心を閉ざす。
【正義】とは…。
私には妹がいる。けれど此処数年、真艫に会話をした記憶が無い…。妹は中学へ入って間もなく虐めにあい、それきり部屋から出てこなくなったからだ。私は顔を真艫に視る事さえ無かったかの様に思う。
完全に【心を閉ざした。】
父親にも母親にも。
そして…私にさえも…。
事の発端は妹が中学に入学した頃、現在から九年前の事である。妹である翠は正義感が強い子であった。強すぎる正義感は時に、周囲からの反感を買う。何故なら人間とは心の安寧を求めるからである。そして…心の安寧の殆どは多数決で決まる事が多々あるからだ。例えソレが正しい事である事とは別の事であろうとも…。
妹は虐められていた子を救った。ソレが妹にとっての地獄の始まりだったのだ。妹は心の優しい子であった。そして…間違っている事を赦す事が出来ない【正義感】の持ち主でもあった。虐めの首謀者は人心掌握が得意であったのだろう。要は数が揃っていたと云う事だ。多勢に無勢…。【正義】とは数の多い方の思想が反映される事が多々ある。だからこそ…。【虐めを無くそうとした妹に【正義】は微笑む事は無かった。】
虐めの首謀者は次のターゲットを妹に選んだ。【虐めを無くそうとした妹】は彼等の心の安寧に反する行為をしたからだ。
でも妹は虐めに屈し、部屋に引き籠もった訳では無い。【己の信じていた正義】が崩れ去っていったからである。【己の信じていた正義】に疑念を抱いたからこそ…。妹は壊れてしまったのだ。




