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突如として世界は変わった。


 温度の無い手。


 東京に隕石が落下した。直径十センチ程度の隕石だった。その隕石の直接的な被害は無かったのだけれど、隕石の内部に存在していた未知のウイルスが被害をもたらした…。後に【KARMAウイルス】と名付けられたウイルスは人の心の闇を媒体にする様で世界中に蔓延するのに然程、時間を要さなかった。私達家族は東京に住んでいたのだから隕石の落下直後には、その異変を間近に視る事となった。


 或る日曜の事。突如として辺り一面が真白な閃光に覆われた。眩い程の光だ。後で知ったのは十分十秒の間、東京は総ての機能を失ったのだそうだ。私は意識を失っていたと思う…。


 目覚めると耳に触れたのは映画やアニメでは聞いた事のある音だった。悲鳴。怒声。破裂音。爆発音。何事かと家から出てみると眼にした光景は地獄絵図の様であった。逃げ惑う人々。破壊尽くされた街並み。そして…御伽噺や神話で語られる様な異形の化物。目醒めても悪夢を視ている様な感覚だった…。通信設備も破壊されたのかスマホは何の意味もなさなくなっている…。そう云った意味では突然に、別の世界に産み墜とされた気分にもなっていた。


 リビングへと戻ると未だに目覚める事の無い両親がいた。少し揺さぶると眼を開いたのだけれど…。現実を識り、呆けている様にも視えた…。


 妹は相も変わらず部屋からは出てこない。私は部屋をノックすると妹の部屋へと入っていった。久方に視る妹の顔は穏やかで、安らかな眠りについていたのだった。ベッドの傍らには中身が少なくなっている睡眠導入薬の瓶が転がっていた…。


 ふぅ。と私は深呼吸する。息を整えて今一度、妹を視た。天使の様に柔らかな表情で、寝息を立てて、妹は眠っていた。私は無意識に妹の手を取る…。けれどその手には温度が無かったのだった…。金属の様に冷たい感触だけが私の手に残った。


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