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賀川杏樹②


 ほら。冷たくなるだろ?


 あの日以来、賀川の胎内には【死】への恐怖が付き纏う様になった。乾燥し色が抜けていく事が【死】と結び付いて視える様になっていたからだ。髪を切る。髪を切れば床に散らばる。床に散らばった髪が色褪せて視え、色褪せたモノが死んでいるかの様に感じた。そして…床に散在する【死】を掻き集めては、賀川は塵箱へと棄てていくのだった…。


 或日の事。賀川の恋人が部屋で爪を切っていた。その爪も身体から切り離されていくと爪が死んでいるかに感じてしまった。普段は髪も爪も【生きているモノ】としては視てはいない。ただ切り離された途端に【死んでいるモノ】と認識されてしまうのである。その切り離された爪を視て賀川は恋人へ言葉を並べる。


 「変な事聞くけどさ…。【死ぬ】ってどういう事だと思う?」

 「えっ?」

 賀川の恋人は怪訝な表情となった。

 「【死ぬ】って事は色褪せるって事?」

 「何言ってるの?どうした?」

 「いや。少し気になってさ…。」

 賀川の恋人は少し考えた仕草をする。

 「うぅん。【死ぬ】って云うのは温もりがなくなるって事なんじゃないかな。ほら。冷たくなるだろ?」

 「冷たくなる…。」

 「考え方次第なんだろうけど…。想い出だってそうじゃないか?温もりのある想い出ってさ、生き生きとしてるけど…。冷めた想い出は色褪せている…。あっ…。」

 賀川の恋人は言葉を一度区切った。


 「そうか…。確かに色褪せるのかも知れないね…。」

 と呟いた。


 

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