強襲
ソレは日に日に知恵を付けていた。
僕達家族は何とか生きながらえていた。情報が欲しかったのだが、スマホもテレビも二日後には、その機能を失った。最後に識った情報としてはウイルスが原因との事であったが、原因が何であれ世界が終わりへと向かっている事を何となく理解している自分がいた…。
崩壊した街並み。その街並みを彷徨うのは神話や御伽噺で見聞きした様な化物だった。其れは人と何かが混ざり合った様に視える。虫型の化物。動物型の化物。機械仕掛けの化物。爬虫類型の化物。其れ等は視覚と聴覚で獲物を狙っているらしい。隠れて音を出さない様にしていれば、気付かれる事は無かった。
家の周りを死んでいるのか生きているのか解らないモノが取り囲んでいた事が幸いしていたらしい。後で識ったのだが、其れは虚人と名付けられた症状を持つ人々だった。虚ろな瞳で涎を垂れ流し、歩き彷徨うモノ。座り続けているモノ。同じ行動を繰り返すモノ。どうやら化物は虚人には危害を加える事は無いらしく、虚人に紛れ込んでいたから、やり過ごす事が出来ていたのだろう。
だが…。
それも長くは続かなかったのである。
化物…。後に【欲獣】と呼ばれる事になるソレは日に日に知恵を付けていたらしい。どうやら虚人と人間の区別が出来る様になっていたみたいだ…。
この五日間、家の周りをグルグルと廻っている体長二メートル程の【クリオネ】に似た欲獣は…。
〈違う。〉
と、そう云って、虚人を避け家の方へと近付いてきたのだ…。
半透明の肉体。そのシルエットは翼を持つ天使の様にも視えた。そして…その内側には円く発光している箇所が数箇所ある。そのクリオネ型の欲獣が此方へと歩みを進めてくると、その発光している箇所が皮膚の剥がれた顔と剥き出しの内臓である事が解ったのだった…。
その姿を視て両親は張り詰めていた緊張が切れたのか、恐怖に蝕まれてしまったのか、奇声を発し走り出した…。【クリオネ】は両親の動きに過敏に反応し、頭をザクリと割った。バッカルコーンと云われる六本の触手を振り回し、両親を捕えると、その儘、捕食していったのである。




