発症。
私が守るから…。
僕の眼前で両親は捕食されていった。僕が逃げ切れないと悟ったであろう半透明の欲獣は、内部に取り込んだ両親を僕に魅せつけるかの様にユックリと溶解していったのだった。顔の皮膚が溶け、顔の筋肉と筋が溶け、そして…骨まで溶けていった。両親の絶望とした表現を忘れる事は無いだろう。
その後、半透明のクリオネの欲獣は此方へと向き直った。その発光している皮膚が剥がれた顔は嗤っている。その顔の眼は此方をじっと見つめていた。
肉体が震える。肉体の奥から、心の深淵から…。云い様の無い感情が溢れてくる。何故か涙が頬を伝う。右の手の甲で涙を拭おうとした時だった…。唇の端。口角と云われる箇所が上がっている事に気付いた。
ふと鏡を視る…。
鏡の中の僕は嗤っていた。
声が聞こえる。
「お兄ちゃん。大好き…。」
この声は僕の声だ…。
「私が守ってあげるから…。」
その時だった…。
本能が告げる。僕の中に【咎】と呼ばれる【異能力】を授かった事。そして…その【異能力】の使い方を理解する。頭の中に過る言葉と映像。産まれた時に自然と呼吸をする様に、泣き叫ぶ様に本能は理解していく。
半透明のクリオネは頭をザクリと割った。バッカルコーンの触手がウネウネと蠢いている。
「お兄ちゃん。」
僕の声が聞こえる。
「私が守るから…。」
肉体の内から【咎】の名が響いた。




