12、憂鬱
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ここはまるで無法地帯。でも、ここに来ている人は少なからず各々事情があって、その理由も様々だ。
あれから何度か様々な人に拉致られ、生徒会長がやって来ては暴れるという一連の流れを繰り返していた。すると、ある日先生に注意を受けた。
「新川、このままのペースでサボり続けると、出席日数が足りなくて落第するぞ?」
いや、サボりたくてサボってる訳じゃないし!!それで落第!?めちゃくちゃ理不尽なんだけど!!
留年といえば生徒会長。そういえば、生徒会長はいつも生徒会会議室にいる気がする。あれもサボり?
殲滅委員会の当番の日は、1日生徒会長についてまわる。委員会活動という名目で、その日は特別にサボりにはならないらしい。
あれから虫除けスプレーが使えるようになり、殲滅委員会も少しは出動回数が減った。しばらく稲高に珍しく平穏な日々が続いていた。
そんなある日、いよいよ殲滅委員の当番の日がやってきた。その日は朝から雨が降っていて、少し体調が悪かった。それでも生徒会会議室に行くと、生徒会長は勉強をしていた。
勉強?!嘘……意外。
「おはようございます……」
私は勉強の邪魔にならないように、そっと離れた所で待機した。こうして見ると、生徒会長は全然ヤンキーじゃない。全然普通。普通よりも真面目かも。多分、真面目に虫がトラウマなんだと思う。
だからいつも、1人で生徒会会議室にいる。
それにしたって勉強……?
稲高は通常授業をほとんどやらない。多分やっても意味が無い。そんな中、勉強をやりたい人は独学か、個人的に先生に相談に乗ってもらって勉強を進めるかしかない。そんなんで連帯感や協調性が養われるわけも無く……他人の迷惑無視で誘拐して、生徒会長にボコられる始末。真面目に私の出席日数返して欲しい。
そんな自由な人々が出席日数という単位だけを持って進級してゆく中、生徒会長は何度も留年している。それは多分……虫を理由に暴れるから教室にはいられないから。教室にいなければ、出席日数と単位はもらえない。
「お前、ここわかるか?」
「どこですか?」
生徒会長は国語の問題集を見せて来た。私は生徒会長の前で問題を見させてもらった。
「隣、座れば?」
「あ、はい。じゃあ失礼します」
私は隣に座り、問題をみた。それは、長文の読解の問題だった。
「わかるか?」
「えと、文章をよく読まないと……すぐにはわからないです」
「じゃ、読め」
そう言って問題集を渡された。私は必死に読んで、必死に答えの説明をした。
「あってるかどうかはわかりませんが……」
「わかった。答えの解説読んだけどよく分からなかったが、今のでなんとなくわかった」
良かった。役には立ったのかな?すると、生徒会長は頭をかきながら言った。
「……悪かったな」
「いえ、私もそんなに勉強できる方じゃないのでそんなに力にはなれませんが」
「そうじゃない。虫除けに付き合えって言った事」
意外だった。生徒会長から謝罪の言葉が出るなんて……いや、でも生徒会長は喫煙所でも素直に謝ってた。
「でも、それで生徒会長が虫除けになってるなら……」
だったら別れてくれてもよくない?あと、女扱いして!そんな事より、何度かどつかれてる事の方を根に持ってる私がいる。
「こうして静かに勉強できるのもお前のおかげかもしれない」
「いいえ!とんでもない!それは虫除けスプレーのおかげじゃないですか?お陰様で殲滅委員会の方も落ち着いて来たので、バドミントン部も練習を再開する事になりました!」
「そうか。良かったな」
そう言って、生徒会長は笑顔を向けた。笑顔……?何だか激レアなものを見た感覚になった。
「どうして……そこまでしてあれ、バドミントン?やりたいんだ?」
「それは、憧れ?ですかね?私、喘息で体が弱かったので、母が少し心配性で……スポーツはやらせてもらえなかったんです」
『一葉ちゃんは息が苦しくなっちゃうでしょ?』
それは友達の気遣いの言葉だった。決してハブられた訳じゃない。母からもやってはいけないと言われていたし、冷たい空気を吸うことで発作が起こる可能性もある。理解はできても、納得はいかなかった。
「ずっと窓から友達が楽しそうにバドミントンをやってる姿を見てました。だから、私もあんなふうに思い切り楽しくスポーツやってみたいなぁって……すみません。こんな話つまらないですよね」
「ああ、つまらない」
そうはっきりそう言われると、話したこっちは何だか恥ずかしくなる。
「お前さ、何度も拉致られて稲高から出たいとは思わないのか?」
「思わないですよ。やっと親の束縛から出られたんですから。ここで自由を満喫してます!」
「お前……変わってるな」
生徒会長に言われたく無いような気がする。私の方がよっぽど普通だと思うけど……
雨……憂鬱。
憂鬱なのは、もうすぐGWだという事。その次は梅雨。GWは帰りたくはないけれど……心配性の母の事だから、私が帰らなければこっちに来そうで怖い。
「はぁ…………」
生徒会長と同時にため息をついた。




