心の牢獄に囚われた獄人
蟻だ…。
妹の身体から異音が鳴り響いた。ギギギッと肋骨が観音開きに開いていき、中央にある心臓がドクンドクンと激しく鼓動する。辺りには真紅の霧が辺りに立ち込め、心臓が右心房と左心房が切り裂かれていき、心臓の内側から慟哭の叫びが聞こえてきたのだった…。
その様な状態になっても妹の寝顔は穏やかで、私の心は何故か落ち着いていた。切り開かれた心臓から聞こえる慟哭は、妹が声なき声で助けを求めている気がした。
自然と妹の方へと歩み寄る。開いた肋骨の奥…。切り開かれた心臓は扉の様な形状となった。その扉がギギギと音を立て開いていく…。私はソレに手を触れる。その瞬間…。純白の閃光に視界を奪われた。反射的に私は目蓋を閉じる。瞳をユックリと開くと…。砂漠の様な世界が広がっていたのだった。
『何なのこれ?』
熱くは無かった。ただ眼前には砂だけが視えた…。妹の声の聞こえる方へ歩く。一歩ずつ前へ前へと歩いていく。どれぐらいの時間、歩いたのだろうか…。砂だらけの世界。遠くに黒い影が現れた…。近付けば近付く程に、その黒い影が明瞭となっていった。蟻だ…。巨大な蟻の群れだ…。
その蟻は隊列を組み規則正しく此方へと向かってくる…。巨大な牙。腹部は異様な迄に膨らんでおり、その腹部は人の顔の様にも視えた。六本の足は人の腕だ。ソレが数十匹の群れで此方へと向かってきている。
近付けば近付く程に…。
ソレが私を狙っているのが解った。




