、お母さん様。高校生活は苦難の連続でまだまだ慣れません。色々あるけど、中でも……


『てめぇ何見てんだよ?あ?』


別に見てもいないのに、廊下を歩いているとそう難癖をつけられる。教室で未来ちゃんに話したら、それは稲高あるあるらしい。


「あれ、困るよね~!」

「こっちは本当に見て無いのに……」

「逆に、こっちを見ろ!に聞こえて来るよね!」


確かに……。


未来ちゃんは名案でしょ?と言わんばかりにその対処方法を提案した。


「だから私考えたんだけど、何見てんだよ?って言われたら、とりあえずどこか誉めるの!髪型がカッコいいなって思って見ちゃいました、すみませんって」

「なるほど!その作戦いいね!」


私達がそんな話をしていると、隣の男子が口を挟んで来た。


「それじゃ甘い」

「は?」

「髪型とか誉めた日には、逆に目をつけられて、延々と髪型のこだわりについて話を聞かされる事になるぞ?」


なるほど…………


「つかず、離れず。これ基本」

「そうそう。そこはすみませんで押しきれ!」


この学校には、ヤンキーとそうじゃない人がいる。私達普通科には比較的そうじゃない人達が多いものの、仏教科と工学科と農業科に至ってはほぼ全員じゃないかと言われている。


寮に入っている人の多くもほぼヤンキーで、極稀にいるそうじゃない人々は、日々肩身の狭い思いをしているらしい。そのせいか、なかなかの処世術の持ち主もいるようだった。


「あ、俺、野口」

「俺は長谷川」


私の右隣が野口、前が長谷川。そのうちの野口は寮で暮らしているらしい。


「新川なんかまだマシだよ、俺達はまるで監獄だよ」

「じゃあ、何でここ来たの?」


何が悲しくて、普通科なのに普通じゃないこの学校を選んだの……?


「一葉、知らないの?稲高は運動部はどこも強くて、有名アスリートも輩出してるんだよ?まぁ、悪い噂が多過ぎてそっちは完全に薄れてるけど……」

「え、そうなの!?」


どうやら、真面目にスポーツをやっているとあまり絡まれたりしないらしい。確かに、変わったカリキュラムだとは思ってた。やけに選択授業が多い。


「ほぼ1日練習できるのはこの学校ぐらいなもんだからな~」

「え?でも授業……」

「だって、選択体育は自分の好きなスポーツやっていいんだよ?」


それって……ほぼ授業が部活じゃん!!


「運動やらない人は選択体育の時間自習でもいいんだよね~!そこはすごくいいよね~!」


それって放置じゃない?果たして自習で本当に勉強するのかが疑問なんだけど……


その自主性はごく稀に天才を生み出すらしい。確かに、自分のペースでやりたい事をやる人にはもってこいの環境かもしれない。


という事は、バドミントン部もきっとそこそこ強いはず。


「私、バドミントン部に入ろうと思ってるんだけど、練習キツイかな?」


そうなると俄然やる気が沸いて来た!高校こそはバドミントン部に!


しかし、みんなの反応は予想に反して、驚愕していた。


「バドミントン部!?お前、ここのバドミントン部がどんな所か知ってて来たんじゃないのか?!」

「え?何?知らない……けど……」


周りの男子の顔がひきつっていた。すると、未来ちゃんが冷静に説明してくれた。


「一葉、基本的に稲高には男子の運動部しか無いんだよ?知らなかったの?」


し……知りませんでした……。


「でもでもでも!ここ、パンフレット!この人女の人だよね?だから、女子も混ざってやれるって事だよね?」


私はパンフレットに乗っていた髪の長めの女の人を指差した。それを見た男子がさらに驚愕していた。


「はぁ?それ、副会長だぞ?早乙女さんを女とか言ってみろ?お前、一瞬で消されるぞ!?なんたって早乙女さんは稲高のNo.2なんだからな?」

「あの人がいなかったら確実に早乙女さんが生徒会長って話だよ」


あの人……?


「稲高最強の男、枝本 邦夫」

「多分、あの人に勝てる人はいない」

「あれは化け物だな」


ちょ、ちょっと待って?ここの学校、本当に強さで生徒会長が決まるの?


いや、そこじゃない!!それって、男子しか部活に入れないって事?


「じゃあ、私、バドミントン部入れないの!?」

「一葉、落ち着いて」

「まぁ、入れなくは無いだろうけど……お前が入りたいと思えばの話じゃね?」


私が入りたいと思えばの話?それ、どうゆう意味?


全校集会や寮での出来事が衝撃的すぎて、この時はまだ何も知らなかった。稲高バドミントン部の本当の姿を。


その稲高のNo.2、副会長の所属するバドミントン部の部員は現在3人。その時点でもはや部活として成り立ってない。


おっかしーな?パンフレットの写真では15人くらいいるのに……


「その写真、去年のでしょ?これほとんど卒業した3年生じゃないの?」

「あとは今年になってやめたか……」

「このままじゃ廃部!?」


嘘でしょ!?私、何のためにここに来たの!?


「いや、廃部にはならないだろ?なぁ?」

「あぁ、バドミントン部は廃部にはならないな」


何故……!?廃部にならないその理由は?


嫌な予感しかしなかった。きっと、きっと……


ヤンキーばっかりなんだ!!いや、ヤンキーは部活やるイメージが無い。それでもあきらめきれない。男子の中でもかまわない。それでも部活に入りたい!


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