22、ラブレター
22
このピンチ……どう乗り切ればいいの?
「俺は新川がそんな奴じゃないとは思ってるが……それは本当に喘息の薬か?」
それどうゆう意味!?
「枝本さん、2年の教室に向かいましょう。少し息も落ち着いて来ました」
「それは答えにはなっていない」
するとそこへ、1年A組が珍しく教科書を取りにやって来た。未来ちゃんが私に気がついて話しかけてきた。
「一葉ちゃんどうしたの?あれ?生徒会長も」
「あ、あのね、薬!この薬取りに来たの」
「発作出たの?大丈夫?」
枝本さんを背に、こっそりと未来ちゃんに伝えた。
「どうしたの?」
「薬のポーチにアレが入ってて、アレを見られそうになっちゃって」
私は手で四角い形を型どった。
生理用ナプキンなんて枝本さんに見られたら死ねる!!しかも女だってバレる!!バレたら殺される!!
「あ~アレ?それはまずいね」
どう誤魔化そうかと無い知恵を振り絞った。
「えーと、そろそろ発作も収まって来たので2年生の教室へ行きましょうか!」
ここはスルーしかない!!スルーしか思い付かない!!
「待て。アレって何だ?何を隠しているんだ?」
ひぃいいいいい!話全部聞こえてた!!ど、どうしよう…………
すると、未来ちゃんが枝本さんにハッキリと言った。
「生徒会長、新川さんだって見られたく無いものくらいありますよ。例えば……例えば……ラブレターとか?」
「はぁ?ラブレター!?」
それ……そんな事言うと枝本さんドン引きするから~!
でも、未来ちゃんのそのとっさの嘘は枝本さんに効果的だった。
「そうか……それは……」
今何を思いました?!何か言いたそうな顔してますよね?
せっかく未来ちゃんが作ってくれた突破口に、私は「違います」とは言えず。枝本さんはそれ以上深くは訊いて来なかった。
「てっきりヤバい薬を使っているんじゃないかと心配になった」
「そんな訳無いじゃないですか!」
そりゃ薬の副作用で尋常じゃない感じにはなるけど……枝本さんにはヤバい薬に見えるって事だよね……
そんな事があった後、やっぱり嘘には裏付けが必要だという話になって何故かラブレターを書く事になっ。
ラブレターって……誰に?
私は教室でラブレターに悩んでいると、みんなは口々に言った。
「そりゃ、生徒会長でしょ」
「野口は~?」
「いやいや、そこは赤城先輩じゃない?」
みんな……あからさまに自分の推しに書かせようとするの止めてくれない?
「ラブレターなんて本当に必要?」
「必要だよ!だってパンツ見られるのか中2の日記見られるかの究極の選択だよ!」
「どっちも嫌だよ!!」
できるならどっちも見られたく無い。冷静に考えて、今後ナプキンの代わりにラブレター必要になる時なんて来る?普通来ないんじゃない?
「無理だよ~ラブレターなんて書けないよ~!」
「そんな事無いよ!一葉ちゃんならできる!!」
「一葉やればできる子!」
そんな応援間違ってるから!!
「じゃ、私が代わりに書いてあげよっか?」
意外にも姫島さんがそんな提案をして来た。姫島さんは私の持っていたシャーペンを奪うと、紙にスラスラと一言書いた。一言だけ?
「あなたが好きです。ほらこれでよし!シンプルかつ明確!」
「それは確かにそうだけど……」
そんなにシンプルなラブレターでいいなら、わざわざ用意する必要があった?
「あとは、これを誰に渡すかだよね~!」
「いや、渡さないよ!渡す人がいないよ!」
そもそも渡すつもりで書いて無いよね?そうゆう話だったよね?
いつの間にか、私がラブレターを贈る話になっていた。それ違う!こんなの誰にも渡せないよ!
私は誰にも渡す事の無いラブレターをロッカーに入れて保管した。それから連休に入り、ラブレターの事もすっかり忘れていた。
連休は、1日目は課題をこなしたり実家へ帰る支度をして、2日目は日帰りで実家と病院へ行き、3日目は殲滅委員の当番で……4日目と5日目の予定は未定だった。連休だというのに学校は、連日練習に明け暮れるアスリート達のために全日解放されていた。
だから3日目の殲滅委員の当番も相変わらず生徒会会議室だった。すると、枝本さんが突然何かを思い出した。
「辞書部屋に忘れた」
辞書?それなら……
「辞書なら私のロッカーに置いてありますよ?取って来ましょうか?」
「飲み物を買いに行くついでに俺も行く」
二人で自動販売機に寄って、私のロッカーの前まで来た。
「そういえば、ラブレターは誰に書いたんだ?」
「はいぃ?」
「この前から気になって仕方がない」
枝本さんが私の書いたラブレターに興味が!?それはもしかして……男に宛てて書いているのかどうか確認したいとか?
「いえ、大したラブレターじゃないので気にしないでください」
「だったら隠す事は無いだろ?」
それは、見せろとおっしゃってます?それは絶対に無理。あんな『あなたが好きです』なんて一言だけのラブレターなんて見せられない!いや、ラブレター自体本来見せられないもの!
枝本さん……他人のラブレターを読むのは、それは悪趣味ですよ?




