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賀川杏樹③
血液だけは色濃くなる。
或日の事。賀川は恋人に別れを告げられた。唐突の別れではない。擦れ違いや価値観の違いが原因ではあった。けれど、お互いが納得した上での別れではなかった。賀川にとっては何故、別れになるのか理解が出来てはいない。一方的に別れを告げられたのである。
日に日に恋人との想い出が色褪せていく様な錯覚を覚えた。現在迄に積み上げていたモノが単なる【出来事】になる事が許せなかった…。
仕事中、賀川は不注意で自分の手を切り付けしまう。鋏で切り付けてしまった右の人差し指から色鮮やかな血液が流れ出た。ポトポトと堕ちる血液は、この肉体から離れてしまっても賀川の瞳には、色鮮やかに視えたのである。勿論、時間が経てば乾き、凝固し色が黒く変色はしていった。然し、賀川の心は、その血液に、ある種の意味を見い出した。
【血液は色抜ける事は無い。】
【血液だけは色濃くなる。】
そうして…。
賀川は元恋人を探し…。
鋏で彼を刺殺した…。
直後、東京に隕石が落下したのだった。




