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ファラリスの雄牛


 好きにして良いよ。アルルカン。


 僕は【鏡面世界】を解除する。


 「もう一度、云いますよ。貴方では僕に傷を付けられません。ソレでも…僕に関わりたいのですか?逃げるのなら。見逃しますけど…。」


 その言葉を聴いても尚、女性は何も云わずに僕に斬り掛かったのだった。


 はぁ。と溜息を吐く。


 「警告はしましたよ。いのは貴方で僕は何もくはないですから。」


 『お兄ちゃん。止めて…。』

 『何で?警告はしたよ。』

 『アレは使っちゃ駄目…。』

 『もう遅いよ…。』


 【ハウス オブ トーチャー】


 僕は今一度、【僕の咎】の名を呼んだ。


 道化師が賀川の攻撃を、その身で受ける。ガキンっと音だけが響いた。ケタケタと嗤っている道化師には何の影響も無い。


 「好きにして良いよ。アルルカン。」


 その言葉を受けた道化師は賀川の肉体を睨め回し、言葉を紡いでいった。


 「本日、貴方様の為に御用意致しましたのは【ファラリスの雄牛】で御座います。」


 道化師が一礼すると…。

 とあるモノが産み堕とされた。


  等身大の【銀色】の雄牛像。その背中には人を出し入れする扉があった。その内部は空洞で、頭部には音が外に響くような管が取り付けられている。


 道化師は賀川を拘束し、その【銀色】の雄牛像へと押し込んだ。すると道化師は【銀色】の雄牛像の腹の下、巨大なバーナを使い内部を熱していったのである。


 「本来ならさ。【青銅】なんだけどね…。」


 僕は言葉を並べていく。


 「この雄牛像は【銀】で構成されている。本来のファラリスの雄牛は【青銅】。その方が鋳造しやすいからね。でも…。僕の能力には鋳造過程なんて必要無いからさ…。熱伝導率を優先したんだよ。」


 ファラリスの雄牛像に映り込んだ僕の顔は醜悪な笑みを浮かべ歪んでいる。


 叫び声だ。叫び声が聞こえる。


 「ねぇ?どんな気分?」


 僕の内側から僕の声が響く。

 『お兄ちゃん。止めて。』

 『駄目だよ。警告はしたんだ…。』


 賀川の叫び声が、雄牛像の頭部の管を通過して、雄牛の鳴き声に変わっていく。


 苦悶の声が…。

 僕には音楽の様に聴こえた。

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