発症。
我儘ですね…。でも嫌いじゃないですよ。そう云うの…。
数えるのも莫迦莫迦しくなる程の蟻の群れが近付いてくる。蟻には詳しくは無いのだが、どうやら視た事の無い種類の蟻にも視える。私の瞳に映る蟻の姿。その腹部は矢張り人の顔だった…。そして…。その顔には見覚えがある…。妹を虐めていた一人だ…。
ニタリと嗤い、歪ませた顔は醜い。
そして…。その醜い顔で…。
醜い言葉を宣う…。
《死んだ方が良いんじゃない?》
《アンタが彼奴の妹なのが悪いのよ。》
《助けてぇって頼んだら?》
そう。私は過去に荒れていた時期があった。気に食わなければ殴り、逆らう者は容赦なく徹底して痛めつけていた…。
けれど何時しか私は更生しようと決意したのだった…。力とは誰かを傷付ける為では無く、誰かを護る為の力なのだと気付いたからだ…。真面目に生きようと努力した…。何を言われようと、何をされようと私は傷付く事は無かった…。
けれど純粋な正義感から虐めを無くそうと行動をした妹には、誰かからの悪意を受け止める程の精神力が無かったのだろう…。
肉体の傷は時が経てば癒える事がある。けれど心に負った傷は、時が経てば経つ程に深くなる事の方が多い…。言葉とは刃に似ている。心に切り込み、傷を付け、時には殺す事もある。【心の殺人】とも云われる程に…。
蟻は…。次のターゲットを私としたみたいだ。醜悪な顔で群れで此方へと近づいてくる。怖くは無かった…。ただ遣る瀬無い想いだけが膨張した。私には力があった筈だ…。それなのに妹を護る事さえ出来なかった…。何故だ…。私は…。力の使い方さえ解らなかったのか…。
殺意を向ける蟻の群れが直前まで迫ってきていても尚…。自問自答していた。そんな私の頭に声が響き渡る…。
【力が欲しいですか?】
『力って何?』
【生き残る為の力ですよ。】
『自分が?』
【自分以外に誰がいるのでしょう?】
『私が…。いや…。俺が護りたいと想った奴、全員を護れる力が欲しい…。』
【我儘ですね…。でも嫌いじゃないですよ。そう云うの…。】
俺は本能で授かった能力を理解した。




