世界の変貌
想った通りだ…。
覚醒めた瞬間から世界が変貌した事を本能で理解した。そして…私に【異能力】が授かった事も同時に識ったのである。私は、その【異能力】の【名】に【形】に自分の内に秘めていた【幽玄の美】を視た。
窓の外を眺めると、至る処から悲鳴が聞こえ、建物は崩壊し、私が識っていた世界も崩壊していた。もし私の本能が告げている事が正しければ【想い】が形を成し始めたと云う事になる。
『だとすれば…。』
私は家から出て隣の家へと向かう。自分の家とシンメトリーに建築された家。一際、目を引くのは大きな貯水槽である。禍々しい雰囲気が漂う家。きっと【想い】が重なり【姿】をなしているのだろう。玄関を開ける。その玄関には虚ろな眼をした家族四人が涎を垂れ流し呆けていた。
【虚人】と後に名付けられた【KARMAウイルス】の症状の一つである。無気力となり生きながらにして死んでいるかの様な症状だ。この症状の最も恐ろしいのは、【死ぬ事が出来無い。】と云う事。虚人は基本的に食事も必要無ければ、水分すらも必要としない。徘徊する個体もいれば、身動き一つしない個体もいる。人を襲う事は無いのだが病原菌の媒体となっている個体が多く、長い年月を経て風化する場合もある。外的要因では死なず何らかしらの事象では死ぬ様だ。ただ苦しみだけが永遠と続くのだと後に聞いた。
玄関よりも奥。禍々しい雰囲気が漂ってくる。きっと水場だ。其れはトイレであり浴室であり、キッチンから漏れ出ている。
あぁ…。想った通りだ…。
水から禍々しい【何か】が産み出されている。其れは物理法則を無視したかの様に【形】を創った。水が人の形を成し、此方へと歩みを進めてくる。アレは【想い】だ。人の心の奥底にある欲望を形にしたのだ。
そして…。
アレは私の心が…。
産み出したモノなのだろう。
人の形をした水の胸元に穴が空く。その空いた穴から半透明で恨み募った表情の足の無い女性の【幽霊】が何人も出てくる。
少しの時間でアレが形作られたのなら。
心霊スポットや病院、墓場、火葬場。都市部。人の心が沈む場所なら…。人の死が色濃くなる場所であるなら…。この比ではない無い空間が形成されるのかも知れない。
【幽霊】は私を、ただ視ていた。




