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現実は残酷だと云う事


 間違った事だと思っていた事が…。その実、その人間を幸福にしている事もあるんだなって…。


 妹の顔を腹部に貼り付けた蟻は、此方を視ると嬉々とした表情を創った。その愉しげな表情は記憶にある妹の笑顔そのものだった…。


 「私ね…。思ってた事があったの。」

 蟻の腹部に張り付いた妹の顔。その顔からは妹の声で、妹の話し方で言葉が産み堕とされていく。


 「私は間違った事が嫌いだった。お姉ちゃんもそうだよね?」


 此方(こちら)の返答を待たずに妹は、続ける。


 「そもそも。間違った事ってさ。何に対しての間違った事なんだろう…って考えたんだ…。」


 妹は笑顔の儘(まま)だ。


 「法律(ルール)?道徳(モラル)?確かにソレはそうかも知れないけれど…。でもソレは世界を効率良く循環させる為の仕組みの一つでしょ?。この世界を生きやすくする為、何処かの誰かが創ったモノ。確かに正しい事で守らなければ秩序が乱れる…だから必要なモノ。」


 妹の瞳は据わっている。


 「でもさ。ある時、ふと気付いたんだよね…。間違った事だと思っていた事が…。その実、その人間を幸福にしている事もあるんだなって…。」


 だって…。そうでしょ?妹はそう言葉を並べ、続ける…。


 「私を虐めていた奴等は現在(いま)だって人生を謳歌しているんだもの。私を虐めていた時と同じ笑顔で幸せですってSNSに投稿しているんだから…。」


 妹は傍らに転がる蟻の死骸を…。

 笑顔で視ていた。


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